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新たな出会い
ベレンとのお茶会
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緑の草木に囲まれ、白亜の大理石で周囲より一段高く造られた台の上。乳白色の石で造られたテーブルに紅茶と茶菓子が並んでいる。
そこに白に近い金髪を編みあげ、水色の瞳を憂い気に細めて紅茶を飲むベレンがいた。
若い執事に連れられてきたクリスに、ベレンが顔をあげて微笑む。心なしか少しやつれたような。
「お久しぶりです。どうぞ、おかけになって」
「用件は?」
立ったままのクリスにベレンが力なく笑う。
「相変わらずの態度ですのね。普通でしたら反逆罪で罰せられますのに」
「お前がしてきたことに比べれば可愛いものだ」
「そうですわね……」
ベレンが目を伏せた。青白い顔に白金の髪がかかる。
「処罰を受けたとはいえ、それで私がしてきたことが……罪が消えるわけでは、ありませんものね」
「少しはまともに考えられるようになったか。で、これからどうするつもりだ?」
クリスはベレンの向かいにある椅子に座った。ベレンが驚いたように顔をあげる。
「謝罪を要求しないのですか?」
「私は謝ってほしいわけではない。謝ったところで過去は変わらないからな。それより、お前がこれからどうするのか。そのほうが重要だ」
「これから、どうするのか……」
ベレンが視線を落とす。紅茶の水面に映る顔。散々可愛いと褒められて、チヤホヤされてきた。しかし、あの事件以降、声をかけてくる人はなく、関わりたくないとばかりに逃げていく。
「今までは……ルドに嫁ぐことしか考えていませんでしたわ。周りが全然見えていなくて……気が付いたら同年代はみんな嫁いでいて……自分だけ取り残されたような感じですの」
「犬……いや。ルドのことは、もういいのか?」
ルドの名にベレンの顔がこわばる。
「……あの時の、あの目……私に躊躇いなく剣を向けてきた時の……まるでモノを見るかのような感情のない……」
ベレンが震える体を両手で抱きしめ、頭を振った。
「と、とにかく、ルドはいいのです。ルドも私とは会いたくないでしょう」
ずっと慕っていた相手から本気で殺されかけたのだからトラウマにもなるだろう。
クリスは話を戻した。
「では、これからどうするのだ?」
「別の婚約相手を探しますわ。でも現帝の姉の娘である私に求婚してくる人なんて……」
そこでベレンが何かに気が付いたように大きく目を開き、紅茶を一気に飲み干してカップを置いた。
「そう、私は現帝の姉の娘。政略目的で他国に嫁ぐという方法もあります」
名案とばかりに晴れやかな顔になったベレンをクリスは不思議そうに眺める。
「そこまでして、嫁がないといけないのか?」
「え?」
何を言っているんだ、こいつ? と言わんばかりのベレンからの視線にクリスは逆に驚く。
「別に嫁がなくても生きる道はあるだろ」
「どうやって、ですの?」
「興味があることを調べて研究したり、作りたいものを作ったり、旅に出たり……」
「旅!? 女性が!?」
「あぁ。いろんなものを見ることは良いと思うぞ」
ベレンが軽く笑いながら手を振って否定する。
「それこそ無理難題、夢物語ですわ」
「そうなのか?」
キョトンとしているクリスにベレンが大きく頷く。
「そうですわ。女性に旅なんて無理です」
「どうしてだ?」
「女性が旅をしたなんて、聞いたことがありませんもの」
「聞いたことがないと、したらいけないのか?」
「え?」
「聞いたことがないと、出来ないのか?」
「それは……」
「他の国では男も女も普通に旅をするぞ」
戸惑っていたベレンが思い出したように言った。
「あ、他国に馬車で行ったことならありますわ!」
「それは公務でだろ? 自分が行きたいところに自由に行ったことは?」
「……ありませんわ」
「お前の外見なら嫁に欲しいという男など、いくらでもいるだろ。その前にやりたいことをやってもいいと思うぞ」
前触れなく誉められ、ベレンの頬がうっすらと染まる。
「え? わ、私に嫁いでほしいっていう人が、そんなにいるかしら?」
どこか恥じらっているような、もじもじと手弄りを始めた。クリスは平然と感想を口にする。
「くっきりとした目に高すぎない鼻と大きすぎない口。それに綺麗な肌とサラサラな髪。お前のような可愛い美人は、なかなかいない」
ベレンの頭にボンと小さな爆発が起きて顔が真っ赤になる。ベレンが両手を頬に当てて左右に首を振った。
「そっ、そんなっ! そんなことございませんわっ!」
「いや、幼い女子が想像するお姫様を実体化した姿だ。まぁ、実際に姫だがな」
「見え透いたお世辞はやめてください」
言葉ではそう言いながらも、ベレンはどこか嬉しそうだった。褒められ慣れしているが、どこか見え透いたお世辞ばかりだった。
しかし、クリスの言葉にはそれがなく心に響く。
「世辞ではないぞ。妖艶というより可愛らしく、欠点がない容姿だ」
(ただし性格は除く)
さすがに最後は口に出さなかった。
「ですから……」
ベレンがクリスの顔を見て動きを止める。まっすぐ見つめてくる深緑の瞳は、本音の中に羨望も見える。可愛らしさ、女性らしさへの憧れ。
ベレンが今までの恥じらいが嘘のように表情を引き締めた。
「あなたは、なさらないのですか?」
「なにをだ?」
「ご自身がされたいことです」
「私はしているぞ」
「えぇ。ご自身の性別を偽ってまで。ですが、本来の性別で、されたいことがあるのではありませんか?」
クリスは遠くに視線を向ける。
「……そのようなことはない」
「人に勧めるなら、まずはご自身がされるべきだと思います」
クリスはチラリとベレンを見た後、再び視線を逸らした。
「世の中には、どうしようもないこともある」
「そのようなことは、ありませんわ」
ベレンが前のめりになってクリスに詰め寄る。
「素は悪くないのですから。私にお任せなさい!」
「な、なにをするつもりだ?」
逃げようとするクリスの手をベレンが掴む。
「ドレスはいくらありますから。それに私のメイドはメイクの腕も一流ですのよ」
「なんで、そんな話に!?」
「さぁ! 私の部屋へ行きましょう!」
素早くクリスの腕に自分の腕を絡ませたベレンが意気揚々と歩き出した。
そこに白に近い金髪を編みあげ、水色の瞳を憂い気に細めて紅茶を飲むベレンがいた。
若い執事に連れられてきたクリスに、ベレンが顔をあげて微笑む。心なしか少しやつれたような。
「お久しぶりです。どうぞ、おかけになって」
「用件は?」
立ったままのクリスにベレンが力なく笑う。
「相変わらずの態度ですのね。普通でしたら反逆罪で罰せられますのに」
「お前がしてきたことに比べれば可愛いものだ」
「そうですわね……」
ベレンが目を伏せた。青白い顔に白金の髪がかかる。
「処罰を受けたとはいえ、それで私がしてきたことが……罪が消えるわけでは、ありませんものね」
「少しはまともに考えられるようになったか。で、これからどうするつもりだ?」
クリスはベレンの向かいにある椅子に座った。ベレンが驚いたように顔をあげる。
「謝罪を要求しないのですか?」
「私は謝ってほしいわけではない。謝ったところで過去は変わらないからな。それより、お前がこれからどうするのか。そのほうが重要だ」
「これから、どうするのか……」
ベレンが視線を落とす。紅茶の水面に映る顔。散々可愛いと褒められて、チヤホヤされてきた。しかし、あの事件以降、声をかけてくる人はなく、関わりたくないとばかりに逃げていく。
「今までは……ルドに嫁ぐことしか考えていませんでしたわ。周りが全然見えていなくて……気が付いたら同年代はみんな嫁いでいて……自分だけ取り残されたような感じですの」
「犬……いや。ルドのことは、もういいのか?」
ルドの名にベレンの顔がこわばる。
「……あの時の、あの目……私に躊躇いなく剣を向けてきた時の……まるでモノを見るかのような感情のない……」
ベレンが震える体を両手で抱きしめ、頭を振った。
「と、とにかく、ルドはいいのです。ルドも私とは会いたくないでしょう」
ずっと慕っていた相手から本気で殺されかけたのだからトラウマにもなるだろう。
クリスは話を戻した。
「では、これからどうするのだ?」
「別の婚約相手を探しますわ。でも現帝の姉の娘である私に求婚してくる人なんて……」
そこでベレンが何かに気が付いたように大きく目を開き、紅茶を一気に飲み干してカップを置いた。
「そう、私は現帝の姉の娘。政略目的で他国に嫁ぐという方法もあります」
名案とばかりに晴れやかな顔になったベレンをクリスは不思議そうに眺める。
「そこまでして、嫁がないといけないのか?」
「え?」
何を言っているんだ、こいつ? と言わんばかりのベレンからの視線にクリスは逆に驚く。
「別に嫁がなくても生きる道はあるだろ」
「どうやって、ですの?」
「興味があることを調べて研究したり、作りたいものを作ったり、旅に出たり……」
「旅!? 女性が!?」
「あぁ。いろんなものを見ることは良いと思うぞ」
ベレンが軽く笑いながら手を振って否定する。
「それこそ無理難題、夢物語ですわ」
「そうなのか?」
キョトンとしているクリスにベレンが大きく頷く。
「そうですわ。女性に旅なんて無理です」
「どうしてだ?」
「女性が旅をしたなんて、聞いたことがありませんもの」
「聞いたことがないと、したらいけないのか?」
「え?」
「聞いたことがないと、出来ないのか?」
「それは……」
「他の国では男も女も普通に旅をするぞ」
戸惑っていたベレンが思い出したように言った。
「あ、他国に馬車で行ったことならありますわ!」
「それは公務でだろ? 自分が行きたいところに自由に行ったことは?」
「……ありませんわ」
「お前の外見なら嫁に欲しいという男など、いくらでもいるだろ。その前にやりたいことをやってもいいと思うぞ」
前触れなく誉められ、ベレンの頬がうっすらと染まる。
「え? わ、私に嫁いでほしいっていう人が、そんなにいるかしら?」
どこか恥じらっているような、もじもじと手弄りを始めた。クリスは平然と感想を口にする。
「くっきりとした目に高すぎない鼻と大きすぎない口。それに綺麗な肌とサラサラな髪。お前のような可愛い美人は、なかなかいない」
ベレンの頭にボンと小さな爆発が起きて顔が真っ赤になる。ベレンが両手を頬に当てて左右に首を振った。
「そっ、そんなっ! そんなことございませんわっ!」
「いや、幼い女子が想像するお姫様を実体化した姿だ。まぁ、実際に姫だがな」
「見え透いたお世辞はやめてください」
言葉ではそう言いながらも、ベレンはどこか嬉しそうだった。褒められ慣れしているが、どこか見え透いたお世辞ばかりだった。
しかし、クリスの言葉にはそれがなく心に響く。
「世辞ではないぞ。妖艶というより可愛らしく、欠点がない容姿だ」
(ただし性格は除く)
さすがに最後は口に出さなかった。
「ですから……」
ベレンがクリスの顔を見て動きを止める。まっすぐ見つめてくる深緑の瞳は、本音の中に羨望も見える。可愛らしさ、女性らしさへの憧れ。
ベレンが今までの恥じらいが嘘のように表情を引き締めた。
「あなたは、なさらないのですか?」
「なにをだ?」
「ご自身がされたいことです」
「私はしているぞ」
「えぇ。ご自身の性別を偽ってまで。ですが、本来の性別で、されたいことがあるのではありませんか?」
クリスは遠くに視線を向ける。
「……そのようなことはない」
「人に勧めるなら、まずはご自身がされるべきだと思います」
クリスはチラリとベレンを見た後、再び視線を逸らした。
「世の中には、どうしようもないこともある」
「そのようなことは、ありませんわ」
ベレンが前のめりになってクリスに詰め寄る。
「素は悪くないのですから。私にお任せなさい!」
「な、なにをするつもりだ?」
逃げようとするクリスの手をベレンが掴む。
「ドレスはいくらありますから。それに私のメイドはメイクの腕も一流ですのよ」
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