【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで

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クリスの失態と出生の秘密

お風呂で仕掛けたのは……〜ルド視点〜

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 本を片付けたルドがキッチンへと移動していると、タオルの束を持ったミレナが歩いてきた。
 老齢の貴婦人にしか見えないミレナが優雅に微笑む。

「ちょうど良かった。お風呂に入るかい?」
「はい。場所を教えてください」

 ミレナが振り返り説明する。

「ここの突き当りを右に曲がったらあるよ」
「突き当たりを右ですね」
「そう。そこに入り口が二つあって、布がぶら下がっているから。赤と青の布がなんだけど、青い方に入って。赤い方は女性用だからね。お風呂の入り方は知っているかな?」
「師匠の屋敷の風呂に入ったことがあります」
「なら、大丈夫だね。はい、これ着替えとタオル」
「ありがとうございます」
「のぼせないようにね」

 立ち去ろうとしたミレナにルドが声をかける。

「あの、ぶら下がっている布は簡単に取り外しができますか?」
「あぁ。布が付いた棒をひっかけているだけだから、簡単に外せるよ」
「わかりました。ありがとうございます」

 教えてもらった通りに歩くと、赤と青の布がぶら下がった入り口があった。
 ルドが気配を鋭くして二つの入り口の奥を睨む。それから、軽くため息を吐いて力を抜いた。

「師匠の言うとおりにして良かった」

 ルドは青い布の入り口に一歩だけ入ると、すぐに振り返って上を見た。そこには壁に出っ張りがあり、青い布を付けた棒がかけてある。
 構造を確認したルドは迷うことなく青い布が下がった棒を外した。そして、隣の赤い布が下がっている棒と入れ換える。

 再び廊下に出て入り口を確認したルドは、最初に赤い布が下がっていた入り口に入った。

 道なりに進んだ先に脱衣場があり、棚と空のカゴが並ぶ。その奥には風呂場へ続くドア。
 ルドは慣れた手付きでカゴを取り、ミレナから受け取ったタオルと着替えを入れた。
 そして素早く服を脱ぎ、風呂場に進む。

「うわぁ……」

 ドアを開けると、そこは屋外だった。
 ゴツゴツとした岩を組み合わせて作られ、透明な湯が溢れている。周囲は丸太の壁で、足元を小さな灯りがぼんやりと照らす。

「これはすごい……」

 眺めていると冷たい風が吹いた。冷える前に急いで体を洗い、湯に浸かる。

「はぁー……」

 心地よい温もりに包まれて全身の力が抜けていく。岩に背中を預けて上を向くと、満天の星があった。

「え? 星空?」

 立ち上がり空を見つめる。ここ空中庭園では、上空はガラスのような物で覆われているため、空は見えないと説明されたし、空が灰色の天井で覆われている光景も見た。
 首をかしげていると、壁の向こう側からクリスの声がした。

「これは空中庭園の外の星空だ。夜は外の風景を、そのまま映し出している」
「そうなんですか。綺麗ですね……あれ?」

 空にチラチラと緑色の光が現れた。それは徐々に形を作り、巨大なカーテンとなり空を泳ぐ。

「し、師匠!? これは!? 誰か魔法を使っ!?」
「あぁ、オーロラという自然現象だ。この辺りでしか見られない」
「オ、オーロラ? ……すごい迫力ですね。このまま光が降りてきそうだ」
「立ったままだと体が冷えるぞ」

 クリスに指摘され、ルドは慌てて湯に浸かった。

「透視魔法で見ているんですか!?」
「そんなものは音でなんとなく分かる。ところで入り口の布はどうなっていた?」

 クリスの質問にルドが真顔になる。

「師匠がいる方の入り口には、青い布が下がっていました」
「やはりな。誰の仕業か……」
「事前に師匠に聞いていて良かったです」

 それは、ルドが風呂へ移動する少し前。

 ルドが図書室で本を片付けていると、クリスがやってきて、ここには風呂が二つあること。布の色に惑わされず、魔宝石がある位置を確認してから風呂に入ること。を、忠告していた。

 そのためルドは、まず入り口で魔宝石でクリスがいる位置を確認。そこで布が反対に下がっていることに気がつき、それを直してから風呂に入った。

「屋敷のように風呂場でお前と遭遇したくないからな」
「あ、あの時はすみませんでした」

 ルドは謝りながら湯に沈んだ。クリスの屋敷の風呂でクリスと遭遇した時のことを思い出し、顔が赤くなる。
 クリスの呆れたような声が降ってきた。

「あれはなぁ。無防備にも程があるぞ」
「いえ、あの時は……いや、すみませブクブク」

 ルドはクリスのことを男と思い込んでいたため、裸を見たり見られたりしても問題ないと考えていた。今となっては冷や汗ものだ。

「まあ、あれから私が入っていないか確認するようになったから良いが」

 それ以降、ルドは屋敷の風呂に入る前に必ずクリスの気配と魔宝石の魔力を探るようになり、風呂場でクリスと鉢合せることはなくなった。

 ルドが反省していると、隣から水音が聞こえた。

(そうか。師匠も隣で風呂に浸かっているからなぁ……)

 ボーとしながら、なんとなく想像をする。それだけでルドの顔が再び真っ赤になった。

「な、なんで!? 風呂に入るのは普通で!」

 ルドが一人で騒ぐ。その音にクリスが声をかけた。

「どうした? なにかあったか?」
「い、いえ! なにもありません!」
「そうか」

 水音とともにヒタヒタと歩く音がする。

(もしかして、師匠は今、裸で歩い……ダメだ! 想像するな!)

 ルドが顔を横に振った。

「先に上がるぞ」
「は、はい」

 ドアが閉まる音。ルドが脱力しながら岩に寄りかかる。

「ダメだ。のぼせる」

 ルドはフラフラと湯から出た。



 どうにか体を拭いてミレナが用意した服を着ると、ルドはフラつきながら青い布をくぐった。

「あ、お前も出たのか」
「し、師匠!?」

 ちょうど出てきたクリスと目が合う。
 思わず一歩下がったルドにクリスが怪訝な顔をした。

「お前、慣れる練習をするんじゃなかったのか? いちいち驚いていたら慣れないぞ」
「いや、あの、驚くつもりはなくて……その……」

 口ごもるルドだが、クリスは別のことに気を取られた。

「おい、それだと体が冷えるぞ。ちょっと屈め」
「は、はい」

 頭が回っていないルドは言われるまま腰を屈める。

「無駄に背が高いな。もう少し屈め」
「はい」

 ルドは片膝をつき、しっかりと頭をさげた。クリスは首にかけていたタオルをルドの頭に被せる。

「まったく。こんなに髪が濡れていたら、体が冷えて調子が悪くなるぞ」

 クリスがガシガシとルドの髪をタオルで拭く。そのことにルドが慌てた。

「し、師匠! 自分で拭けますから!」
「拭けてないから、こうして拭いてやっているんだろ」
「でも、それは……」

 ルドは顔をあげかけて、目の前のモノに釘付けになった。

 ミレナが用意した服は首回りが大きく開き、上からスッポリと被る形をしている。それはクリスの服も同じで、いつもは隠している首から鎖骨、胸の周囲までしっかり出ていた。
 そして、いつも服の下に隠れているルドの魔宝石がそこにある。ふんわりと柔らかそうなクリスの胸の谷間で真っ赤に輝く。

(見えていなかったけど、自分の魔宝石はいつもこうして師匠の胸の上に……)

 ポタポタと液体が落ちる感じがした。ルドが足元を見ると点々とした血の跡が。

「え?」

 ルドが顔をあげると、クリスがタオルを鼻に押し付けた。

「動くな。鼻血が出ている。のぼせたか?」
「ふぇ?」
「鼻のつけ根を押さえて待っていろ。冷たい飲み物を持ってくる」
「あ、いや、大丈夫で……」

 ルドが言い終る前に、クリスは走り出していた。





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