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ケリーマ王国
それは、着せ替え人形状態でした
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途中で休憩を挟みながら、飛空艇はケリーマ王国の王都に数日で到着した。普通なら馬や徒歩による陸路と、大型船による海路と河路で十数日はかかる行程。
そもそもケリーマ王国の王都は砂漠のど真ん中。そこに流れている巨大な川。その川の水を利用した農業と畜産、そして貿易によりケリーマ王国は栄えている。
王都は日干し煉瓦で作られた建物が並び、王都全体を囲むように高い壁。その周囲には緑の畑。
そんな王都の上空を跨ぎ、飛空挺が巨大な川の中心に着水した。
「暑い…………というより、痛いのですが!?」
日陰から体を出したクリスは布がない素肌の部分がチリチリと痛むのを感じた。強い日差しが容赦なく皮膚を突き刺す。
船員に指示を出し終えたオグウェノがクリスに声をかけた。
「あまり日陰から出ないほうがいいぞ。直接、日に当たると皮膚が火傷したみたいに赤くなるぞ。あと、その服だと暑いだろ? ケリーマ王国の服を用意させるから、それに着替えたら少しは涼しくなるだろう」
クリスを日陰に引っ張っていたベレンが手を挙げる。
「それでしたら、私に服を選ばせてくださいな。前回は用意されていたので、それを着ましたが、今回は自分で選びたいですわ」
「それもいいな。なら、まずは服屋に行こう」
こうして次の行き先が決定した。
飛空艇を降りたオグウェノ・クリス・ルド・ベレン・イディが馬車に乗り王都内を移動する。
ラミラも護衛として行こうとしたが、王都内であればカリストが影から護衛できるため、荷物を城内へ運び、宿泊環境を整える方を優先した。
馬車の座席は柱と天井しかないが、強い日差しが遮られ風通しが良いため涼しい。大通りには様々な露店があり活気に溢れる。
クリスは初めての光景に顔を輝かせた。
「師匠、あまり身を乗り出すと落ちますよ」
今のクリスは自由奔放に動くためルドの心配は尽きない。
そんなことなど知らないクリスは、風で暴れる髪を手で押さえながら笑顔で振り返った。
「だって、街を見るのは初めてで。もっと、よく見てみたいです」
「そりゃ見たくなるよな」
オグウェノが頷く。少し考えたベレンが提案をした。
「では、服を着替えましたら一緒に街を散策しませんか?」
「え? いいのですか?」
ベレンがオグウェノに今後の予定を確認する。
「王への挨拶は、夜でもかまわないでしょう?」
期待に満ちた顔でオグウェノを見つめるクリス。オグウェノは諦めたように答えた。
「そうだな。昼は執務があるし、夜でいいだろう」
「ありがとうございます」
本当に嬉しそうなクリスの笑顔に全員がつられて笑顔になった。
王家御用達の服屋に到着した一行は、店長から慇懃な挨拶を受けた後、店内の奥へと案内された。
こういう店での服は通常、オーダーメイドのため既製服は少ない。だが、オグウェノが無理を言って在庫を出してもらった。
男性陣を別室で待たせたまま、ベレンが煌びやかな服を前に唸る。
「前は深い赤が似合いましたが、今は少し違いますよね」
着せ替え人形となっているクリスは嬉しそうに次々と勧められた服を着ていく。
「まるでお姫様になったみたいです」
艶やかな絹糸で織られた布で作られた服は、ほとんどが同じデザインをしていた。
胸から腰までは体のラインに沿った形。腰から下はスカートのように布の裾が広がり、その下にはゆったりとしたズボンか、細いズボンを履く。
肩は出ており、二の腕から指先までは、ゆったりとした袖があるか、袖がない。
あとは金糸や銀糸で細やかな刺繍や、宝石が縫い込まれている。最後に豪華なアクセサリーを装着するのだが、それはクリスが拒んだ。
「ジャラジャラして動きにくいです」
今のクリスは華やかで動きやすい。それが服を選ぶ基準になっている。
ベレンがそれを加味してクリスに似合う服を探す。
「今の雰囲気ですと、濃い色より淡い色のほうが合いますね。そちらの服と……下はそれを。あぁ、それはいりません。えぇ、それにしましょう」
ベレンが独断でクリスの服を決める。そしてベレンは自分の服も決めると、服の微調整が終わるまでの時間を潰すため、男性陣が待っている部屋へ移動した。
「師匠! 大丈夫ですか?」
部屋に入って来たクリスをルドが出迎える。以前、ベレンに着せ替え人形にされた時のクリスはぐったりとしていた。
だが、今回のクリスは違う。活き活きとしており、嬉しさが全身から溢れていた。
「いろいろな服が着れて、楽しかったです!」
「それは……よかったです、ね」
予想外の反応にルドが言葉に詰まる。ベレンがイディの隣に腰を下ろした。
「さすが、王家御用達のお店ですわ。良い品ばかりで目移りしました」
満足そうなベレンにオグウェノが笑顔になる。
「それは良かった。仕上がりが楽しみだ」
「えぇ。楽しみにしていてください。ところでルドは着替えないのですか? 暑くありません?」
オグウェノが口角を上げた。
「赤狼の服も選んで仕上げ直し中だ」
「あら。それは楽しみが増えましたわ」
「どのような服ですか?」
クリスから期待に満ちた目で向けられたルドが苦笑いを浮かべて答える。
「白一色の伝統衣装ですよ。特に変わったところはありません」
そこに店員がティーセットを運んできた。全員が椅子に座り、茶が入ったカップを受け取る。
「不思議な匂い」
一番に口をつけようとしたクリスをさり気なくルドが止めた。
店員が笑顔で説明する。
「支配人は服の仕上がりを確認しましたら来ますので、もう少しお待ちください」
オグウェノが悠然と答えた。
「あぁ。ゆっくり待たせてもらう」
「御用の時はベルを鳴らしてお呼びください」
店員が一礼して退室する。店員が遠ざかったことを確認したルドがクリスに忠告した。
「師匠、これから口に入れる時は、自分が食べた後にしてください」
「なぜですか?」
「自分が安全なものか確認をしますので。なにもなければ、召し上がってください」
クリスは周囲に視線を向けた。オグウェノとベレンもカップに口をつけていない。イディが少しだけお茶を口に含み、ゆっくりと味わってから飲み込む。それから、二人に視線で合図をする。
オグウェノとベレンはカップを持ちあげて茶を飲んだ。
クリスが不思議そうにルドに視線を戻す。
「どうして、このようなことをするのですか?」
「一番は毒が入っていないかの確認ですね」
「それなら、もし毒が入っていたら、ルドさんやイディさんが危ないじゃないですか!」
「私たちは毒に耐性がありますから、大丈夫です」
「でも、耐性のない毒とか、遅効性の毒とかだったら……」
心配そうなクリスにベレンが質問をする。
「耐性とか、遅効性とは何ですか?」
「耐性のない毒とは、耐えることができない、強い毒や珍しい毒のことです。遅効性は、毒の作用がすぐに出ない毒のことです。飲んでから、半日ほどして効いてくる毒など、いろいろ……」
説明しながらクリスの声が小さくなる。
「毒に詳しいのですね」
ベレンの言葉にクリスは戸惑った。
「どうして……私、こんなことを知っているのでしょうか……」
ルドがお茶の毒味をしながら答える。
「毒と薬は紙一重です。師匠は毒にも詳しいですよ」
「つまり、これは記憶を失くす前の記憶……と、いうことですか?」
「そうだと思います」
「そう……ですか」
クリスは静かに深緑の瞳を伏せた。
そもそもケリーマ王国の王都は砂漠のど真ん中。そこに流れている巨大な川。その川の水を利用した農業と畜産、そして貿易によりケリーマ王国は栄えている。
王都は日干し煉瓦で作られた建物が並び、王都全体を囲むように高い壁。その周囲には緑の畑。
そんな王都の上空を跨ぎ、飛空挺が巨大な川の中心に着水した。
「暑い…………というより、痛いのですが!?」
日陰から体を出したクリスは布がない素肌の部分がチリチリと痛むのを感じた。強い日差しが容赦なく皮膚を突き刺す。
船員に指示を出し終えたオグウェノがクリスに声をかけた。
「あまり日陰から出ないほうがいいぞ。直接、日に当たると皮膚が火傷したみたいに赤くなるぞ。あと、その服だと暑いだろ? ケリーマ王国の服を用意させるから、それに着替えたら少しは涼しくなるだろう」
クリスを日陰に引っ張っていたベレンが手を挙げる。
「それでしたら、私に服を選ばせてくださいな。前回は用意されていたので、それを着ましたが、今回は自分で選びたいですわ」
「それもいいな。なら、まずは服屋に行こう」
こうして次の行き先が決定した。
飛空艇を降りたオグウェノ・クリス・ルド・ベレン・イディが馬車に乗り王都内を移動する。
ラミラも護衛として行こうとしたが、王都内であればカリストが影から護衛できるため、荷物を城内へ運び、宿泊環境を整える方を優先した。
馬車の座席は柱と天井しかないが、強い日差しが遮られ風通しが良いため涼しい。大通りには様々な露店があり活気に溢れる。
クリスは初めての光景に顔を輝かせた。
「師匠、あまり身を乗り出すと落ちますよ」
今のクリスは自由奔放に動くためルドの心配は尽きない。
そんなことなど知らないクリスは、風で暴れる髪を手で押さえながら笑顔で振り返った。
「だって、街を見るのは初めてで。もっと、よく見てみたいです」
「そりゃ見たくなるよな」
オグウェノが頷く。少し考えたベレンが提案をした。
「では、服を着替えましたら一緒に街を散策しませんか?」
「え? いいのですか?」
ベレンがオグウェノに今後の予定を確認する。
「王への挨拶は、夜でもかまわないでしょう?」
期待に満ちた顔でオグウェノを見つめるクリス。オグウェノは諦めたように答えた。
「そうだな。昼は執務があるし、夜でいいだろう」
「ありがとうございます」
本当に嬉しそうなクリスの笑顔に全員がつられて笑顔になった。
王家御用達の服屋に到着した一行は、店長から慇懃な挨拶を受けた後、店内の奥へと案内された。
こういう店での服は通常、オーダーメイドのため既製服は少ない。だが、オグウェノが無理を言って在庫を出してもらった。
男性陣を別室で待たせたまま、ベレンが煌びやかな服を前に唸る。
「前は深い赤が似合いましたが、今は少し違いますよね」
着せ替え人形となっているクリスは嬉しそうに次々と勧められた服を着ていく。
「まるでお姫様になったみたいです」
艶やかな絹糸で織られた布で作られた服は、ほとんどが同じデザインをしていた。
胸から腰までは体のラインに沿った形。腰から下はスカートのように布の裾が広がり、その下にはゆったりとしたズボンか、細いズボンを履く。
肩は出ており、二の腕から指先までは、ゆったりとした袖があるか、袖がない。
あとは金糸や銀糸で細やかな刺繍や、宝石が縫い込まれている。最後に豪華なアクセサリーを装着するのだが、それはクリスが拒んだ。
「ジャラジャラして動きにくいです」
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ベレンがそれを加味してクリスに似合う服を探す。
「今の雰囲気ですと、濃い色より淡い色のほうが合いますね。そちらの服と……下はそれを。あぁ、それはいりません。えぇ、それにしましょう」
ベレンが独断でクリスの服を決める。そしてベレンは自分の服も決めると、服の微調整が終わるまでの時間を潰すため、男性陣が待っている部屋へ移動した。
「師匠! 大丈夫ですか?」
部屋に入って来たクリスをルドが出迎える。以前、ベレンに着せ替え人形にされた時のクリスはぐったりとしていた。
だが、今回のクリスは違う。活き活きとしており、嬉しさが全身から溢れていた。
「いろいろな服が着れて、楽しかったです!」
「それは……よかったです、ね」
予想外の反応にルドが言葉に詰まる。ベレンがイディの隣に腰を下ろした。
「さすが、王家御用達のお店ですわ。良い品ばかりで目移りしました」
満足そうなベレンにオグウェノが笑顔になる。
「それは良かった。仕上がりが楽しみだ」
「えぇ。楽しみにしていてください。ところでルドは着替えないのですか? 暑くありません?」
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「赤狼の服も選んで仕上げ直し中だ」
「あら。それは楽しみが増えましたわ」
「どのような服ですか?」
クリスから期待に満ちた目で向けられたルドが苦笑いを浮かべて答える。
「白一色の伝統衣装ですよ。特に変わったところはありません」
そこに店員がティーセットを運んできた。全員が椅子に座り、茶が入ったカップを受け取る。
「不思議な匂い」
一番に口をつけようとしたクリスをさり気なくルドが止めた。
店員が笑顔で説明する。
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「なぜですか?」
「自分が安全なものか確認をしますので。なにもなければ、召し上がってください」
クリスは周囲に視線を向けた。オグウェノとベレンもカップに口をつけていない。イディが少しだけお茶を口に含み、ゆっくりと味わってから飲み込む。それから、二人に視線で合図をする。
オグウェノとベレンはカップを持ちあげて茶を飲んだ。
クリスが不思議そうにルドに視線を戻す。
「どうして、このようなことをするのですか?」
「一番は毒が入っていないかの確認ですね」
「それなら、もし毒が入っていたら、ルドさんやイディさんが危ないじゃないですか!」
「私たちは毒に耐性がありますから、大丈夫です」
「でも、耐性のない毒とか、遅効性の毒とかだったら……」
心配そうなクリスにベレンが質問をする。
「耐性とか、遅効性とは何ですか?」
「耐性のない毒とは、耐えることができない、強い毒や珍しい毒のことです。遅効性は、毒の作用がすぐに出ない毒のことです。飲んでから、半日ほどして効いてくる毒など、いろいろ……」
説明しながらクリスの声が小さくなる。
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