カフェノートで二十二年前の君と出会えた奇跡(早乙女のことを思い出して

なかじまあゆこ

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2 早乙女のお家

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  わたしの家はおばあちゃん、お母さん、わたしとそれから弟の奈央と今日は仕事からまだ帰って来ていない叔父さんの五人家族だ。おじいちゃんは、わたしが二歳の頃に亡くなった。お父さんはお母さんと離婚はしていないのだ。

  お父さんのことは時々思い出して会いたいなと思う。元気にしているかな。

  わたしのことなんて忘れてしまったかな?  会えないこともそうだけど、今どこに居るのかも分からないし、何よりも生きているのか死んでいるのかも分からないことが一番辛くて切ない。

「お母さん、おかわり~」

  奈央がカレー皿をお母さんに差し出した。

  呑気な奴め。

「あれ?  姉ちゃん今日は少食だね」

「今日はって何よ?」

「だって、いつもカレー三杯食べるじゃん」

「えっ?  気のせいじゃない」

「じゃあ、俺が全部食べていいんだ~」

「お母さん、カレーおかわり~」

  わたしもカレー皿をお母さんに差し出した。

  お母さんが作ってくれるカレーは愛情がこもっているのかいつ食べても美味しくて気がつくと今日も三杯食べていた。

  そんなわたしのことをおばあちゃんとお母さんはニコニコと笑いながら見ていた。

  
  自室に戻りベッドに寝転んだ。カレーを三杯も食べわたしのお腹は満足している。天井をぼんやり眺めていると木目が人の顔に見える。

  おばあちゃんの家は築年数が古くてこの前なんてネズミがいてびっくりした。あんな大きなネズミを見たのははじめてだった。

  そんなことを考えているといつの間にかわたしは眠りに落ちていた。

  夢の中にはカレーとそれから喫茶店のカフェノートで見かけたテストの点数が悪かったさんこと祐介君が出てきた。

  なぜだか祐介君がお母さんの作ったカレーを美味しそうに食べているという変な夢だった。

  また、あのカフェヘ行ってあのノートを見てみようかな。


  目を覚ますとカーテンの隙間から朝の光がキラキラと洩れていた。今日も一日が始まる。わたしは眠たい目を擦りベッドから起き上がった。

  制服に着替え階下に行くとパンの香ばしい香りふわふわと漂ってくる。

「おばあちゃん、おはよう~」

  わたしは、椅子に腰を下ろしながら挨拶をする。

「おはよう、早乙女ちゃん。食パン焼けたよ」

  おばあちゃんは言いながらお皿にトーストをのせわたしの目の前に置いた。

「いただきます」

「紅茶も飲むよね」

「うん、飲むよ。お母さんと奈央は?」

「寝坊助なお母さんはまだ寝ているよ。奈央ならとっくの昔に学校に行ったわよ」

  おばあちゃんはわたしのお気に入りの猫柄のマグカップに紅茶を注いでくれた。

「奈央の奴はまた、わたしを置いて学校に行ったんだね」

  マグカップを口に運び飲むと紅茶の良い香りが口の中に広がった。

「何回も起きなさいって階段をコンコン叩いて起こしたけど、早乙女ちゃん起きないんだもんね」

  おばあちゃんは溜め息をついた。

「全然気づかなかったよ」

  わたしは、トーストにバターをたっぷり塗り口に運んだ。


「さあ、早乙女ちゃん早く食べ終えて学校に行かなきゃ遅刻するわよ」

  おばあちゃんもそう言いながら椅子に腰を下ろし金時豆を食べ始めた。

「うん、そうだね。あ、おばあちゃん金時豆を食べているんだ」

「おばあちゃんの金時豆はふっくらしていて美味しいよ。早乙女ちゃんも食べるかい?」

「あ、うん、今はいいや」

「ふ~ん、そうかいな。うん、わたしの作る金時豆は最高に美味しい」

  おばあちゃんは満足げに頬を緩め金時豆を食べている。いつも思うのだけどどうしておばあちゃんは朝から金時豆を食べるのだろうかと。

「ごちそうさま~おばあちゃんはこれからゲートボールに行くの?」

「うん、行くわよ。わたしのゲートボールチームは優勝候補なんだからね」

  おばあちゃんは顔を上げにやりと笑った。

「そうなんだ、頑張ってね」

「もちろん頑張るわよ。さあ、お豆さんでパワーをつけなくてはね」

「あ、お豆さんパワーなんだ。じゃあ、いってきま~す!」

「早乙女ちゃん気をつけていってらっしゃい」

  わたしは、今日も学校にギリギリ間に合う時間に家を出た。
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