カフェノートで二十二年前の君と出会えた奇跡(早乙女のことを思い出して

なかじまあゆこ

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  奈央のチラシを配るその手がまるで魔法使いの手のように見える。なんだか悔しくてポロシャツの裾をぎゅっと握っていると亜子ちゃんがこちらに向かって歩いてきた。

「早乙女ちゃん、チラシ配れている?」

  亜子ちゃんはわたしの目の前まで立ち止まり聞いた。

「ううん、全然ダメだよ~」

「ふ~ん、そっか、わたしも全然ダメだよ~早乙女ちゃん何枚配れたの?」
「……十枚だよ。亜子ちゃんは何枚配れたの?」

  亜子ちゃんも配れていないのかと思うと少しホッとした。

「えっ、十枚しか配れていないんだ!  わたしは二十枚だよ」
「に、二十枚配れたんだ。あ、そうなんだ」

  配れていないと言いつつもわたしの倍も配っているではないか。わたしは、しょぼんとして頬をぷくりと膨らませた。すると、

「姉ちゃん、俺の華麗なるチラシ配りを見たかな?  あ、亜子さんもいるじゃないですか」

  奈央はふふんと得意げに胸を張りこちらに歩いてきた。

「……見たよ」
「奈央君、チラシ配り得意なんだね」
「はい、めちゃくちゃ得意ですよ。チラシ配りの極意を教えてあげましょうか」

  チラシ配りの極意なんて聞きたくないよと言う前に奈央は話し始めた。


「では、姉ちゃん、亜子さん、チラシ配りの極意を教えてあげましょう」

  奈央はすーはーと深呼吸をしてから話し始めた。

「チラシを配布するのは、一にタイミング、二にもタイミング全部タイミングなんですよ。まあ、笑顔もあった方がいいかな?」

  奈央はそう言いながらチラシを手に持った。

「それと、ターゲット体の中央かもしくは開いてる手へチラシをゆっくりと差し出します」

  そして、手に持っていたチラシを奈央はわたしのおへその辺りにゆっくりと差し出した。

「ちょうど良いタイミングでおへその辺りを目指してチラシを配る。ある一定の間チラシを差し出し続けます。あ、それから、せっかく手を出してくれたのに受け取る前に手を引っ込めてしまうのなんてもってのほかですからね」

    気がつくとわたしは、奈央が差し出しているそのチラシを受け取っていた。

「はい、早乙女さん受け取りましたね」

  奈央は満面の笑みを浮かべた。

  わたしは、受け取ってしまったチラシに目を落としぼんやりと眺めた。

「奈央君、すご~い!」

  亜子ちゃんはパチパチパチと手を叩いている。

「ふふん、亜子さん、ありがとうございます」

  奈央はどうだ凄いだろうと言わんばかりの顔で胸を張った。
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