47 / 75
思い出は
しおりを挟む
「奈央、関西旅行の行き先が決まったよ~」
わたしは、カフェノートを胸に抱え廊下をバタバタと走り奈央の部屋のドアをバーンと開けた。
「わっ! 姉ちゃんノックしないで入ってくるなよ~」
「ねえ、聞いてよ。琵琶湖に行くことになったんだよ」
わたしは、じゃーんと奈央にカフェノートを開いて見せた。
「あのね……聞いてないのは姉ちゃんでしょ。俺の部屋に勝手に入って来ないでよ」
「ねえ、奈央、琵琶湖って言えば懐かしいよね」
「だから、俺の部屋に勝手に入ってくるなよ」
奈央が大声を上げた。
「うん? 奈央ってばどうして叫んでいるの? 顔が真っ赤になって小猿みたいだよ」
わたしは真っ赤に顔を上気させ小猿みたいな顔になっている奈央の顔を見て首を傾げた。
「早乙女~ふざけるなよ」
「早乙女って呼ぶな! お姉ちゃんって呼びなさい」
「早乙女は早乙女だ~! 人の部屋に入って来る時はノックをしろよ」
「もううるさいね」
わたしは溜め息をつき一度ドアの外に出て開いているドアをコンコンとノックしてから再び部屋に入った。
「姉ちゃん……ふざけるなよ!」
「はぁ? ふざけていないよ。ノックしろと言うからノックしてあげたんだよ」
「……あ~もういいよ。で、何の用?」
「もう聞いていなかったの? 琵琶湖に行くことになったんだよ。お父さんと旅行に行ったことがある琵琶湖だよ」
わたしは興奮して言った。
「えっ? 琵琶湖! 決まったって祐介君から返事が来たの?」
「そうだよ。さっきから見せているじゃない」
わたしは、『関西旅行は滋賀県の琵琶湖と大阪と奈良に行くことになりました』と書かれたページを奈央の顔に近づけた。
「あ、本当だ。返事が来たんだ」
奈央は目を丸くしている。
「うん、返事が来たんだよ。びっくりした?」
「うん、祐介君のことは信じることにしたけど……この文字を見るとやっぱりびっくりするよ」
奈央はカフェノートに書かれている祐介君の豪快で大きくて綺麗な文字をじっと見て答えた。
「わたしも最初はびっくりしたよ」
「そっか、琵琶湖懐かしいね」
奈央は遠い目になる。懐かしいお父さんとの思い出の中にいるそんな目だ。
わたしはしばらく黙り琵琶湖と思い出せそうでいてはっきり思い出せないお父さんの顔を思い浮かべた。
「あの日は楽しかったね」
「うん、楽しかったよ」
奈央はぽつりと呟きそれから、「なんか思い出は綺麗だけどその先が霞んで何も見えないね」と言った。
「霞んで見える?」
「うん、だって、その思い出の先の生活が見えてこないと言うのか……何て言うのかな」
奈央はそう言って唇を噛んだ。
「確かにそうだよね……」
お父さんと琵琶湖に旅行に行った後も何度か会ったかと思うけれど、それからしばらくしてから会えなくなったのか記憶が定かではない。
あの日の思い出はキラキラと輝いているけれどその思い出も消えそうになってくる。細部まで覚えていないし断片的になってくる。
「なんて暗くなっていても仕方がないね。姉ちゃんと祐介君との時を超えた空の下の旅を俺は応援するよ」
奈央はそう言って笑った。
「ちょっと、奈央! その祐介君との時を超えた空の下の旅を応援って何よ」
「だって、そうでしょ。二十二年の時を超えた空の下の旅ってなんだかロマンがあるじゃん」
奈央はわたしの顔を見上げふわりと微笑みを浮かべた。
「えっと、祐介君との時を超えた旅を楽しみながらお父さんのことも思い出そうね」
これはきっと、わたし達と祐介君とお父さんとの旅なのだ。
わたしは、カフェノートを胸に抱え廊下をバタバタと走り奈央の部屋のドアをバーンと開けた。
「わっ! 姉ちゃんノックしないで入ってくるなよ~」
「ねえ、聞いてよ。琵琶湖に行くことになったんだよ」
わたしは、じゃーんと奈央にカフェノートを開いて見せた。
「あのね……聞いてないのは姉ちゃんでしょ。俺の部屋に勝手に入って来ないでよ」
「ねえ、奈央、琵琶湖って言えば懐かしいよね」
「だから、俺の部屋に勝手に入ってくるなよ」
奈央が大声を上げた。
「うん? 奈央ってばどうして叫んでいるの? 顔が真っ赤になって小猿みたいだよ」
わたしは真っ赤に顔を上気させ小猿みたいな顔になっている奈央の顔を見て首を傾げた。
「早乙女~ふざけるなよ」
「早乙女って呼ぶな! お姉ちゃんって呼びなさい」
「早乙女は早乙女だ~! 人の部屋に入って来る時はノックをしろよ」
「もううるさいね」
わたしは溜め息をつき一度ドアの外に出て開いているドアをコンコンとノックしてから再び部屋に入った。
「姉ちゃん……ふざけるなよ!」
「はぁ? ふざけていないよ。ノックしろと言うからノックしてあげたんだよ」
「……あ~もういいよ。で、何の用?」
「もう聞いていなかったの? 琵琶湖に行くことになったんだよ。お父さんと旅行に行ったことがある琵琶湖だよ」
わたしは興奮して言った。
「えっ? 琵琶湖! 決まったって祐介君から返事が来たの?」
「そうだよ。さっきから見せているじゃない」
わたしは、『関西旅行は滋賀県の琵琶湖と大阪と奈良に行くことになりました』と書かれたページを奈央の顔に近づけた。
「あ、本当だ。返事が来たんだ」
奈央は目を丸くしている。
「うん、返事が来たんだよ。びっくりした?」
「うん、祐介君のことは信じることにしたけど……この文字を見るとやっぱりびっくりするよ」
奈央はカフェノートに書かれている祐介君の豪快で大きくて綺麗な文字をじっと見て答えた。
「わたしも最初はびっくりしたよ」
「そっか、琵琶湖懐かしいね」
奈央は遠い目になる。懐かしいお父さんとの思い出の中にいるそんな目だ。
わたしはしばらく黙り琵琶湖と思い出せそうでいてはっきり思い出せないお父さんの顔を思い浮かべた。
「あの日は楽しかったね」
「うん、楽しかったよ」
奈央はぽつりと呟きそれから、「なんか思い出は綺麗だけどその先が霞んで何も見えないね」と言った。
「霞んで見える?」
「うん、だって、その思い出の先の生活が見えてこないと言うのか……何て言うのかな」
奈央はそう言って唇を噛んだ。
「確かにそうだよね……」
お父さんと琵琶湖に旅行に行った後も何度か会ったかと思うけれど、それからしばらくしてから会えなくなったのか記憶が定かではない。
あの日の思い出はキラキラと輝いているけれどその思い出も消えそうになってくる。細部まで覚えていないし断片的になってくる。
「なんて暗くなっていても仕方がないね。姉ちゃんと祐介君との時を超えた空の下の旅を俺は応援するよ」
奈央はそう言って笑った。
「ちょっと、奈央! その祐介君との時を超えた空の下の旅を応援って何よ」
「だって、そうでしょ。二十二年の時を超えた空の下の旅ってなんだかロマンがあるじゃん」
奈央はわたしの顔を見上げふわりと微笑みを浮かべた。
「えっと、祐介君との時を超えた旅を楽しみながらお父さんのことも思い出そうね」
これはきっと、わたし達と祐介君とお父さんとの旅なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる