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祐介Side
しおりを挟む今、俺は不思議な体験をしている。目の前にカフェノートがある。このカフェノートに未来の世界から返事が来るのだ。
そんなことを考えているとカフェノートが一瞬ピカピカッと光ったような気がした。すると、突然文字が浮かび上がってきた。小さくて細かい可愛らしい文字だ。
そう俺は西暦二千二十二年の世界に住んでいる高校三年生の早乙女ちゃんという女の子とカフェノートを通してやり取りをしている。
『こんばんは、祐介君。学校からの帰り道祐介君が鞄を振り回しながら歩いている姿を想像して笑ってしまったよ』
俺は早乙女ちゃんの笑っている姿を想像して笑ってしまった。だって、笑われたと思うとなんだか可笑しくて……。
『夏の旅行楽しみだね。わたしはワクワクしているよ。
祐介君、家族揃っての旅行は貴重だと思うよ。ご両親との絆が深まるといいね。恥ずかしいかもだけど楽しんでくださいね。
それと、祐介君と同じプランで旅行に行けるんだと思うとワクワクだよ。早乙女』と書かれていた。
二千二十二年の世界の早乙女ちゃんが住む世界とこの俺が住んでいる二千年の世界が繋がっているのだと思うと不思議でドキドキワクワクする。
そして、二千二十二年の世界にいる俺自身のことも気になるのだった。
俺はボールペンを握り早乙女ちゃんに返事を書いた。
『早乙女ちゃんありがとう。そうだね、さっきも書いたけど家族旅行ができるのも今のうちかもしれないし、大切な思い出ができると思うので親との旅行はちょっと恥ずかしいけど楽しみます』
早乙女ちゃんのおかげで考え方が変わった。今までの俺は親と旅行に行くのは面倒くさいと思っていた。
だけど、今は親との旅行も貴重な体験になるはずだと考えるようになったのだ。俺は早乙女ちゃんありがとうと思いながらペンを走らせた。
『あ、そうだ、カフェノートを持って行かなきゃね。鹿にエサをあげたや串カツを食べましたとか書くよ。もう完全にこのカフェノート私物化しちゃているね(笑) 祐介』と書いた。
俺はカフェノートにペンを走らせながら頬を緩めた。早乙女ちゃんに返事を書いているととても楽しくてワクワクするのだった。
その時、階下から「祐介、ご飯が出来たわよ」とお母さんの声が聞こえてきた。
俺はボールペンを机に置き「は~い」と返事をした。
「お母さん、今日の夕飯は何かな?」
俺は一階に下り台所を覗いた。
「今日の夕飯は祐介の大好きなハンバーグとナポリタンパスタよ」
お母さんがこちらを振り返りながら言った。
「おっ! やったね。めちゃくちゃお腹が空いてきたよ」
「あら、それは良かったわ。手を洗ってきなさいね」
「分かったよ」と俺は答えながら洗面所に向かって手を洗った。
蛇口から勢いよく流れる水を眺めながら二十二年後の俺はどんな人生を送っているのだろうかなと思った。俺はまだこの家に住んでいるのかな? そんなことを考えるとなんとも言えない不思議な気持ちになった。
「祐介ハンバーグとナポリタンパスタ美味しいかしら?」
食べることに夢中だった俺は顔を上げて「うん、美味しいよ」と答えた。
「ねえ、祐介、昔みたいにこのハンバーグジューシーで美味しいよとかナポリタンパスタの甘酸っぱいソースが最高だよとか感想は言ってくれないのかしら?」
お母さんは俺の顔をじっと見て言った。
「……俺はもう子供じゃないんだぜ」
俺がそう言うとお母さんは「……そうなのね」と言って寂しそうな顔になった。
いつもの俺だったらお母さんのそんな顔を見ても鬱陶しいなと思うだけのはずなんだけれど、早乙女ちゃんとカフェノートでやり取りをしている俺はいつもと違ったのだ。
「うん、あ、そうだ、このハンバーグの肉汁が最高だよ~」
俺はハンバーグを口に運び笑顔を浮かべて見せた。
「あら、祐介ってば褒めてくれるんだね」
お母さんは一瞬びっくりした表情になりそれから柔らかい笑みを浮かべた。
そんなお母さんの表情を見ているとなんだか嬉しくなった。
「まあね、俺は子供の頃からお母さんの料理が好きだから」
俺の素直な言葉にお母さんは目を丸くして「祐介、熱はないよね」と言うではないか。
「せっかく褒めたのにな」
俺はちょっとムッとして唇を尖らせた。
「あらあらごめんなさいね」
そう言って謝るお母さんの笑顔はいつになく優しかった。そんなお母さんの表情を見ていると俺の心はふわりと温かくなった。
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