7 / 268
異世界の流行らないたぶん美味しい食堂
1
しおりを挟む
「さあ、今日もはりきって料理を作るぞ」
コックコートに着替えたお父さんが腕まくりをして気合いを入れた。
「美味しい料理を作らなくてはね」
ストライプ柄のシャツにエプロンをつけ黒のデニムを穿いたお母さんも同じく腕まくりをする。
一方、わたしとモフにゃーはそんな二人をぼんやりと眺めていた。
「お父さんとお母さんはりきっているね」
「今日はお客さんたくさん来るといいにゃんね」
「お料理は美味しいのに流行らないなんて不思議だね」
「お隣の食堂にお客さんを取られているにゃん」
わたしは木製の丸テーブルに肘をつき頬杖をつく。その丸テーブルの上にちょこんと座るモフにゃーと顔を見合わせた。
「そっか……お隣さんのご飯美味しそうだもんね」
「わたしこの前食べたにゃん。美味しくてほっぺたが落ちたにゃん」
「え? 食べたの! まさか盗み食い?」
「ピンポーンにゃん」
「モ、モフにゃーってば~わたしも食べたかったなぁ。って違う~!」
なんてやり取りをしている場合ではなかった。
「さて、わたし達もお手伝いをしなきゃね」
わたしはスチャッと椅子から立ち上がる。
「わたしもお手伝いだにゃ~ん」
モフにゃーも丸テーブルからにゃーんと飛び降り見事な着地を決める。
「モフにゃーカッコいいよ」
トテトテ、にゃんにゃんとわたしとモフにゃーはカフェ食堂の更衣室に向かう。
わたしは幼女用の制服に着替えモフにゃーは猫用の制服に着替えるのだ。
白地のシャツにお気に入りのエプロンをつける。わたしは洗い物担当なので防水加工のあるエプロンをつけている。これがまた可愛らしいのだ。
ポケット付きのピンク地のエプロンなんだけれど、そのエプロンのポケットからネコさんとウサギさんがニョキニョキーンとこんにちはしているイラスト入りエプロンなんだ。
このエプロンをつける度わたしは、嬉しくなっちゃう。それと、ベレー帽も被るのだけど、これもお気に入りだ。
幼女になって嬉しいのは可愛いものがより可愛らしく見えるところかな。ただ、十八歳だった安莉奈の記憶があるのになぜだか心もちょっぴり幼女化している。
ううっ。どうしてかな?
一方、モフにゃーの制服は。
ピンク色のフリルレースエプロンをつけている。それとわたしとお揃いのベレー帽を斜めに被っているのだ。
もう、そのモフにゃーの姿があまりにも可愛らしくてキュンキュンする。
「これでよし。モフにゃーお仕事頑張ろうね」
「はいにゃん」
わたしとモフにゃーも気合いを入れる。
この世界は子供も猫もお仕事をしていたりするのだ。
さあ、洗い物をしよう。
お父さん、お母さん美味しい料理を作ってね。
「ねえ、お父さん、お母さん洗い物はまだかな~?」
木製の子供用のキッチン踏み台の上から振り返りわたしは、尋ねる。
「まだ、お客さんが来てないから洗い物がないのよね」
お母さんはふぅーと溜め息を零す。
「そっか、残念……」
「残念にゃん」
わたしの隣に二本足で立ち布巾を手に持つモフにゃーも残念そうだ。
「アリナ、お父さんの料理は美味しいよな?」
洗い場に入って来たお父さんが尋ねる。
「うん、わたしお父さんのご飯大好きだよ~」
「おぅ。そうかそうかそれは嬉しいな」
お父さんは嬉しそうにふにゃふにゃとした表情になる。
「だから、もっとお客さんに食べてもらいたいよ」
「そっか、アリナよ。嬉しいことを言ってくれるな」
お父さんのその表情はふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃとそれはもう緩んでいる。
「アリナ、お父さんは頑張るからな」
「うん。わたし応援してるね」
わたしはにっこりと笑った。
「おぅ。アリナのその笑顔がお父さんのパワーになるぞ~」
ふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃーりととろけてしまいそうな柔らかい笑顔を浮かべるお父さん。嬉しいけれど、ちょっぴり鬱陶しいかもしれないよ。
コックコートに着替えたお父さんが腕まくりをして気合いを入れた。
「美味しい料理を作らなくてはね」
ストライプ柄のシャツにエプロンをつけ黒のデニムを穿いたお母さんも同じく腕まくりをする。
一方、わたしとモフにゃーはそんな二人をぼんやりと眺めていた。
「お父さんとお母さんはりきっているね」
「今日はお客さんたくさん来るといいにゃんね」
「お料理は美味しいのに流行らないなんて不思議だね」
「お隣の食堂にお客さんを取られているにゃん」
わたしは木製の丸テーブルに肘をつき頬杖をつく。その丸テーブルの上にちょこんと座るモフにゃーと顔を見合わせた。
「そっか……お隣さんのご飯美味しそうだもんね」
「わたしこの前食べたにゃん。美味しくてほっぺたが落ちたにゃん」
「え? 食べたの! まさか盗み食い?」
「ピンポーンにゃん」
「モ、モフにゃーってば~わたしも食べたかったなぁ。って違う~!」
なんてやり取りをしている場合ではなかった。
「さて、わたし達もお手伝いをしなきゃね」
わたしはスチャッと椅子から立ち上がる。
「わたしもお手伝いだにゃ~ん」
モフにゃーも丸テーブルからにゃーんと飛び降り見事な着地を決める。
「モフにゃーカッコいいよ」
トテトテ、にゃんにゃんとわたしとモフにゃーはカフェ食堂の更衣室に向かう。
わたしは幼女用の制服に着替えモフにゃーは猫用の制服に着替えるのだ。
白地のシャツにお気に入りのエプロンをつける。わたしは洗い物担当なので防水加工のあるエプロンをつけている。これがまた可愛らしいのだ。
ポケット付きのピンク地のエプロンなんだけれど、そのエプロンのポケットからネコさんとウサギさんがニョキニョキーンとこんにちはしているイラスト入りエプロンなんだ。
このエプロンをつける度わたしは、嬉しくなっちゃう。それと、ベレー帽も被るのだけど、これもお気に入りだ。
幼女になって嬉しいのは可愛いものがより可愛らしく見えるところかな。ただ、十八歳だった安莉奈の記憶があるのになぜだか心もちょっぴり幼女化している。
ううっ。どうしてかな?
一方、モフにゃーの制服は。
ピンク色のフリルレースエプロンをつけている。それとわたしとお揃いのベレー帽を斜めに被っているのだ。
もう、そのモフにゃーの姿があまりにも可愛らしくてキュンキュンする。
「これでよし。モフにゃーお仕事頑張ろうね」
「はいにゃん」
わたしとモフにゃーも気合いを入れる。
この世界は子供も猫もお仕事をしていたりするのだ。
さあ、洗い物をしよう。
お父さん、お母さん美味しい料理を作ってね。
「ねえ、お父さん、お母さん洗い物はまだかな~?」
木製の子供用のキッチン踏み台の上から振り返りわたしは、尋ねる。
「まだ、お客さんが来てないから洗い物がないのよね」
お母さんはふぅーと溜め息を零す。
「そっか、残念……」
「残念にゃん」
わたしの隣に二本足で立ち布巾を手に持つモフにゃーも残念そうだ。
「アリナ、お父さんの料理は美味しいよな?」
洗い場に入って来たお父さんが尋ねる。
「うん、わたしお父さんのご飯大好きだよ~」
「おぅ。そうかそうかそれは嬉しいな」
お父さんは嬉しそうにふにゃふにゃとした表情になる。
「だから、もっとお客さんに食べてもらいたいよ」
「そっか、アリナよ。嬉しいことを言ってくれるな」
お父さんのその表情はふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃとそれはもう緩んでいる。
「アリナ、お父さんは頑張るからな」
「うん。わたし応援してるね」
わたしはにっこりと笑った。
「おぅ。アリナのその笑顔がお父さんのパワーになるぞ~」
ふにゃふにゃふにゃふにゃふにゃーりととろけてしまいそうな柔らかい笑顔を浮かべるお父さん。嬉しいけれど、ちょっぴり鬱陶しいかもしれないよ。
118
あなたにおすすめの小説
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる