28 / 268
わたしアリナの親子丼です
3
しおりを挟む
「あなた達は!!」
わたしは指差したままの状態で大きな声を出す。
男の子と女の子は顔を上げわたしを見た。その二人の目とわたしの目が合う。
二人は揃って目を丸くしている。やっぱり間違いない。この人達はそう。
「黄色のバスに乗っていた人ですよね?」と、わたしは尋ねた。
「黄色のバスってまさか?」
「え? それって君はまさか……」
男の子と女の子の目は更に大きくなる。
「はい、わたしあの黄色のバスに。あ、ちょっと、こっちに来てください」
わたしは男の子と女の子を外に連れ出した。
「アリナどこへ行くんだい?」
お父さんがドアを開けて顔を出す。
「あ、えっと、お客さんが親子丼を食べる前に準備体操をしたいんだって」
「え? 準備体操かい?」
お父さんは不思議そうな表情になり首を傾げる。
「うん、準備体操だよ。お父さんは親子丼に合うスープでも作ってね」
「親子丼にスープを付けるのかい?」
「そうだよ。親子丼にはスープが必要だからお願い作ってね」
わたしは、可愛らしく見えるように顔の前で指を組んでお願いをしてみせる。
そして、お父さんを店の中へ押し込む。本当は親子丼にはスープよりもお味噌汁が合うんだけどねと思いながら。
「わかったよ。アリナがそう言うんだったら腕によりをかけてスープを作るぞ」
お父さんは、「よし」と気合いを入れた。
準備体操だなんて苦しい言い訳だけど、結果オーライだもんね。
お店の中にお父さんが引っ込んでくれたのでこれでよしと。
「おい、ちょっとそこのお嬢ちゃん。準備体操って何だよ?」
「そうよ、わたし準備体操なんてしないわよ」
「ん? あ、お客さんのお兄さんにお姉さん準備体操のお時間ですよ。じゃなかった、えっと、黄色のバスと神様のことが聞きたくて……お父さんに聞かれたくなかったの」
わたしは不服そう顔をしている二人に言った。
「ふ~ん、そっか。と、いうことはお嬢ちゃんはあのバスの乗客だったってことだよね」
男の子はなるほどといった感じでポンと手を打つ。
「そういうことね」と女の子も納得したようにうんうんと首を縦に振る。
「はい、わたし、あの変なバスの乗客でした。ヒラヒラな白の布を纏ったような古代風プラスファンタジーを混ぜ合わせた服装の妖しげな神様に連れて来られました」
と、わたしは答える。
今でこそ神様に感謝しているけれど、あの時は本当にびっくりしたもんね。
「あ、でもあの時幼女なお嬢ちゃんなんて乗客に居たかな?」
「だよね? わたし達と年配の女性とおじいちゃんにそれから、若い女の子に猫ちゃんしかいなかったような気がするけど」
男の子と女の子はわたしをじっと見て首を傾げた。
「えっと、それはね。わたし幼女になってしまったんだよ」
「は? 幼女になってしまったってまさか?」
「あ、まさかのまさかあの『ワシは嫌だ。君達の王国などワシには関係ない。ワシは日本に帰るぞ』と、鼻息を荒くした白髪頭のおじいさんが幼女になったとか~」
女の子はそう言って可笑しそうにクスクス笑う。
「ちょっと、お姉さんそんなわけないでしょ。わたしはアリナです。元の姿は十八歳の女性安莉奈だよ」
わたしはぷくっとほっぺたを膨らませる。どうして、おじいちゃんがわたしなのよ。
「へぇ~アリナちゃんはわたしより年上なんだ。どう見ても幼女なんだけどな~。あ、わたしはサナよ。地球時代は十六歳の高校二年生の佐奈だったんだけどね」
サナちゃんはわたしのことを食い入るように見ている。
「びっくりした~アリナちゃんが十八歳だなんて! どう見てもやっぱり幼女だよ。あ、俺は地球時代は中学一年生十三歳だった納豆だよ。こっちの世界ではナットーって呼ばれているんだ」
「え? 納豆って名前だったの!! 美味しそうな名前だったんだね~」
わたしはあのネバネバした納豆を思い出しながら言った。
「おい、納豆って呼ばないでくれよ」
納豆、あ、違った。ナットーは顔を赤く染めながら抗議をする。
「納豆食べたくなっちゃった~」
わたしはあのネバネバした納豆が食べたくてたまらなくなった。
わたしは指差したままの状態で大きな声を出す。
男の子と女の子は顔を上げわたしを見た。その二人の目とわたしの目が合う。
二人は揃って目を丸くしている。やっぱり間違いない。この人達はそう。
「黄色のバスに乗っていた人ですよね?」と、わたしは尋ねた。
「黄色のバスってまさか?」
「え? それって君はまさか……」
男の子と女の子の目は更に大きくなる。
「はい、わたしあの黄色のバスに。あ、ちょっと、こっちに来てください」
わたしは男の子と女の子を外に連れ出した。
「アリナどこへ行くんだい?」
お父さんがドアを開けて顔を出す。
「あ、えっと、お客さんが親子丼を食べる前に準備体操をしたいんだって」
「え? 準備体操かい?」
お父さんは不思議そうな表情になり首を傾げる。
「うん、準備体操だよ。お父さんは親子丼に合うスープでも作ってね」
「親子丼にスープを付けるのかい?」
「そうだよ。親子丼にはスープが必要だからお願い作ってね」
わたしは、可愛らしく見えるように顔の前で指を組んでお願いをしてみせる。
そして、お父さんを店の中へ押し込む。本当は親子丼にはスープよりもお味噌汁が合うんだけどねと思いながら。
「わかったよ。アリナがそう言うんだったら腕によりをかけてスープを作るぞ」
お父さんは、「よし」と気合いを入れた。
準備体操だなんて苦しい言い訳だけど、結果オーライだもんね。
お店の中にお父さんが引っ込んでくれたのでこれでよしと。
「おい、ちょっとそこのお嬢ちゃん。準備体操って何だよ?」
「そうよ、わたし準備体操なんてしないわよ」
「ん? あ、お客さんのお兄さんにお姉さん準備体操のお時間ですよ。じゃなかった、えっと、黄色のバスと神様のことが聞きたくて……お父さんに聞かれたくなかったの」
わたしは不服そう顔をしている二人に言った。
「ふ~ん、そっか。と、いうことはお嬢ちゃんはあのバスの乗客だったってことだよね」
男の子はなるほどといった感じでポンと手を打つ。
「そういうことね」と女の子も納得したようにうんうんと首を縦に振る。
「はい、わたし、あの変なバスの乗客でした。ヒラヒラな白の布を纏ったような古代風プラスファンタジーを混ぜ合わせた服装の妖しげな神様に連れて来られました」
と、わたしは答える。
今でこそ神様に感謝しているけれど、あの時は本当にびっくりしたもんね。
「あ、でもあの時幼女なお嬢ちゃんなんて乗客に居たかな?」
「だよね? わたし達と年配の女性とおじいちゃんにそれから、若い女の子に猫ちゃんしかいなかったような気がするけど」
男の子と女の子はわたしをじっと見て首を傾げた。
「えっと、それはね。わたし幼女になってしまったんだよ」
「は? 幼女になってしまったってまさか?」
「あ、まさかのまさかあの『ワシは嫌だ。君達の王国などワシには関係ない。ワシは日本に帰るぞ』と、鼻息を荒くした白髪頭のおじいさんが幼女になったとか~」
女の子はそう言って可笑しそうにクスクス笑う。
「ちょっと、お姉さんそんなわけないでしょ。わたしはアリナです。元の姿は十八歳の女性安莉奈だよ」
わたしはぷくっとほっぺたを膨らませる。どうして、おじいちゃんがわたしなのよ。
「へぇ~アリナちゃんはわたしより年上なんだ。どう見ても幼女なんだけどな~。あ、わたしはサナよ。地球時代は十六歳の高校二年生の佐奈だったんだけどね」
サナちゃんはわたしのことを食い入るように見ている。
「びっくりした~アリナちゃんが十八歳だなんて! どう見てもやっぱり幼女だよ。あ、俺は地球時代は中学一年生十三歳だった納豆だよ。こっちの世界ではナットーって呼ばれているんだ」
「え? 納豆って名前だったの!! 美味しそうな名前だったんだね~」
わたしはあのネバネバした納豆を思い出しながら言った。
「おい、納豆って呼ばないでくれよ」
納豆、あ、違った。ナットーは顔を赤く染めながら抗議をする。
「納豆食べたくなっちゃった~」
わたしはあのネバネバした納豆が食べたくてたまらなくなった。
23
あなたにおすすめの小説
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる