器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス

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第一部

第十四話 村でのんびりしたいと思うが、お約束的に無理だろうなぁ?中編

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 昨日、妹のマリアネートに修業を付けていた所為か…俺は寝ている時に昔の夢を見た。
 それは師匠がまだ生きている時の修業時代の夢だった。
 俺はスキルが多数持っていたが、初めから上手く使えていた訳ではない。
 両親が死んでから妹を喰わせていく為に十二歳で冒険者に仲間入りした。
 ただこの頃は、魔法は使えなくはなかったが自己流で無駄が多かった為に、すぐに魔力が枯渇してパーティーでも足手纏いになっていた。
 本来なら今すぐに働きに出なくても一年くらいは両親の貯えで生活は出来るのだが、その蓄えだっていつかは尽きる。
 なら早めに仕事をして稼ぐ方法を見付けようと思っていたのだった。
 だが、この頃は何をやっても上手くは行かず…それを見兼ねた冒険者ギルドの職員が、俺をある人の元に紹介してくれたのだった。

 「えっと…ここだよな?」

 それは山の中に一軒家がある秘境的な場所にある家だった。
 ギルド職員の話によると、その人は現在引退しているが…元は凄腕の冒険者で俺と同じ赤魔道士だという話だった。
 赤魔道士というジョブは、白魔道士や黒魔道士の教えはほとんど役に立たなかったので、同じ赤魔道士なら色々身に付けられる!
 この時まではそう思っていた。
 ところが…?

 「冒険者ギルドから紹介状を貰って…」
 「開いているから入んな!」
 
 俺は言い終わる前に部屋の中に入った。
 すると、部屋の中は荒れていて…まさにゴミ屋敷という様な感じで、その奥には老婆が腰掛けてこちらを見ていた。
 これは外したな…。
 俺は少し下がって扉を閉めようとしたら、いきなり魔法が飛んできた。

 「逃げる事は無いさね!」
 「いえ、来る家を間違えたようです。」
 「合ってるさね!小僧、お前も赤魔道士だろ?」
 
 あぁ…当たりなのか。
 出来ればハズレであって欲しかった。

 「はい、そうです。」
 「ふむ…なら、あたしの事はこれから師匠とお呼び!」
 「いえ、まだ弟子入りするとは一言も…」
 「何か言ったかい?」
 「いえ、師匠宜しくお願いします!」

 この日から俺の地獄は始まった。
 まず修業の最初は水汲みから始まった。

 「外に三つの瓶があるので、そこの近くにあるバケツを持って、沢から水を汲んで瓶に入れる。三つとも満タンにしたら次の修業を付けてやるさね。」
 「沢って…山を下りた場所ですよね?」
 「何か問題があるのかい?」
 「いえ、行って来ます!」

 俺はバケツを持って、山を下りてから沢に水を汲みに行ってから戻って瓶に水を入れるという作業を繰り返していた。
 12歳の子供には山を下るのはまだ良いが、水が入ったバケツを山の上まで運ぶのは結構辛い。
 最初は何の為にやらされているのが解らなかったが、体力を付けさせる為にやらされていたと思っていた。
 これを何往復もやらされてから、全て組み終わった頃には夕暮れになっていた。

 「なんじゃい、これでは修業をする時間が無いじゃないか!」
 
 俺は無言で荒い息をしていた。
 とてもじゃないが、返事が出来る状態ではなかった。
 師匠は回復魔法を掛けてくれて、多少は回復すると…?

 「さて、これで少しは動けるさね!では、修業を開始するさね!」
 
 俺はそう言われて、まずは魔力操作の修業をやらされていた。
 体から放出して魔力を体に薄い膜を張る様な感じで維持しろという物だった。
 初めての経験なのですぐには上手くは出来なかった…のだが、初日は何もされなかった。
 だが二日目からは違った。
 頭の上から冷たい水魔法をぶっ掛けられたのだった。

 「ほら集中力散漫だから、すぐに乱れるんだよ!意識を集中して維持するんさね!」
 
 こうして理不尽な修業が始まった。
 三日目には、ファイアボールが飛んできた。
 四日目には、アイスニードルが飛んできた。
 五日目には、ストーンバレットが飛んできた。
 こんな感じで十日も過ぎれば、立派に魔力制御が出来る様になっていた。
 …というか、早めに魔力制御が出来ないと、魔法の火力がどんどん上がって来ていたので命が脅かされると思って習得が早まったのだった。
 だが、これはまだ序の口だった。

 「今日から本格的な修業を開始するさね!」
 「え?今迄のは何だったのですか?」
 「あれは基礎中の基礎さね!」
 「あれで基礎だったのか⁉」

 そう…これから始まるのが本当の地獄の始まりだった。
 小屋の近くには滝がある。
 この滝には精霊の加護があり、魔力制御で魔力を放出している限りは呼吸が出来るが、魔力の放出が止まると溺れるという物だった。
 俺は自分の体重の倍の重りを付けさせられてから、滝に向かって風魔法で吹っ飛ばされた。
 そしてそのまま滝壺に落ちると、水の中で呼吸する為に魔力制御で魔力を放出し始めた。
 魔力制御がある程度モノになっていたとはいえ、持続時間はそれほど長くは無かった。
 最大で六時間程度くらいだった。
 だが、滝壺に落とされてから水に浮く事が出来ず、頭の上からは大量の水圧に水は冷水に近い。
 その状態で意識を集中しながら魔力制御の為に魔力を放出しなければならないという地獄の様な状態が続いた。

 ここで一つ言っておく。
 水の中だからと言って、温度になれる事は無い位に水が冷たい。
 魔力放出のお陰で息は出来るが、寒い事には変わりがない。
 そう思って魔力放出量を多くすれば、水の冷たさを回避出来るが…今度は呼吸が続けられる時間が短くなる。
 更に師匠は、僕が溺れ死ぬ様な事があったとしても助ける気はないので、自力で耐えなければならなかった。
 そして最初は倍の半日程までに魔力制御が出来る様になっていた…が、それを過ぎたら魔力が枯渇して溺れていた。
 どうやって陸に上げられたのかは覚えては無かったが、僕が目覚める時は師匠の蹴りが腹に入れられて水を吐いてめざめたという事くらいだった。 

 「師匠、弟子を殺す気ですか⁉」
 「人聞きの悪い事を言うんじゃないさね!明日はその倍の時間を水の中で過ごして貰うさね。」
 「倍の時間って…一日ですか⁉」
 「寒さに耐えながら過ごせば、一日くらいは楽勝さね!」
 「このクソババァ、俺を殺す気か!」
 「誰がババァじゃ!」

 思えば…この頃から俺の口が悪くなったのかもしれない。
 翌日、師匠はベッドで寝ていた俺を滝に突き落とした。
 頭が冴えていない状態で水の中に叩き込まれたので、一瞬呼吸の仕方を忘れていたが…すぐに魔力制御を行うと、呼吸をする事が出来た。
 だが、寒いのは変わらなくて、これが一か月間続き…最期の方では寝ながらでも魔力制御を出来る様になっていた。
 そして師匠から合格が貰えると、次の地獄…もとい、修業が待っていたのだった。

 それから一か月は、強化魔法や弱体魔法を教わっていた。
 教わるだけなら地獄ではないのではないかと思うかも知れないが、実戦形式なので何があったか言わなくても解るだろうと思うけど一応話しておく。
 強化魔法で身体強化をした後に、師匠が弱体魔法で弱体化をさせて来る。
 それで基準値よりも下がったりすると、呼吸困難な状態に陥るという物だった。
 師匠の弱体魔法は、力や体力を削る魔法には違いないが…それも度が過ぎると身体的苦痛になる。
 俺は師匠の弱体魔法の効果を一定値より下げない為に、強化魔法で強化し続けなければならなかった。
 そして一か月後には、スペルマスターという評価を師匠から貰ったのだが?
 その間に何度瀕死な状態になったか解らなかった。

 「この数か月を良く耐え抜いたね!」
 「まだ数か月だったのか…俺の中では数年が経過した様な気がしたが?」
 「最初にうちに来たテクトを見た時は、とてもじゃないが一週間以内に逃げ出すばかりだと思っていた。」
 「妹という家族がいなければ、一日で逃げ出していたよ。」
 「じゃが、最終試練迄残った弟子はお前が初めてだった。」
 「そりゃねぇ?こんな修業なら途中で脱落していてもおかしくは無いだろう。」
 「この最終試練は、今迄の様に甘い物じゃないさね!」
 「なんか、帰りたくなって来たな…」

 今迄でも十分地獄でしたよ?
 あれが甘い物だったって…最終試練は地獄を越えて煉獄かよ?

 「次の最終試練は、この武具を渡すのでこれを身に付けてから一年を耐え切ってみせろ!」
 「これは…何の材質?」
 「硝子の剣に硝子の鎧に硝子の盾さね。最終試練は、己の命を守りつつもこの武具を一切破損させる事なく一年を過ごすのさね!」
 「強化魔法の…エンチャントの応用ですか。もしも死ぬ様な事になったらどうするのですか?」
 「その時は離れの墓にお前の墓が一つ建つだけじゃ。」
 「このクソババァ、助ける気は無いのか⁉」
 「助けたら試練にならんじゃろ?」

 そうだった…師匠はこういう人だった。
 分かっていた筈だったのに…。

 「では行くんじゃ!」

 俺は硝子装備を身に付けると、風魔法で崖の上から落とされた。
 この下に広がる森は魔鏡の森と呼ばれるダンジョンだった。
 ここで一年って…普通死ぬぞ?
 そう思いながらも、俺は今迄学んだことを駆使しながら一年を過ごしていた…が、出口が分からずに一年と八か月を魔鏡の森の中で過ごしていた。
 そして師匠の家に戻ってから扉を開けると、そこにはカラカラに干乾びていた師匠の体と手紙が残されていた。
 その手紙には、最終試練を始めてから病で死んだ事と、俺を今迄育てた中で最高の弟子と書かれていた。
 そして最後に、師匠が用意してくれた装備があったので、俺はそれを身に付けると…成長していた筈なのに何故か丁度良いサイズだった。
 そして最後の遺言に、旅立つ前に小屋を燃やして共に葬ってくれと書いてあった。
 俺は師匠の遺言通りに小屋に火魔法で燃やしてから、小屋を後にした。

 これが俺が師匠の…とんでもない地獄の様な修業だった。
 この後に俺は再び冒険者ギルドに戻って行き、ギルド職員に師匠の詳細を話してからクエストを請けまくった。
 そして何度かクエストをこなしていくと、俺に勇者パーティーの加入条件を満たしたという報告を受けた。
 それから数人の勇者パーティーに参加したのだが、その都度に追い出されを繰り返して…現在は今のパーティーにあったという。
 
 「全く…あの頃の夢は何度か見てはいるが、ここまで鮮明に見たのは初めてだったな。」

 今日の予定は、妹の修行の続きだ!
 さて、今日はどんな方法で教えてやろうかな? 
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