魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス

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第六章

第十一話・閑話 リュカの秘密(思えば…これが地獄の始まりった気がする。)・前編

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 クラウディア王国に旅立つ少し前…
 魔猟祭の通知の手紙をかつての弟子達に渡し終えて戻って来てから、この時期にしか採れない食材を手に入れる為に、リュカとリッカとシオンは山の方に来ていた。
 …とは言っても、天蜂虫がいる山ではない。
 天蜂虫の巣がある場所以外にも山はある。
 カナイ村は、山が幾つか有り、谷もあり、川もあるし、湖もあるし、端の方に行けば海だってある。
 カナイ村と呼ばれる場所は、人が住んでいる場所だけを指すのではなく、周辺の森や山もカナイ村の一部だった。
 その為に世界のどの王国よりも敷地が広く…危険な生物が徘徊する為に、カナイ村の事を知っている者達からは…第二の太古の島と噂をする者達もいる。

 「ここにも山があるんですね…」
 「天蜂虫の巣がある山に比べたら、標高はそれほど高くはないけどね。」
 「それでも充分高い気がしますが…」
 「リュカ兄ぃ、いきなりこんな場所に赴いてどうしたの?」

 リュカ達がいるこの山は、英雄ダンがこの地に来た際に樹魔法で赤松を植えた山だった。
 英雄ダンは、地球で高級食材と呼ばれる松茸を食べたくて赤松を植えたという。
 そして、その松茸の収穫時期が…丁度この季節だった。

 「あぁ、そういえば…もうそんな時期なのね。」
 「松茸…というキノコですか?まさか、畑の作物の様に襲って来るんですか?」
 「いやいや、松茸は襲っては来ないよ。この村で唯一襲っては来ない安全なキノコなんだよ。」

 松茸は襲って来る事はない。
 ただ、厄介な特性がある事以外は…。

 「その松茸…でしたっけ?どんな形をしているんですか?」
 「あ~~~~~、とても表現し難い形をしていると言った方が良いかもしれないな。」
 「表現がし難い形…ですか?」

 素直に言っても良いんだけど、この場所には探せば幾らでも生えている。
 なので、赤松の根元を探して…松茸を採ってシオンに見せてあげた。

 「これは…確かに、表現がし難い形と言った意味が分かりました。」

 シオンは手に取った松茸に鑑定魔法を使った。
 だけど、鑑定魔法を使った筈なのに…首を傾げていた。

 「あれ?鑑定魔法でも詳細が見れない⁉」
 「この松茸はね、実際に食さないと鑑定魔法でも詳細が表示されないんだよ。」
 「そうなんですか…って、これは本当に食べられるんですか?」
 「見た目がアレだから敬遠したくなる気持ちは分かるけど、味は絶品だよ。」

 ただ…ちょっと厄介な副作用がある事だけは黙っておいた。
 カナイ村産の松茸には、英雄ダンの故郷の異世界にある松茸とは若干?異なるらしい。
 英雄ダンは松茸を食した時に、その特性というか…副作用も経験していた。
 そして、それは当然だけど村人達も経験をしている。

 「食べなければ鑑定出来ない食材ですか…」
 「この松茸というキノコは、元々はこの世界には無くてね…英雄ダンが故郷の異世界にあった食材をこの世界でも食べたくてこの木を植えたらしいんだよ。」
 「…という事は、この食材は英雄ダンの故郷の食べ物という事なんですね‼」

 シオンはそう聞いて、松茸を見ながら目を輝かせていた。
 するとリッカが僕の耳元に小声で話し掛けて来た。

 「リュカ兄ぃ…副作用については話さないの?」
 「身を持って体験した方が良いと思ってね。鑑定魔法は便利な魔法だけど、知識を取り入れる事で幅が広がるし…」

 そう、リッカが心配する通り…この松茸にはとんでもない副作用がある。
 英雄ダンもこの事だけは想定外だったらしく、一度は後世に残すのは危険と判断したらしいんだけど、悪戯好きな英雄ダンは破棄する事はせずに、毎年恒例の珍味食材として伝えたのだった。
 勿論だが、その最初の犠牲者達はリュカの両祖父母達であり、かなり苦しまされたと言う話だった。
 …別に、全ての松茸に副作用があるという訳では無い。
 副作用が出ない松茸は、香りも味も良い食材なんだけど…?

 「そういう訳で、手分けして松茸を回収して行ってくれる?小さいのは無視して、大きい物だけを御願いね。」
 「分かりました…けど、こんな食材をボアに狙われないんですか?ボアはキノコ類は好物ですよね?」
 「この松茸の発する香りは、人には香しい匂いなんだけど…魔物の類にはあまり好まれないみたいなんだ。」

 …本当の理由は別にあるんだけどね。
 うっかり副作用のある松茸を喰ったボアが、この付近で泡吹いて倒れている事が良くある。
 確かにボアは松茸は好物の部類に入る。
 だけど、ある程度成長したボアは副作用を経験している所為か、滅多に手を出さないのだった。

 ~~~~~数十分後~~~~~

 「かなり収穫したと思いますが、村人達にも分けるんですか?」
 「いや、サイラスやアレックスもこの時期の事は知っているから、村人達は自分達で収穫をしに来るよ。」
 「そうね、これは私達が食べる分よ。」

 そして僕達は、籠いっぱいの松茸を収穫して村の方に帰って行った。
 収穫した松茸を調理する事になったんだけど、家とは別の場所でこっそりと調理する事にした。
 どうせ家では、昼間に捕獲したラッシュゲーターを使った料理が振舞われているだろうし、そこで松茸を見付かった場合…一度食している者達は、鑑定魔法で副作用が無い松茸だけを搔っ攫って行く事は目に見えている。
 だから離れた場所で調理をする事にしたのだった。

 「さぁ、焼けたよ!」
 「リュカ兄ぃ…まともな松茸はあるにはあるけど、今回は少ないね?」

 早速リッカは、鑑定魔法を使って副作用の無い松茸をお皿に取って行った。
 調理と言っても、ただバーベキュー網の上に乗せて焼いただけのもの。
 すると、近くで話していたシオンと合流したガイアンが寄って来た。
 
 「美味そうな匂いがするな!」
 「そうですね、美味しそうです。」
 「これとこれが食べ頃だね。」

 そう言って僕は、シオンとガイアンの皿の上に焼けた松茸を載せてあげた。
 その松茸は勿論…副作用のある松茸だった。
 副作用がある松茸も、それなりに良い香りはします。
 それを知らずに口に入れたシオンとガイアンは、数分後に口から泡を吹いて倒れた。

 「リュカ兄ぃ、シオンとガイアンに食べさせた松茸って…毒の副作用がある松茸よね?」
 「うん、副作用の無い松茸を食べさせて上げても良かったんだけど、味を占めて勝手に収穫して副作用がある松茸を食べて倒れても困るからね。」
 「まぁ、このお陰で…鑑定魔法で毒のある松茸は見分ける事が出来たけどね。」

 そう…松茸の副作用は、何も毒だけじゃない。
 他にも数種類の副作用が存在するのである。
 僕は倒れている2人に解毒魔法のアンチドーテを掛けてあげると、2人は復活した。

 「まさか…毒に当たるとは思わなかった。」
 「鑑定魔法を使うと、これとこれが毒がある物みたいですね!」
 
 シオンは毒の表示がされていない松茸をガイアンの皿と自分の皿に置いてから食べ始めた。
 すると数分後に今度は全身麻痺が起こって地面に倒れてしまった。

 「今度は麻痺松茸を食べたか…」
 「あの麻痺って、呼吸が出来なくなる位に痺れるからね。」

 僕もリッカも、毒と麻痺の松茸は経験していた。
 なので、鑑定魔法でも毒や麻痺は表示されるのだった。
 だけど、毒しか食べていないシオンは鑑定魔法を使っても…毒の表示がされている松茸しか食べていない為に、何の表示もされていない松茸は安全だと勘違いをしたみたいだった。
 僕は麻痺で倒れている2人に、麻痺解除のパラライナを掛けてあげると、2人は立ち上がった。

 「おい、このキノコは一体何なんだ‼」
 「網の上に乗っている松茸は、全部じゃないけど毒か麻痺じゃないですか‼」

 2人は顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
 シオンは鑑定魔法を使いながら叫んでいた。
 僕とリッカはそれを無視して、別な松茸を皿に取った。

 「ガイアンさん、リュカさんとリッカさんが今取った松茸は…毒も麻痺も表示されていません‼」
 「おいリュカとリッカ、それを俺とシオンに寄越せ‼」

 そう言うや否や…シオンとガイアンは僕とリッカの皿に乗っていた松茸を強引に奪って口に入れた。
 数分後…シオンとガイアンは大声で笑い始めるのだった。
 そう…今度の松茸は、笑い茸だった。
 毒と麻痺の松茸を食べていたシオンには、それ以外の松茸は鑑定魔法でも表示されていない為に安全だと思っていたらしかった。
 
 「なんか変な顔…」
 「そうだね、2人共笑っているのに顔が怒っているからね。」
 
 ガイアンは握り拳をしながら笑っていて、シオンはクルシェスラーファを構えて笑っていた。
 流石に気の毒になったので、治そうかとも思ったんだけど…笑いを止める魔法は僕にはない。
 なので、別な松茸を細かく千切ってから…シオンとガイアンの口の中に放り込んでから、僕が2人の口を手で押さえている間にリッカが2人の首の後ろを強打して飲み込ませた。
 それからしばらくして…2人の笑い声は無くなったけど、今度は地面に倒れてイビキを掻き始めた。

 「寝たという事は、さっきのは催眠松茸?」
 「笑い茸の効果を無くす魔法は母さんにしか使えないからね。」
 「そういえば私達も、かー祖父ちゃんにこの方法で治して貰ったんだっけ?」
 「僕の時は恐怖テラー松茸で、リッカの時は魅了チャーム松茸だったっけ?」
 
 あの時は確か母さんが近くに居なくて、かー祖父ちゃんにこうして治して貰ったんだよね。
 ただ、かなり厄介な事になって…かー祖父ちゃんは母さんに滅茶苦茶怒られていたっけ?

 「次は何を上げるつもり?」
 「とりあえず…恐怖テラー松茸で良いんじゃないかな?」

 テラーの効果がある松茸は、一種のチキンハートになるという物だった。
 少し位の音だけでビクつくという性格になる松茸だった。
 シオンとガイアンが起き上がってから、テラー松茸を喰わせると…?
 袋を破裂させた音だけで、凄まじく怯えている様だった。

 「次は…チャームの松茸なんか良いんじゃないかな?」
 「そういえば、リッカはチャームに掛かった者がどうなるのかが知らなかったんだっけ?」

 チャーム松茸は…非常に厄介なキノコだった。
 あの時食べたのが僕とサイラスで、リッカは別な場所で食べていたらしいんだけど、覚えていないみたいだった。
 実際にどうなったのかというと、目の前でガイアンとシオンが抱き合いながら激しいキスを組み交わしていた。
 僕はクルシェスラーファにこの事はトラウマになるから、シオンには黙っておいてと秘密にさせた。
 
 「あの、リュカ兄ぃ…私の時もリュカ兄ぃにこれをやったの?」
 「いや、母さんも祖母ちゃん達も効果を知っていたから、リッカは他の場所で行っていたらしいよ。」

 聞いた話によると、リッカの時はその相手に唇だけでは済まなかったらしい。
 首筋や鎖骨や胸元…という感じで続けていた。
 リッカは母さんに眠らされる迄はとても激しかったと聞いている。
 ちなみに、僕の時の相手はサイラスだった。
 とー祖母ちゃんが面白半分で、僕とサイラスが激しいキスをしている時に解除の魔法を放ってくれたお陰で…僕とサイラスは、初めてのキスの相手が親友という黒歴史が刻まれるのだった。
 その時の話をリッカにすると、網の上に残っていた魅了松茸を地面に叩き付けて踏み潰していた。
 その後、シオンとガイアンを一度眠らせてから魅了を解き、他にも残った副作用松茸を片っ端から喰わせて行った。
 
 「リュカ…お前マジで許さねぇぞ‼」
 「リュカさん、僕も怒っているんですよ‼」
 「ごめんごめん…でも、この副作用松茸を食べさせたのには理由があってね…一度この副作用松茸を食すと、魔力の高い者は3割の確率でレジストされ、体力が高い者の場合は耐性が付くんだよ。」
 「それなら初めからそう言えよ‼」
 「…という事は、副作用のある松茸を食べ続けていくと、完全な耐性が付くという事に…」
 「それはない!あくまでも三割程度のレジストか耐性があるだけなんだよ。」

 僕はそう言いながら、網の上に焼いていた毒の副作用がある松茸を口に入れた。
 それを鑑定魔法で見ていたシオンが聞いて来た。
 
 「今の松茸は、毒のある奴ですよね?リュカさんは大丈夫なんですか⁉」
 「うん、僕やリッカには毒やその他の副作用は一切効かないからね。だから、この網の上にある松茸は全て食べても、何の影響も受けないんだ。」
 「何ですか…その異常な能力は?」

 まだ食事が終わるまでは時間があるし、何故僕とリッカが副作用に効果が無いかを話してあげるか!
 …そう、この松茸が全ての始まりと言っても過言じゃないからね。
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