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章の三
第六十話/『京』
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「と、言うわけなんだ」
国王とのお茶会はお開きとなり、アンナはシュテン達の待つ宿屋へと戻った。
無論、山賊退治の依頼をしっかり押し付けられての帰還だ。
アンナは事の顛末を申し訳なさそうに報告する。
「すまん、押し切られたんだ…」
「まあそれは分かったっスよ、それで…」
マンジュは横を向く。
「お初にお目にかかる、カティ=グラミネリードと申します」
「は、はぁ…」
引き攣った笑顔のメイと握手を交わすカティの姿がそこにあった。
「…なんで騎士団副団長サマがこんなとこにいるんスか?」
「それはだな…」
アンナが説明するのを、当人が遮る。
「某から頼んだのだ。王国としても一人は公職者がいた方がいいからね、立候補したのだ」
カティはメイの手を握ったままマンジュへ返答した。
「マンジュ、今回は彼女と臨時パーティを組んでの依頼なんだ」
「…国のメンツって奴っスか」
「それ以上に、某が興味を持ったんだ。君たちの戦いにね」
カティはメイの手を丁寧に離すと、シュテンの肩を叩く。
「いい物が見られると信じている」
「あァ…?」
カティの笑みに、シュテンは怪訝な顔を返した。
「山賊狩りっスか…騎士団が負けるって、それほんとに賊なんスか?」
「一応報告では、人間十数人で構成されていたとの事だ。魔物の気配は無かったと」
カティの報告をマンジュは訝しむ。
「ほんとっスかぁ?どうも妙っスよその話」
「お、おいマンジュ!」
マンジュを諌めようとするアンナを、カティは制した。
「いいのだ、全て某も考えていた事…全て、この目で確かめれば分かる」
マンジュは頭を掻いて黙り込む。
「と、とにかく!各自準備に移りましょう!賊の潜伏場所は分かっているのですか?」
メイが手を叩いて前へ出た。
「いえ、ただ西の山を根城にしているとしか分かってはおりませぬ。しかし、山沿いの街道なら日中帯に出没するようで」
メイは時計を見る。
「なら…一刻後に出発致しましょう!それまでに準備を整えて集合、という流れで如何ですか?」
メイが全員の顔を覗う。
「アタシはそれでいいっスよ!」
「私もだ、いつでも行ける」
「某は王宮で準備を終わらせて来た故、いつでも構わん」
「ん…あァ」
「はい!ではそれで決まりです!では準備して参りますね!」
メイはそそくさと自室へ向かって行った。
「あ、姐さん!アタシも行くっスー!」
その後をマンジュもドタドタと走って行った。
「賑やかなパーティであるな、アンナ嬢」
「いやぁ、ははは…」
アンナは頬を掻いた。
一時間後、装備を整えたメイとマンジュが部屋から出てくると、すぐに宿を出た。
「西の街道までは外を通った方が速い。皆、付いて来てくれ」
カティの案内で、王京の外へ出る。
「しかし、やっぱ王京はデカいっスねぇ」
「そりゃ、世界の中心たる『京』だからな…領都なんかとは比べ物にならんだろうな」
「……ミヤコ、かァ」
シュテンはふと、同じ名前で呼ばれながらも、こことは似ても似つかないあの場所の事を思い出していた。
生まれて直ぐに流れ落ち、寒さを凌ぎ、人の目を盗んで生き抜いたあの場所を。
「シュテン殿?どうかされましたか?」
メイが袖を引っ張る。
「…いや、なんでもねェ。少し昔居た所を思い出しただけだァ」
「タンゴ…だったか?そんなに栄えた場所なのか?」
アンナが王京を一瞥する。
「…いや、あの場所はァ…」
シュテンにとっては、良くもあり悪くもある記憶だ。
あの橋で、酒呑童子は最初の家来を持った。
「……」
奴はあの後、大江山から逃げきれたのだろうか。
あの鬼は、生き延びていたのだろうか。
多くの鬼達が酒呑童子の前で殺されていく中、ひと握りの精鋭たちがどう戦って死んで行ったのか、シュテンは多くを知らない。
しかし、あの場を生き抜いた鬼がいたとしても、酒呑童子亡き世では鬼が長生きする事は出来ないだろう。
それほどの力を、酒呑童子という鬼は持っていたのだ。
「シュテン殿…?」
メイが声を掛けたその時、カティが足を止めた。
前を見ると、数人の男が道を塞いでいる。
「姉ちゃん、いい装備じゃねえか」
「…西の山を根城にしてる山賊とは、貴様らか」
カティは、物怖じしないハキハキとした声で返す。
「ほお、俺らのこと知ってんのか」
男が合図を出すと、周りの茂みから次々に仲間が出てくる。
「じゃあ話が早ぇや、身ぐるみ全部置いてけや」
国王とのお茶会はお開きとなり、アンナはシュテン達の待つ宿屋へと戻った。
無論、山賊退治の依頼をしっかり押し付けられての帰還だ。
アンナは事の顛末を申し訳なさそうに報告する。
「すまん、押し切られたんだ…」
「まあそれは分かったっスよ、それで…」
マンジュは横を向く。
「お初にお目にかかる、カティ=グラミネリードと申します」
「は、はぁ…」
引き攣った笑顔のメイと握手を交わすカティの姿がそこにあった。
「…なんで騎士団副団長サマがこんなとこにいるんスか?」
「それはだな…」
アンナが説明するのを、当人が遮る。
「某から頼んだのだ。王国としても一人は公職者がいた方がいいからね、立候補したのだ」
カティはメイの手を握ったままマンジュへ返答した。
「マンジュ、今回は彼女と臨時パーティを組んでの依頼なんだ」
「…国のメンツって奴っスか」
「それ以上に、某が興味を持ったんだ。君たちの戦いにね」
カティはメイの手を丁寧に離すと、シュテンの肩を叩く。
「いい物が見られると信じている」
「あァ…?」
カティの笑みに、シュテンは怪訝な顔を返した。
「山賊狩りっスか…騎士団が負けるって、それほんとに賊なんスか?」
「一応報告では、人間十数人で構成されていたとの事だ。魔物の気配は無かったと」
カティの報告をマンジュは訝しむ。
「ほんとっスかぁ?どうも妙っスよその話」
「お、おいマンジュ!」
マンジュを諌めようとするアンナを、カティは制した。
「いいのだ、全て某も考えていた事…全て、この目で確かめれば分かる」
マンジュは頭を掻いて黙り込む。
「と、とにかく!各自準備に移りましょう!賊の潜伏場所は分かっているのですか?」
メイが手を叩いて前へ出た。
「いえ、ただ西の山を根城にしているとしか分かってはおりませぬ。しかし、山沿いの街道なら日中帯に出没するようで」
メイは時計を見る。
「なら…一刻後に出発致しましょう!それまでに準備を整えて集合、という流れで如何ですか?」
メイが全員の顔を覗う。
「アタシはそれでいいっスよ!」
「私もだ、いつでも行ける」
「某は王宮で準備を終わらせて来た故、いつでも構わん」
「ん…あァ」
「はい!ではそれで決まりです!では準備して参りますね!」
メイはそそくさと自室へ向かって行った。
「あ、姐さん!アタシも行くっスー!」
その後をマンジュもドタドタと走って行った。
「賑やかなパーティであるな、アンナ嬢」
「いやぁ、ははは…」
アンナは頬を掻いた。
一時間後、装備を整えたメイとマンジュが部屋から出てくると、すぐに宿を出た。
「西の街道までは外を通った方が速い。皆、付いて来てくれ」
カティの案内で、王京の外へ出る。
「しかし、やっぱ王京はデカいっスねぇ」
「そりゃ、世界の中心たる『京』だからな…領都なんかとは比べ物にならんだろうな」
「……ミヤコ、かァ」
シュテンはふと、同じ名前で呼ばれながらも、こことは似ても似つかないあの場所の事を思い出していた。
生まれて直ぐに流れ落ち、寒さを凌ぎ、人の目を盗んで生き抜いたあの場所を。
「シュテン殿?どうかされましたか?」
メイが袖を引っ張る。
「…いや、なんでもねェ。少し昔居た所を思い出しただけだァ」
「タンゴ…だったか?そんなに栄えた場所なのか?」
アンナが王京を一瞥する。
「…いや、あの場所はァ…」
シュテンにとっては、良くもあり悪くもある記憶だ。
あの橋で、酒呑童子は最初の家来を持った。
「……」
奴はあの後、大江山から逃げきれたのだろうか。
あの鬼は、生き延びていたのだろうか。
多くの鬼達が酒呑童子の前で殺されていく中、ひと握りの精鋭たちがどう戦って死んで行ったのか、シュテンは多くを知らない。
しかし、あの場を生き抜いた鬼がいたとしても、酒呑童子亡き世では鬼が長生きする事は出来ないだろう。
それほどの力を、酒呑童子という鬼は持っていたのだ。
「シュテン殿…?」
メイが声を掛けたその時、カティが足を止めた。
前を見ると、数人の男が道を塞いでいる。
「姉ちゃん、いい装備じゃねえか」
「…西の山を根城にしてる山賊とは、貴様らか」
カティは、物怖じしないハキハキとした声で返す。
「ほお、俺らのこと知ってんのか」
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