鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手

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章の三

第六十一話/親分

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 カティは正面を見据えたまま、剣に手を掛ける。
「部下がずいぶん世話になったみたいだが」
 対する男は「ほう」と口元に手を当てた。
「よく見たらお前、騎士団のお偉いさんか。ご自慢の団員たちが駄目だったからって、今度はギルドでスカウトでもして来たって訳か?」
 男はジロジロとこちらの装備を見回す。
 視線がアンナ、マンジュ、メイ、シュテンへと移っていく。
「…うん?」
 そんな中、男が怪訝な顔をして止まった。
「あっ!あいつは!」
 それを横で見ていた別の山賊が声を上げる。
「お、おいエンゲン…あの男コーシで見た奴じゃないか!?」
「え?」
 エンゲンと呼ばれた男が焦った顔でシュテンの方を凝視する。
「あァ?」
 シュテンが戸惑っていると、不意にメイが「あっ!」と叫ぶ。
「貴方たち、こんな所に居たのですか!」
「メイ、知り合いか?」
 剣に手を掛けたまま、アンナが問う。
「恥ずかしながら…コーシの街で彼等に襲われた事がありまして」
「っ!?」
 カティが剣を抜く。
「落ち着いて下さい!その時、初対面のシュテン殿に助けて頂いたのです」
「あァ…?」
 シュテンは記憶を遡る。
 そういえばこちらの世界に来てすぐ、盗賊を追い払ったような気がする。
「あの時の男か…っ!しかもよく見れば、横に居るのはあの甲冑女じゃねぇか!ははっ!」
 エンゲンが笑う。
「丁度いいや。あの時の屈辱、晴らさせて貰おうかね…親方ぁ!頼みます!」
 エンゲンが声を出すと、周りの山賊たちが後ろへ引いていく。
 少しの間を置いて、エンゲンの横にどこからが人影が飛び込んできた。
 着地と同時に大きな衝撃が辺りを包む。
「エンゲン、こんなにしょっちゅう呼んでんじゃねぇよ」
 現れた女は、肩を回して解していた。
「すみません親方、俺らアイツに昔痛い目見せられてましてね…」
 女がシュテンの方を見据える。
「…へぇ、強ぇのか?」
 エンゲンが頷くと、女は口角を上げる。
「じゃぁ、ちいっと試してみっか」
 次の瞬間、女の姿が消えた。
 拳がぶつかる音が聞こえたのは、シュテンの眼前。
「おォ」
「へぇ」
 シュテンは危なげなく掌で防ぐと、そのまま女の拳を掴んで後ろへ投げる。
 女の体は土埃を上げて地面へ叩きつけられた。
「シュテン殿!」
「おめェら下がっとけェ」
 シュテンが首を振る。
 メイ達は目配せし、カティを連れて街道の外へと下がっていく。
 シュテンが姿勢を整えていると、土煙の中から女が飛びかかってくる。
 シュテンの首を掴みに来たそれを両腕使ってガードする。
「アンタ、シュテンって言うのかぃ」
「あァ…それがどうしたァ」
「気に入らねぇ名前だ」
「そォかァ、そりゃァ悪かったなァ」
 シュテンが女の両腕を弾く。
 女はその回転を利用してシュテンの頭を掴みに行った。
 「っ!?」
 シュテンは紙一重で頭を振って躱すと、拳に妖力を篭め始める。
「鬼道・装技」
「!?」
 女はシュテンの挙動に気づくも、ガードが間に合わない。
「『意鬼衝天』」
 シュテンの拳は女の土手腹に突き刺さる。
「ぐおっ」
 影で見ていたマンジュも思わずガッツポーズをする。
「やったっス!アニキの勝ちっス!」
 マンジュは同じ技を見た事がある。
 ワドゥとの戦闘にて、シュテンはこの技でワドゥを文字通り吹っ飛ばした。
 ボディに食らったあの女は戦線離脱確定だろう。
 その内に女の身体が後ろに飛んでいく。
「…………」
 だが予想に反し、数メートルほどで地面を転がり出した。
 シュテンも違和感を感じる。
 先程の迫り合いといい、シュテンと対等に力比べをしている。
「…………ぐっ」
 女が動き始めた。
 シュテンが頭を振ると、カランと何かが落ちる音がした。
 見ると、シュテンの額当てが擦り切れて地面に落ちている。
 先程の戦闘で掠っていたのだろう。
「今の技…それに、その頭…」
 女が立ち上がりながら何か呟いている。
「アンタ…まさか…」
 片手で腹を抑え、もう片手でシュテンを指差した。
「…酒呑童子、か?」
 シュテンの眉がピクリと動く。
「…懐かしィ響きだァ、何故知ってる」
「やっぱり…」
 女の手の力がだらりと抜けた。
 シュテンは警戒する。
「………………か」
「かァ?」
 女の手が急に動いたかと思うと、ゴムのように伸びてシュテンの肩を掴む。
「カシラぁーーーっ!!!」
「うォっ…!?」
 伸びた手は急激に縮んでいき、女がシュテンの胸に飛び込む形となる。
 よく見ると、女の姿が代わっていた。
 身体は青く、手首から先だけ黒く肥大化したような姿。髪の色は黒から白へなり、その額からは二本の立派な角が姿を現していた。
 その異形でシュテンを抱き締めて頬擦りしている。
 周りで観ていた人間達は敵味方なく固まったが、シュテンはこの感覚に覚えがあった。
「おめェ…まさか、茨木かァ!?」
「へい!貴方の茨木童子でごぜぇ!」
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