87 / 110
章の四
第八十七話/剣聖
しおりを挟む
ピンと張り詰めた空気が、カティとゲントクの間を支配する。
騎士団と魔物の戦闘音、京内で次々と起こる爆発の音、その一切が聞こえぬ程の集中力。
ゲントクが振りかぶると、カティも動く。
「はっ」
「はああああっ!」
両者同時に、剣から魔法が放たれた。
斬撃が廊下を渡り、中央で衝突する。
「はあああああっ!」
カティは持てるだけの魔力を全てぶつけていく。
ぶつかった魔力の衝撃波は凄まじく、余波を受けた大理石の壁面に大きなヒビが走っていく。
その中で、せめぎ合う斬撃の中心が、徐々にカティの方へ近付いていた。
「…そろそろ限界だろう、今ならまだ魔力を防御に回せるぞ」
「うるさい!某はッ!絶対に退かない!」
カティは近付いてくる魔法へ出涸らしの魔力を込め続ける。
「はあああああああああっ!」
ホエンは腕を組んで笑った。
「こりゃあもう終わったね」
「終わってない!」
カティが食らいつく。
「貴方には!絶対に負けないッ!」
一瞬、カティの周りにオレンジ色の光がフラッシュした。
斬撃は、カティの剣先へ触れる程に近付いていた。
だが、その瞬間を境にカティが押し始める。
「なん…」
それどころか、どんどん加速していく。
「はあああああああああああああッ!」
「っ」
ゲントクが魔力を込め直そうとする頃には、既に手遅れなほど近付いており、強力な魔力波はゲントクの身体を吹き飛ばした。
「なっ…...!?」
宙を舞う刹那、ゲントクはカティに押し負けた事実を痛みで感じ取った。
「俺は…っ」
壁に衝突して廊下を転がる。
衝撃と反動でマトモに立ち上がる事は出来なかった。
「はあっ…はあっ…」
息を切らしながら、カティが残心をとる。
「嘘…なんで?あれだけ勝ってたのに」
「当然だ」
ホエンの疑問に答えた声は、廊下の奥から聞こえ全員がそちらを向いた。
「へ…陛下…!?」
驚いたカティの膝が振り向きざまにカクンと折れる。
国王はそれを片手で受け止め、支え上げた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません…しかし、何故ここへ」
「奥はあらかた片付けたからな」
「えっ!?そんな危険な事を…」
国王はカティの背を叩いた。
「君らが戦っているのに私だけ引き篭っている訳にはいくまい」
その時、ゲントクが立ち上がろうと剣を床に立てた。
「…当然とは、どういう…?」
「ああ、簡単な事だゲントク団長。君はこれまでの戦績から、彼女に負けるはずがないと慢心していた。だが人間は常に成長し変化するものだ」
「だが、俺は途中まで…」
「ああ、君は強化魔法を使って差を広げたからね。土壇場でカティ副団長が成長したとしても、そこまでの急成長は見込めない」
「なら…」
「だが、覚悟の差があった」
「……?」
ゲントクは怪訝な顔を向けると、国王はカティの肩を叩いた。
「彼女は身命を賭してこの場を守らんと覚悟を決めた。君にそれだけの覚悟があったか?」
「…………」
「強い信念を持って魔法を使えば、勇者の加護がある」
「勇者の、加護…?」
「君たちは知らないだろうが、我々レキ一族が火炎魔法を守護しているのは、その力が王によって正しく使われなければならないからだ」
「…どういう意味?」
腕を組んだままのホエンがぶっきらぼうに疑問を投げる。
「火炎魔法の輝きとは、即ち魔法の輝きだ。勇者が民に与えし固有魔法は、勇者の火炎魔法によってその輝きを増す。カティ副団長の剣聖魔法がゲントク団長に押し勝ったのは、私の火炎魔法が彼女の覚悟に応じて魔法力を底上げしたからだ」
「アンタがそいつを強化したって事?」
ホエンに対して、国王は首を横に振る。
「私の意思で強化したのではない。この効果は常に自動発動する。君たち全員にそのチャンスがあったのだ」
「勇者の…加護…」
ゲントクが下を向いたまま反芻する。
「ゲントク団長、奢ること無く、本気で私を倒そうと思えば、君にも覚醒のチャンスがあるだろう」
「な…陛下!」
カティが驚いて国王の方を向く。
敵にパワーアップのコツを教えるなど、倒してくれと言っているような物だ。
だが国王は、静かに笑った。
「心配は要らないようだぞ、副団長」
「え?」
カティがゲントクに目を遣ると、何やら頭を抱えて苦しんでいる様相だった。
「加護…ぐっ…国王が…火炎魔法が…?」
しばらくすると、膝立ちのまま頭から手を離した。
「…俺は何故、こんな事を…?」
その様子を見たホエンが舌打ちをした。
「…どうやら、何かしらの暗示をして思い通りに動かしていたようだね」
「うるさい!王族はいつもそうやって人を見下して嘲笑う…っ!本当に嫌いだ!」
国王に対して怨念がこもった鋭い眼差しを向けると、ホエンはイアモニへ話しかける。
「ワドゥ!ちょっとソイツ貸して!…いいから早く!」
直後、ホエンの横にフードローブを被った男が転移してくる。
カティが剣を構えようとするのを、国王が制した。
「陛下?」
「君は下がって、ポーションでも飲んでおきなさい」
「ですが!」
その時、国王はカティを後ろへ突き飛ばした。
カティが壁に激突したその時だ。
国王の、文字通り目の前で爆発が起こった。
騎士団と魔物の戦闘音、京内で次々と起こる爆発の音、その一切が聞こえぬ程の集中力。
ゲントクが振りかぶると、カティも動く。
「はっ」
「はああああっ!」
両者同時に、剣から魔法が放たれた。
斬撃が廊下を渡り、中央で衝突する。
「はあああああっ!」
カティは持てるだけの魔力を全てぶつけていく。
ぶつかった魔力の衝撃波は凄まじく、余波を受けた大理石の壁面に大きなヒビが走っていく。
その中で、せめぎ合う斬撃の中心が、徐々にカティの方へ近付いていた。
「…そろそろ限界だろう、今ならまだ魔力を防御に回せるぞ」
「うるさい!某はッ!絶対に退かない!」
カティは近付いてくる魔法へ出涸らしの魔力を込め続ける。
「はあああああああああっ!」
ホエンは腕を組んで笑った。
「こりゃあもう終わったね」
「終わってない!」
カティが食らいつく。
「貴方には!絶対に負けないッ!」
一瞬、カティの周りにオレンジ色の光がフラッシュした。
斬撃は、カティの剣先へ触れる程に近付いていた。
だが、その瞬間を境にカティが押し始める。
「なん…」
それどころか、どんどん加速していく。
「はあああああああああああああッ!」
「っ」
ゲントクが魔力を込め直そうとする頃には、既に手遅れなほど近付いており、強力な魔力波はゲントクの身体を吹き飛ばした。
「なっ…...!?」
宙を舞う刹那、ゲントクはカティに押し負けた事実を痛みで感じ取った。
「俺は…っ」
壁に衝突して廊下を転がる。
衝撃と反動でマトモに立ち上がる事は出来なかった。
「はあっ…はあっ…」
息を切らしながら、カティが残心をとる。
「嘘…なんで?あれだけ勝ってたのに」
「当然だ」
ホエンの疑問に答えた声は、廊下の奥から聞こえ全員がそちらを向いた。
「へ…陛下…!?」
驚いたカティの膝が振り向きざまにカクンと折れる。
国王はそれを片手で受け止め、支え上げた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません…しかし、何故ここへ」
「奥はあらかた片付けたからな」
「えっ!?そんな危険な事を…」
国王はカティの背を叩いた。
「君らが戦っているのに私だけ引き篭っている訳にはいくまい」
その時、ゲントクが立ち上がろうと剣を床に立てた。
「…当然とは、どういう…?」
「ああ、簡単な事だゲントク団長。君はこれまでの戦績から、彼女に負けるはずがないと慢心していた。だが人間は常に成長し変化するものだ」
「だが、俺は途中まで…」
「ああ、君は強化魔法を使って差を広げたからね。土壇場でカティ副団長が成長したとしても、そこまでの急成長は見込めない」
「なら…」
「だが、覚悟の差があった」
「……?」
ゲントクは怪訝な顔を向けると、国王はカティの肩を叩いた。
「彼女は身命を賭してこの場を守らんと覚悟を決めた。君にそれだけの覚悟があったか?」
「…………」
「強い信念を持って魔法を使えば、勇者の加護がある」
「勇者の、加護…?」
「君たちは知らないだろうが、我々レキ一族が火炎魔法を守護しているのは、その力が王によって正しく使われなければならないからだ」
「…どういう意味?」
腕を組んだままのホエンがぶっきらぼうに疑問を投げる。
「火炎魔法の輝きとは、即ち魔法の輝きだ。勇者が民に与えし固有魔法は、勇者の火炎魔法によってその輝きを増す。カティ副団長の剣聖魔法がゲントク団長に押し勝ったのは、私の火炎魔法が彼女の覚悟に応じて魔法力を底上げしたからだ」
「アンタがそいつを強化したって事?」
ホエンに対して、国王は首を横に振る。
「私の意思で強化したのではない。この効果は常に自動発動する。君たち全員にそのチャンスがあったのだ」
「勇者の…加護…」
ゲントクが下を向いたまま反芻する。
「ゲントク団長、奢ること無く、本気で私を倒そうと思えば、君にも覚醒のチャンスがあるだろう」
「な…陛下!」
カティが驚いて国王の方を向く。
敵にパワーアップのコツを教えるなど、倒してくれと言っているような物だ。
だが国王は、静かに笑った。
「心配は要らないようだぞ、副団長」
「え?」
カティがゲントクに目を遣ると、何やら頭を抱えて苦しんでいる様相だった。
「加護…ぐっ…国王が…火炎魔法が…?」
しばらくすると、膝立ちのまま頭から手を離した。
「…俺は何故、こんな事を…?」
その様子を見たホエンが舌打ちをした。
「…どうやら、何かしらの暗示をして思い通りに動かしていたようだね」
「うるさい!王族はいつもそうやって人を見下して嘲笑う…っ!本当に嫌いだ!」
国王に対して怨念がこもった鋭い眼差しを向けると、ホエンはイアモニへ話しかける。
「ワドゥ!ちょっとソイツ貸して!…いいから早く!」
直後、ホエンの横にフードローブを被った男が転移してくる。
カティが剣を構えようとするのを、国王が制した。
「陛下?」
「君は下がって、ポーションでも飲んでおきなさい」
「ですが!」
その時、国王はカティを後ろへ突き飛ばした。
カティが壁に激突したその時だ。
国王の、文字通り目の前で爆発が起こった。
20
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
一つ一つの人生は短かった。
しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。
だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。
そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。
早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる