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章の四
第八十七話/剣聖
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ピンと張り詰めた空気が、カティとゲントクの間を支配する。
騎士団と魔物の戦闘音、京内で次々と起こる爆発の音、その一切が聞こえぬ程の集中力。
ゲントクが振りかぶると、カティも動く。
「はっ」
「はああああっ!」
両者同時に、剣から魔法が放たれた。
斬撃が廊下を渡り、中央で衝突する。
「はあああああっ!」
カティは持てるだけの魔力を全てぶつけていく。
ぶつかった魔力の衝撃波は凄まじく、余波を受けた大理石の壁面に大きなヒビが走っていく。
その中で、せめぎ合う斬撃の中心が、徐々にカティの方へ近付いていた。
「…そろそろ限界だろう、今ならまだ魔力を防御に回せるぞ」
「うるさい!某はッ!絶対に退かない!」
カティは近付いてくる魔法へ出涸らしの魔力を込め続ける。
「はあああああああああっ!」
ホエンは腕を組んで笑った。
「こりゃあもう終わったね」
「終わってない!」
カティが食らいつく。
「貴方には!絶対に負けないッ!」
一瞬、カティの周りにオレンジ色の光がフラッシュした。
斬撃は、カティの剣先へ触れる程に近付いていた。
だが、その瞬間を境にカティが押し始める。
「なん…」
それどころか、どんどん加速していく。
「はあああああああああああああッ!」
「っ」
ゲントクが魔力を込め直そうとする頃には、既に手遅れなほど近付いており、強力な魔力波はゲントクの身体を吹き飛ばした。
「なっ…...!?」
宙を舞う刹那、ゲントクはカティに押し負けた事実を痛みで感じ取った。
「俺は…っ」
壁に衝突して廊下を転がる。
衝撃と反動でマトモに立ち上がる事は出来なかった。
「はあっ…はあっ…」
息を切らしながら、カティが残心をとる。
「嘘…なんで?あれだけ勝ってたのに」
「当然だ」
ホエンの疑問に答えた声は、廊下の奥から聞こえ全員がそちらを向いた。
「へ…陛下…!?」
驚いたカティの膝が振り向きざまにカクンと折れる。
国王はそれを片手で受け止め、支え上げた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません…しかし、何故ここへ」
「奥はあらかた片付けたからな」
「えっ!?そんな危険な事を…」
国王はカティの背を叩いた。
「君らが戦っているのに私だけ引き篭っている訳にはいくまい」
その時、ゲントクが立ち上がろうと剣を床に立てた。
「…当然とは、どういう…?」
「ああ、簡単な事だゲントク団長。君はこれまでの戦績から、彼女に負けるはずがないと慢心していた。だが人間は常に成長し変化するものだ」
「だが、俺は途中まで…」
「ああ、君は強化魔法を使って差を広げたからね。土壇場でカティ副団長が成長したとしても、そこまでの急成長は見込めない」
「なら…」
「だが、覚悟の差があった」
「……?」
ゲントクは怪訝な顔を向けると、国王はカティの肩を叩いた。
「彼女は身命を賭してこの場を守らんと覚悟を決めた。君にそれだけの覚悟があったか?」
「…………」
「強い信念を持って魔法を使えば、勇者の加護がある」
「勇者の、加護…?」
「君たちは知らないだろうが、我々レキ一族が火炎魔法を守護しているのは、その力が王によって正しく使われなければならないからだ」
「…どういう意味?」
腕を組んだままのホエンがぶっきらぼうに疑問を投げる。
「火炎魔法の輝きとは、即ち魔法の輝きだ。勇者が民に与えし固有魔法は、勇者の火炎魔法によってその輝きを増す。カティ副団長の剣聖魔法がゲントク団長に押し勝ったのは、私の火炎魔法が彼女の覚悟に応じて魔法力を底上げしたからだ」
「アンタがそいつを強化したって事?」
ホエンに対して、国王は首を横に振る。
「私の意思で強化したのではない。この効果は常に自動発動する。君たち全員にそのチャンスがあったのだ」
「勇者の…加護…」
ゲントクが下を向いたまま反芻する。
「ゲントク団長、奢ること無く、本気で私を倒そうと思えば、君にも覚醒のチャンスがあるだろう」
「な…陛下!」
カティが驚いて国王の方を向く。
敵にパワーアップのコツを教えるなど、倒してくれと言っているような物だ。
だが国王は、静かに笑った。
「心配は要らないようだぞ、副団長」
「え?」
カティがゲントクに目を遣ると、何やら頭を抱えて苦しんでいる様相だった。
「加護…ぐっ…国王が…火炎魔法が…?」
しばらくすると、膝立ちのまま頭から手を離した。
「…俺は何故、こんな事を…?」
その様子を見たホエンが舌打ちをした。
「…どうやら、何かしらの暗示をして思い通りに動かしていたようだね」
「うるさい!王族はいつもそうやって人を見下して嘲笑う…っ!本当に嫌いだ!」
国王に対して怨念がこもった鋭い眼差しを向けると、ホエンはイアモニへ話しかける。
「ワドゥ!ちょっとソイツ貸して!…いいから早く!」
直後、ホエンの横にフードローブを被った男が転移してくる。
カティが剣を構えようとするのを、国王が制した。
「陛下?」
「君は下がって、ポーションでも飲んでおきなさい」
「ですが!」
その時、国王はカティを後ろへ突き飛ばした。
カティが壁に激突したその時だ。
国王の、文字通り目の前で爆発が起こった。
騎士団と魔物の戦闘音、京内で次々と起こる爆発の音、その一切が聞こえぬ程の集中力。
ゲントクが振りかぶると、カティも動く。
「はっ」
「はああああっ!」
両者同時に、剣から魔法が放たれた。
斬撃が廊下を渡り、中央で衝突する。
「はあああああっ!」
カティは持てるだけの魔力を全てぶつけていく。
ぶつかった魔力の衝撃波は凄まじく、余波を受けた大理石の壁面に大きなヒビが走っていく。
その中で、せめぎ合う斬撃の中心が、徐々にカティの方へ近付いていた。
「…そろそろ限界だろう、今ならまだ魔力を防御に回せるぞ」
「うるさい!某はッ!絶対に退かない!」
カティは近付いてくる魔法へ出涸らしの魔力を込め続ける。
「はあああああああああっ!」
ホエンは腕を組んで笑った。
「こりゃあもう終わったね」
「終わってない!」
カティが食らいつく。
「貴方には!絶対に負けないッ!」
一瞬、カティの周りにオレンジ色の光がフラッシュした。
斬撃は、カティの剣先へ触れる程に近付いていた。
だが、その瞬間を境にカティが押し始める。
「なん…」
それどころか、どんどん加速していく。
「はあああああああああああああッ!」
「っ」
ゲントクが魔力を込め直そうとする頃には、既に手遅れなほど近付いており、強力な魔力波はゲントクの身体を吹き飛ばした。
「なっ…...!?」
宙を舞う刹那、ゲントクはカティに押し負けた事実を痛みで感じ取った。
「俺は…っ」
壁に衝突して廊下を転がる。
衝撃と反動でマトモに立ち上がる事は出来なかった。
「はあっ…はあっ…」
息を切らしながら、カティが残心をとる。
「嘘…なんで?あれだけ勝ってたのに」
「当然だ」
ホエンの疑問に答えた声は、廊下の奥から聞こえ全員がそちらを向いた。
「へ…陛下…!?」
驚いたカティの膝が振り向きざまにカクンと折れる。
国王はそれを片手で受け止め、支え上げた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません…しかし、何故ここへ」
「奥はあらかた片付けたからな」
「えっ!?そんな危険な事を…」
国王はカティの背を叩いた。
「君らが戦っているのに私だけ引き篭っている訳にはいくまい」
その時、ゲントクが立ち上がろうと剣を床に立てた。
「…当然とは、どういう…?」
「ああ、簡単な事だゲントク団長。君はこれまでの戦績から、彼女に負けるはずがないと慢心していた。だが人間は常に成長し変化するものだ」
「だが、俺は途中まで…」
「ああ、君は強化魔法を使って差を広げたからね。土壇場でカティ副団長が成長したとしても、そこまでの急成長は見込めない」
「なら…」
「だが、覚悟の差があった」
「……?」
ゲントクは怪訝な顔を向けると、国王はカティの肩を叩いた。
「彼女は身命を賭してこの場を守らんと覚悟を決めた。君にそれだけの覚悟があったか?」
「…………」
「強い信念を持って魔法を使えば、勇者の加護がある」
「勇者の、加護…?」
「君たちは知らないだろうが、我々レキ一族が火炎魔法を守護しているのは、その力が王によって正しく使われなければならないからだ」
「…どういう意味?」
腕を組んだままのホエンがぶっきらぼうに疑問を投げる。
「火炎魔法の輝きとは、即ち魔法の輝きだ。勇者が民に与えし固有魔法は、勇者の火炎魔法によってその輝きを増す。カティ副団長の剣聖魔法がゲントク団長に押し勝ったのは、私の火炎魔法が彼女の覚悟に応じて魔法力を底上げしたからだ」
「アンタがそいつを強化したって事?」
ホエンに対して、国王は首を横に振る。
「私の意思で強化したのではない。この効果は常に自動発動する。君たち全員にそのチャンスがあったのだ」
「勇者の…加護…」
ゲントクが下を向いたまま反芻する。
「ゲントク団長、奢ること無く、本気で私を倒そうと思えば、君にも覚醒のチャンスがあるだろう」
「な…陛下!」
カティが驚いて国王の方を向く。
敵にパワーアップのコツを教えるなど、倒してくれと言っているような物だ。
だが国王は、静かに笑った。
「心配は要らないようだぞ、副団長」
「え?」
カティがゲントクに目を遣ると、何やら頭を抱えて苦しんでいる様相だった。
「加護…ぐっ…国王が…火炎魔法が…?」
しばらくすると、膝立ちのまま頭から手を離した。
「…俺は何故、こんな事を…?」
その様子を見たホエンが舌打ちをした。
「…どうやら、何かしらの暗示をして思い通りに動かしていたようだね」
「うるさい!王族はいつもそうやって人を見下して嘲笑う…っ!本当に嫌いだ!」
国王に対して怨念がこもった鋭い眼差しを向けると、ホエンはイアモニへ話しかける。
「ワドゥ!ちょっとソイツ貸して!…いいから早く!」
直後、ホエンの横にフードローブを被った男が転移してくる。
カティが剣を構えようとするのを、国王が制した。
「陛下?」
「君は下がって、ポーションでも飲んでおきなさい」
「ですが!」
その時、国王はカティを後ろへ突き飛ばした。
カティが壁に激突したその時だ。
国王の、文字通り目の前で爆発が起こった。
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