鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手

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章の四

第八十八話/騎士

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「陛下!」
 カティは壁を背に座り込んだまま叫んだ。
 だが、爆炎はまるで見えない壁に当たったかのように、一定の位置より国王側へ近寄らない。
 煙も国王を覆う事無く、前方のみに漂っている。
 国王の額には、火炎魔法の象徴であるフレイムティアラが揺らめいていた。
 ティアラは火炎魔法を使用する際に必ず出現する。
 国王は自身の前方に、火炎魔法を応用した圧縮熱のシールドを展開し、身を守ったのである。
 カティが胸を撫で下ろす一方、国王はその爆発が魔導具ではなく、魔法による攻撃であることに気付いていた。
「今の、魔法は…まさか…」
 程なく二発目がシールド上で爆ぜる。
「そのまま殺しちゃえ!」
 ホエンが叫ぶ。
「ぐっ…仕方ないっ!」
 国王はローブの男へ手をかざし、魔力を込めた。
 直後、国王と男の視線上で爆発が起こる。
「迎撃したか…」
 国王が二発目を打とうとするも、男の方が早かった。
 再びシールド上を爆発が襲う。
「ぐうっ…」
 想定以上の威力に、シールド維持の魔力消耗が激しくなる。
 国王が魔法を打つ手が一瞬遅れたのを、男は見逃さず追撃した。
 だがその攻撃は、シールドに当たらなかった。
「なっ…」
 ホエンが驚愕に目を丸くする。
 国王と男の間に割り込み、爆発を剣で受けたのは、ポーションを咥えたゲントクであった。
 ゲントクはポーションの空瓶を吐き捨てると、剣に魔力を込める。
「やっとボンヤリした感じが取れた…今までよくもコキ使ってくれたな…」
「や、やれ!」
 ホエンの指示に男が手をかざすと、ゲントクの剣が爆ぜる。
「ぐあっ」
 後ろへよろけるが、二歩で持ち直しすぐに構える。
「剣…聖…魔法…」
「う、うわあー!」
 もはやただの叫びと成り果てたホエンの指示にも男は従い、ゲントクの足元が爆ぜる。
「ハズレだ」
 爆炎が収まるより前に、それを突っ切ってゲントクが姿を現した。
「…っ!」
 言葉を発する間もなく、ホエンは剣柄で小突かれ吹っ飛ばされた。
「ぐはっ!?」
 廊下を転がる中で、イアモニが耳から外れて床を転がっていく。
「ぐ…っ」
 ホエンが転がる中、命令を失い棒立ちしていた男に対しゲントクが剣を振る。
「ゲントク団長待てッ!」
 国王の言葉にゲントクの剣が止まる。
 直後、ローブの男は転移魔法でその場から消えて行った。
「あ…ワドゥの奴、勝手に…くっ…」
 ホエンは、攻撃を受けた腹を抑えて立ち上がる。
「あれを受けてまだ立つか…いや、強化魔法か」
 ゲントクの攻撃を受ける寸前、ホエンは咄嗟に自身の体へ防御力強化を付与していた。
「おかげで余計な魔力を消耗したよ…もうっ!」
 ホエンが腕を振ると、隠し持っていた閃光玉が炸裂する。
「待て!…逃がしたか」
 カティがホエンが居た辺りへ駆け寄るが、既に姿は見えなかった。
「…陛下」
 ゲントクが国王の前で跪く。
「数々の非礼、お詫び出来る手段がございません」
「頭を上げなさい、ゲントク団長」
 頭を上げないゲントクの肩に、国王が手を置く。
「君を団長に任命した事を、私に後悔させぬよう、騎士団を率いるものとして、務めを全うしなさい」
「…はっ!」
 ゲントクが顔を上げる。
「ところで陛下、先ほど待てと仰ったのは…」
 近づきざまに疑問を投げかけたカティに、国王の顔が曇る。
「ああ…それなんだが…」
 その時、街で新たな爆発が起こった。
「…話は後でする。これより騎士団は市民の安全確保に努めよ。私も街に出て加勢する」
「陛下は宮中に…」
 国王はカティの肩を叩く。
「魔物狩りくらい私にも手伝わせろ。身体が鈍っていかん」
「ですが…」
「では、君らに背中は預けよう。王が真っ先に逃げたとあっては、国民に示しがつかぬ」
 カティとゲントクは顔を見合わせる。
「…今度裏切ったら容赦しませんからね」
「ああ、その時は迷わず斬り捨ててくれ、次期団長殿?」
 二人は笑みを交わすと、拳を突き合わせた。
「…よし!では行くぞ!騎士団員を門前へ集めろ!」
「はっ!」
「はっ!」
 国王が身を翻すと、二人の騎士はその後ろを続いた。
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