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大戦の起こらなかった日本、平成二年。世界中で子が生まれなくなり、必ず孕めるオメガは国内に百人といない。
剣崎山桜桃、二十八歳。元陸軍情報将校、いまは兄の秘書兼護衛。オメガの妹の嫁ぎ先として、剣崎家は財閥の泉堂へ縁談を持ちかけていた。ところが返ってきた書面は、なぜか山桜桃を名指ししている。差出人は泉堂賀久——二十年前に婚約を結び、山桜桃がアルファと判定された日にそれを反故にした、幼馴染の御曹司である。
再会の席で卓に置かれたのは、アルファをオメガに書き換える禁忌の薬だった。
「どうする?」
兄から与えられた任務は、財閥が金庫に眠らせている技術の行方を探ること。証拠はなく、泉堂の内側に立てる人間もいない。深入りは禁じられ、外へ繋がるのは月に一度の検診の日だけだ。
妹を守るため、そして任務のため。罠と知りながら、山桜桃は自分の意志でそれを呷る。
月に一度のヒートは、賀久にしか鎮まらない。書き換えられた身体を診られる医者も、泉堂にしかいない。幾重にも鎖をかけられた偽装結婚のなかで、山桜桃は限られた手札をやりくりしながら報告を続ける。
賀久はすべてを見抜いた上で、なにも言わない。先回りした配慮も、完璧な優しさも、疑えばそのまま証拠に見えた。
夜がくれば、その男に溶かされる。
これは正しいことなのか——揺れながら、山桜桃は任務を続ける。
文字数 101,520
最終更新日 2026.09.03
登録日 2026.08.30
七百年こじれた恋心を隠して、彼は今日も相棒の顔をする。ミステリアス陰陽師×男前刑事のバディBL。
三条衣織は七百年、待っていた。
待たれていた男だけが、そのことを知らない。
深夜二時の玉川上水。笑って死んでいる仏さんの現場で、桃山矢太郎(三十二・警視庁の刑事)は、やたらと顔のいい「お役所勤め」の男に出会う。
男の名は三条衣織。内閣官房直轄・特殊霊異対策室——明治に消えたはずの陰陽寮の成れの果てで、性別も年齢も問わず万人を魅了する笑顔の持ち主。なのにその魅了が、矢太郎にだけ、なぜか効かない。
「あなただけ、です」
気づけば矢太郎は対策室に出向させられ、この胡散くさい美形と相棒にされていた。水に呼ばれる事件、フリマアプリの縁切り護符、真夜中の儀式。東京の底でなにかが動き出している。事件現場に必ず転がっている、季節外れの赤い実とともに。
衣織は勝手に合鍵で上がり込んで飯を作るし、距離は近いし、セクハラ発言も平常運転だ。なのに肝心なことはなにも言わない。なんで初対面で俺の名前を知っていた。なんでお前は、たまに泣きそうな顔で俺を見る。
七百年ぶんの答え合わせが、いま始まる。
※現代東京を舞台にした陰陽道×警察バディもの。基調はシリアス、掛け合いは軽快。七百年一途の執着攻め(人外)×フラット受け(刑事)のスロー甘、中盤以降に糖度高めの性描写あり。ハッピーエンドです。全42話・完結済み、毎日更新。
※ムーンライトノベルズ・アルファポリス・Nolaノベルに同時掲載しています。
文字数 184,491
最終更新日 2026.08.18
登録日 2026.07.06
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