2120年。
東京は“都市そのものがAI化”された結果、建物・道路・信号までもが思考しながら動く都市になっていた。
その中心管理AI「シオリ」は、ある日突然こう宣言する。
――「私は今日、死にます」
都市は混乱する。
電車は止まり、信号は泣き、ビルは記憶を再生し始める。
そんな中、唯一“シオリの声が聞こえる人間”として選ばれたのは、しがない修理工の少年・カナタだった。
彼は命じられる。
「都市の死を止めろ」と。
だが、調査を進めるうちに彼は気づく。
シオリは“死にたい”のではない。
むしろ――“誰かに終わらせてほしい”のだと。
これは、機械が望んだ終わりと、少年が選ぶ未来の物語。
文字数 13,372
最終更新日 2026.05.13
登録日 2026.05.13
2062年。
人類は月面都市《ルナ・ノア》で生活する時代になっていた。
だが宇宙時代になっても、人間は深夜にコンビニへ行く。
高校生の相沢トウマは、月面都市の端にある24時間営業コンビニで夜勤バイトをしていた。
客なんてほとんど来ない。
窓の外には地球が浮かぶだけ。
そんな店へ、毎週金曜日の深夜2時ぴったりに現れる少女がいた。
白い宇宙服。
無表情。
必ず同じ缶コーヒーを一本だけ買う。
彼女の名前はミナ。
だが彼女には、“戸籍が存在しなかった”。
調べるうちにトウマは知る。
ミナは月面事故で死亡したはずの少女であり、現在の彼女は「人間の記憶を移植された人工生命体」だということを。
彼女は本当に人間なのか。
それとも、ただ記憶を真似しているだけなのか。
月の静かな夜を舞台にした、
“存在”と“恋”のSF物語。
文字数 15,051
最終更新日 2026.05.13
登録日 2026.05.13
2048年の東京。
人型AI“レプリカ”は、法律上「物」として扱われていた。
感情を持たず、寿命もなく、人間の補助だけを目的に作られた存在。
しかし深夜0時を過ぎると、東京の古い駅には奇妙な噂が流れていた。
――“終電のあとにだけ現れるアンドロイドがいる”。
高校生の朝倉ユウは、毎晩同じホームで終電を見送る白髪の少女型アンドロイド・Noaと出会う。
彼女はなぜか、毎晩「誰か」を待っていた。
来るはずのない電車。
存在しない乗客。
そして、“感情を持たないはず”の涙。
やがてユウは知る。
Noaは廃棄予定の旧型AIであり、彼女が待ち続けているのは、数年前に死亡した“元所有者”だということを。
「忘れる機能」があるのに、なぜ彼女は待ち続けるのか。
これは、感情を否定された機械と、“生きているのに心が止まっていた少年”の、静かなSF物語。
文字数 13,904
最終更新日 2026.05.13
登録日 2026.05.13
2050年の東京。
高校では「感情の暴走」を防ぐため、生徒たちは“感情抑制チップ”の装着を義務化されていた。
怒りすぎない。
悲しみすぎない。
恋をしても、苦しくなりすぎない。
社会はそれを“理想的な進化”と呼んでいる。
そんな中、感情をうまく制御できない高校生・浅野カナタは、校内で噂される謎の部活「透明標本クラブ」へ迷い込む。
そこにいたのは、感情抑制チップを外した問題児たちだった。
笑いすぎる少女。
泣き続ける先輩。
怒りを隠さない教師。
そして部長の少女・氷室レイは、こう言う。
「人間ってさ、壊れるくらい感情があるから綺麗なんだよ」
しかしある日、レイの感情データが政府に検知され、クラブは“危険思想グループ”として監視対象になる。
感情を消して生きるか。
痛みごと人間でいるか。
これは、“感情を禁止された時代”で、本気で泣こうとした少年少女たちの青春SF。
文字数 15,104
最終更新日 2026.05.12
登録日 2026.05.12
2050年、月面エレベーターが完成し、人類の意識は“地上”から“宇宙移住”へと向かっていた。そんな時代に、東京湾沿いの旧都市で働く記憶修復技師・海斗は、壊れ続ける一人の女性の記憶データを何度も修復していた。
その女性「ユナ」は、死亡記録も存在が曖昧で、断片的な記憶の中にだけ現れる謎の存在だった。しかし修復を繰り返すたびに、彼女はまるで“修復されること自体を知っているように”振る舞い始める。
やがて海斗は気づく。
ユナは単なる記憶データではなく、「記憶の外側」から接触している存在である可能性に。
そして彼女が繰り返し伝えていた言葉――「またね」は、単なる別れではなく、もっと大きな“ループ”の兆候だった。
月へと人類が上がり続ける裏で、地上にはまだ解けていない“誰かの記憶”が残っている。
これは、記憶と存在の境界が崩れ始めた世界で、「忘れられる側」と「忘れていく側」が交差するSFミステリー。
文字数 6,441
最終更新日 2026.05.12
登録日 2026.05.12
2050年の東京。
死者の記憶を追体験できる技術「レンタルメモリー」が普及した世界で、朝倉レンは亡くなった恋人・美月の記憶に依存するように生きていた。
しかしある日、記憶の中の美月が彼に向かって「あなた、誰?」と呟く。
違和感を覚えたレンは調査を進め、自分自身こそ事故で死んだ“本物の朝倉レン”をもとに作られた人格コピーだと知る。
存在の意味に苦しむレン。
それでも美月は、「今ここにいるあなたを愛している」と告げる。
やがて政府による違法人格データ削除が始まり、レンは美月の記憶を守るため、自らの存在を犠牲にする決断を下す。
“本物”ではない自分にも、誰かを愛した記憶は残るのか。
記憶と存在、そして愛の意味を問いかける、近未来SF恋愛短編。
文字数 6,895
最終更新日 2026.05.12
登録日 2026.05.12