裏話「恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした」
【蛇足】
その男とあったのは、あいつを探し始めてしばらく経った頃だ。
「たぶん、今はこの街にいないと思うよ」
そう言って、接触してきた男は整い過ぎるほどに整った美しい顔で笑った。
知り合ったその男は、自分の探していたアイツのことを同じように探していた。
「あいつ、色んなトコで似たようなこと繰り返してるから、結構恨みを買ってるよ」
一見感じがよく話しやすいアイツに惹かれる一般の男女は多いらしい。真面目な者ほど、自分にない魅力に惹かれるかもね、そう、美貌の男は苦く笑った。だが、表面のきれいな皮を剥けば、腐りきった中身だ。
「俺、妹がいたんだよね。異母妹で、会ったことあるのが一度だけ。アイツのせいで死んだよ。情もなにもないけどね、ほんのちょっと、腹いせを晴らしてやろうかなって。……他にも似たような話がある。色々なとこから、依頼もらってるんだよねぇ。……あの男、俺にちょうだい」
ニコニコと美貌の男が話す。
「俺のバックは探らないでね? これは俺の趣味でやるから。小遣い稼ぎは見逃して。…たぶん、初期投資で赤字だけどねぇ。最終的には黒字にするけど。まあ、色恋沙汰に騎士が顔を突っ込むのは、野暮ってもんでしょ?こういうのは、俺ら向けだよ」
調教はただの趣味だけど。そう言って美貌の男は笑う。
お綺麗な騎士様はすっ込んでろ。
言外に言われた言葉に嘆息する。
「見つけたら、連絡する」
* * *
「なにそれ!ウケるんだけど!」
昼間の一幕を告げると、美貌の男は腹を抱えて笑う。
「にしても、ずいぶんいい宿を確保したねぇ…」
「これは、お前への詫びだ」
「ふーん? 詫び、ねぇ。まあいいや。長期戦だけど、首尾よくいったら連絡するねぇ」
「……必要ない。私は手を引く。……私が関わると、ヤツを殺したくなる。それに、意図はなくとも、あの子自身が自分の力でやり遂げた。ならば私が手を出すべきではない。お前の好きにしたらいい」
「それがいいよぉ。騎士様は、おキレイなままでいればいい」
嘲るように笑う美貌の男に、騎士は苦く笑った。
騎士であるが故に、騎士なりの葛藤が色々渦巻いておりました。
ラウール(きっと偽名)は、獲物をゆずってもらえて「詫び」までもらえて、ラッキーだったと思われ。