【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空

文字の大きさ
9 / 28

【9話】ラルフの街案内③

しおりを挟む

 とても美味しい昼食を食べ終え、ミレアとラルフはカフェを出た。
 
 その後もミレアは、色々な場所を案内してもらっていく。
 
 着々と時間は進んでいき、気づけば夕方近くになっていた。
 
「次で最後だな」

 最後に案内された場所は、街の中央部。
 噴水広場になっているそこに、ドカンとそびえ立つ大きな建物があった。
 
 街にある建物の中で、まず間違いなく一番大きかった。
 存在感が半端ではない。
 
「大きい建物ですね」
「ここは冒険者ギルドだ」

 冒険者ギルドと聞いて、昨晩の会話を思い出す。
 
 ラルフのような冒険者へ、依頼を発注する場所。
 それがここ、冒険者ギルドだ。
 
 ギルドへ入ると、中にいる人達の視線が一斉にこちらへ向いた。
 
 その多くは男性だ。厳つい顔つきで武器を携えている。
 彼らはみな、ラルフと同じく冒険者をしているのだろう。
 
「おい、見てみろ。SSランクのラルフだ」
「あれがSSランク冒険者か。ただ者じゃないオーラを感じるな」
「連れてる女、めちゃくちゃ可愛いな。羨ましい限りだぜ」
 
 どうしてか、ものすごく注目を集めている。
 彼らが口々に言っているSSランクというのが、注目されている理由なのだろうか。
 
(でも、SSランク冒険者ってどういう意味かしら?)

 ランクというのが冒険者としての階級を表しているのは、何となく予想がつく。
 しかしSSというのが、どの階級を示しているかが分からない。
 
 実際の冒険者ランクは、下から順にF~SSとなっている。
 一番上のランクであるラルフは、注目を集めて当然だった。
 しかし冒険者について詳しくないミレアは、その辺の事情を知らないでいた。
 
(よく分からないけど、これだけ注目を集めているってことはきっとすごいのよね! さすがラルフ様だわ!)

 揺るぎないラルフへの信頼が、ミレアの疑問を無理矢理に解消した。
 
「依頼受付カウンターがあそこで、あっちは酒場だ」

 ギルドの内部を説明してくれているアルフ。
 しかし急に、「すまない、帰ろう」と言い出した。
 
「急にどうしたのですか?」
「会いたくないヤツらがここにいた」
「え?」

 首を傾げていると、二人組の男女が近づいてきた。
 
「パーティーメンバーの俺らに向かって、ひどい言い草だな」

 茶色い髪をした、二十歳くらいの男性。
 全身の筋肉が盛り上がった、とても逞しい体つきをしている。

「そうね、私の乙女心が傷ついてしまったわ」

 男性の隣にいるのは、オレンジ色の髪をした二十歳くらいの女性だ。
 とても綺麗でいて凛々しい顔つきをしている。その上、スタイルも抜群だ。
 
「俺は事実を言ったまでだ」

 男女に対して、大きなため息を吐いたラルフ。
 ミレアを見ながら「紹介する」と、面倒くさそうに口にした。
 
「一緒にパーティーを組んでいるルークとエリザ。共にSランク冒険者だ」
「ミレアです、よろしくお願いします」
「エリザよ。よろしくね!」

 笑顔でフリフリと手を振ってくれる。
 愛想よく、とても感じの良い人だ。

 もう一方のルークは、驚くべき速さでミレアとの距離を詰めてきた。
 驚いている暇もなく、目の前に立たれる。

「僕はルークといいます。あなたのような麗しい方に出会うため、僕は生まれてきたのかも――」
「あんたねぇ」

 ルークの背後から、首に腕を回したエリザ。
 そのままググッと、ルークの首を絞めつけていく。
 
「婚約者の前で他の女を口説くとは、良い度胸しているじゃない」
「冗談だよ! エリザが一番だ!」

 ルークは必死になって、エリザの腕をタップする。
 
 そんな二人に、ラルフは再びため息を吐いた。
 
「根は良いのだが、見ての通りバカなヤツらだ」
「ちょっと、一緒にしないでよ! 私は違うんだけど!」
「そうだ! バカなのはエリザだけだ!」

 三人が睨み合う。
 その掛け合いが面白くて、ミレアは小さく吹き出した。
 
「みなさん仲良しなんですね!」
「まぁ、それなりにはな」

 照れながらラルフが答える。
 
「仲良しと言えばよ、ラルフとミレアさんも随分と仲が良いみたいだな」
「そうね。でもまさか、あのラルフがねぇ」

 エリザとルークがニヤニヤ笑う。
 露店商の店主、ソーヤと同じ笑い方をしていた。

「思った通り面倒臭いことになった。だから俺は、お前らに会いたくなかったんだ。ミレア、帰ろう」
「悪かった、冗談だって! 怒らないでくれよ」

 帰ろうとするラルフ。
 その肩を、ルークがガッと掴んだ。
 
「これから一緒に飯でもどうだ?」
「せっかくだが、今日は遠慮しておくよ」
「そうか。それじゃ、また今度な。ミレアちゃんも、また会おう」
「今度ゆっくり話しましょうね、ミレアちゃん」

 ルークとエリザが笑顔で手を振ってくれた。

「お二人ともありがとうございます」

 手を振る二人に、軽くお辞儀をしたミレア。
 ラルフと一緒に冒険者ギルドを去った。
 

 家への帰り道。
 夕方になって人がまばらになった路上を、ラルフと二人で歩いていく。
 
「面倒事に巻き込んでしまって済まなかった。疲れただろ?」

 ルークの誘いを断ったのは、ミレアの疲れを心配してのことだったのかもしれない。
 
 その気遣いに、ミレアは心の中で感謝を送る。

「いえ、とても楽しい人達でした。今度はもっとお話してみたいです」
「それなら良かった」

 小さく笑ったラルフだったが、すぐに心配そうな表情になる。
 
「ここの人達は基本的に良い人ばかりだが、少しお節介すぎることがある。もしそれで困ったら、すぐ俺に相談してくれ」
「ありがとうございます!」

 心配してくれている気持ちが嬉しい。
 夕日が照らす道の上で、ミレアは笑顔で頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】侯爵令嬢ガブリエラの災難な結婚 ~ふわふわ王太子に見初められたので婚約破棄を目指します!

三矢さくら
恋愛
【完結しました】ガブリエラはヴィラーグ王国の侯爵令嬢。突然、王太子アルパードから結婚の申し入れをされる。 だけど嬉しくない。なぜならヴィラーグ王国では三大公爵家の権勢が絶大。王太子妃は王家にも比肩する勢力の三大公爵家から輩出するのが慣例で、ガブリエラが王太子妃になれば実家のホルヴァース侯爵家がいじめ潰されてしまう。 かといって光栄な申し入れを断っても王家への不敬。それもお家断絶につながりかねない。 やむなく一旦は婚約するけれど、愛する実家を守るためどうにか穏便に婚約破棄しようと、ガブリエラの奮闘がはじまる。 しかし、アルパードの誰もが見惚れる美麗な笑顔と、まるで子供のように純粋な瞳。そして、アルパードがなぜ自分を選んだのか、その驚くべき理由を知ったガブリエラは、次第にアルパードに惹かれてしまい――。 ガブリエラとアルパードの初々しい恋は、王位継承を巡る陰謀、隣国との複雑な駆け引き、さらには権謀渦巻く国際謀略の渦へと呑み込まれてゆく。 華麗で重厚な王朝絵巻を舞台に、優雅で可憐で個性豊かなご令嬢キャラが多数活躍する、実は才色兼備で文武両道の猫かぶり令嬢ガブリエラが軽快に駆け抜ける、異色の異世界恋愛外交ファンタジー。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】婚約破棄された令嬢リリアナのお菓子革命

猫燕
恋愛
アルテア王国の貴族令嬢リリアナ・フォン・エルザートは、第二王子カルディスとの婚約を舞踏会で一方的に破棄され、「魔力がない無能」と嘲笑される屈辱を味わう。絶望の中、彼女は幼い頃の思い出を頼りにスイーツ作りに逃避し、「癒しのレモンタルト」を完成させる。不思議なことに、そのタルトは食べた者を癒し、心を軽くする力を持っていた。リリアナは小さな領地で「菓子工房リリー」を開き、「勇気のチョコレートケーキ」や「希望のストロベリームース」を通じて領民を笑顔にしていく。

秘密の多い令嬢は幸せになりたい

完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。 完結が確定しています。全105話。

追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~

放浪人
恋愛
公爵令嬢セラフィナは、異母妹イゾルデの策略により、婚約者である王子アラリックから「悪役令嬢」の汚名を着せられ、婚約破棄と同時に辺境への追放を宣告される。絶望の中、彼女を待ち受けていたのは、冷酷無比と噂される「氷の辺境伯」カシアンとの政略結婚だった。死をも覚悟するセラフィナだったが、カシアンは噂とは裏腹に、不器用ながらも彼女を大切に扱い始める。戸惑いながらも、カシアンの隠された優しさに触れ、凍てついた心が少しずつ溶かされていくセラフィナ。しかし、そんな彼女たちの穏やかな日々を、過去の陰謀が再び脅かそうとする。果たしてセラフィナは、降りかかる不遇を乗り越え、カシアンと共に真実の愛と幸福を掴むことができるのか? そして、彼女を陥れた者たちに訪れる運命とは――?

処理中です...