【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空

文字の大きさ
8 / 28

【8話】ラルフの街案内②


 次にラルフが案内してくれたのは、大きな服飾店だった。
 この街唯一の服飾店で、衣服やアクセサリー類を扱っているという。
 
 店内に入ると、リーズナブルな値段の洋服がいっぱい売っていた。
 セール中とのことで、通常価格より大きく値引きされている。
 
「ラルフ様、お買い物をしてもよろしいでしょうか?」
「構わないぞ。何を買うんだ?」
「ちょうどセール中ですし、お洋服を買おうと思っています」

 家から着替えの服は持ってきているが、それは最低限の数しかない。
 汚損などで着れなくなった時のことを考えれば、もう少し数を増やしておきたいところである。

 セール中で安く服を買える今が、ストックを蓄えるチャンスだ。

 全財産である金貨二枚を握りしめ、ミレアは洋服を買いに行こうとする。

「あちらの方が、君には似合いそうだがな」

 ラルフの小さな呟きに、ミレアは足を止める。
 
 ラルフの視線は洋服が売られているスペースではなく、その奥に向いている。
 そこには、いっぱいのドレスが売っていた。
 
 ドレスの質はかなり高いように思える。
 王都で売っているものと比べても、遜色ない品物だろう。

 しかし高品質だけあって、当然ながら値段も高かった。セール中の洋服よりもずっと高額だ。
 金貨二枚で買えるドレスなどは、そこには売っていなかった。

「そう言ってもらえて嬉しいです。でも、今の私の手持ちのお金じゃ到底買えません。それにあんなに綺麗なドレス、私にはもったいないです」
「そんなことはない! ミレアはとても……き、綺麗だ」
「ごめんなさい。『ミレアはとても』の後がよく聞こえなかったので、もう一度よろしいでしょうか?」

 声量が極端に小さくなったので、うまく聞き取れなかった。
 だからもう一度聞き直そうとしたのだが、アルフは顔を赤くして俯いてしまっている。
 俺は何を言っているんだ、とボソボソ呟いていた。
 
(聞き直すのは無理そうね)
 
 ラルフは一人の世界に入ってしまっている。
 しばらくはそこから出てきそうにないだろう。
 
「それでは、洋服を買ってきますね」

 諦めたミレアは、セール中の洋服を買いに向かう。
 
 機能性が高く汚れが目立ちづらいものを、数点選んで購入する。
 家事を行うミレアにとっては、その二つが大事な事項だった。
 デザイン性は求めていない。
 
「お待たせいたいしました」
「満足のいく買い物はできたか?」
 
 買い物を終えて戻ると、ラルフはいつも通りの様子に戻っていた。
 
(ラルフ様は結局何て言っていたのかしら?)
 
 疑問に思いつつも、ミレアは頷く。
 ここで聞けばまた、ラルフが自分の世界に閉じこもってしまう気がした。
 
「では出ようか」
 
 
 服飾店を出ると、時刻は正午近くになっていた。
 
「そろそろ昼にしよう。食べたいものはあるか?」
「うーん、そうですね……」

 急にそう言われても、すぐにはポンと出てこない。
 
(ここはラルフ様にお任せしましょう)

「ラルフ様おススメのお店があれば、そこへ行ってみたいです」
「それなら、あそこのカフェでいいか? オムレツがうまいんだ」
「はい!」

 ラルフが示したのは、服飾店の隣にある小さなカフェだった。
 
 店内へ入った二人。
 店内は落ち着いていて、ゆったりできそうな雰囲気だ。
 
 窓際のテーブル席に、対面になって座る。
 
「コーヒーとオムレツを頼む」
「私も同じのでお願いします」

 注文してからしばらく、店員がコーヒーとオムレツを運んできた。
 
(美味しそうだわ!)
 
 オムレツの鮮やかな黄色とバターの香りが、ミレアの食欲をそそった。
 
 期待に胸を弾ませながら、オムレツを口に入れる。
 
「う~ん!」
 
 ふわふわの焼き加減と甘味が、ものすごく絶妙。
 ほっぺたが落ちそうなくらいに、最高に美味しいオムレツだ。
 
「とっても美味しいです!」
「良かった。気に入ってくれたみたいで俺も嬉しい」
「こういう美味しい料理が作れるように、私も頑張りますね!」
「ミレアの料理はもう十分に美味しいぞ?」

 やる気に満ちあふれているミレアに、ラルフは首を傾げた。
 
「俺はミレアの料理が好きだ。世界一好きだ」

 そんなに好き好き言われたら恥ずかしい。
 何だか愛の告白を受けているような気になって、ミレアは一人悶えてしまう。
 
 褒めてくれるのは嬉しいけど、これは少しばかりやりすぎではないだろうか。
 
 顔を真っ赤にしたミレアは目線を伏せながら、「ありがとうございます……」と小さく呟いた。

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢として追放された私、辺境の公爵様に溺愛されています〜趣味の魔法薬作りが本物の聖女の力だったと気づいてももう遅い〜

黒崎隼人
恋愛
「お前のような女との婚約は、この場をもって破棄する」 妹のような男爵令嬢に功績をすべて奪われ、悪役令嬢として国を追放された公爵令嬢ルミナ。 行き場を失い、冷たい床に崩れ落ちた彼女に手を差し伸べたのは、恐ろしいと噂される北の辺境公爵、ヴィンセントだった。 「私の妻として、北の地へ来てくれないか」 彼の不器用ながらも温かい庇護の下、ルミナは得意の魔法薬作りで領地を脅かす呪いを次々と浄化していく。 さらには、呪いで苦しんでいたモフモフの聖獣ブランまで彼女にべったりと懐いてしまい……? 一方、ルミナという本物の聖女を失った王都は、偽聖女の祈りも虚しく滅亡の危機に瀕していた。 今さらルミナの力に気づき連れ戻そうとする王太子だったが、ヴィンセントは冷酷にそれを跳ね除ける。 「彼女は私の妻だ。奪い取りたければ、騎士団でも何でも差し向けてみるがいい」 これは、誰からも愛されなかった不遇の令嬢が、冷徹な公爵とモフモフ聖獣に底なしに溺愛され、本当の幸せと笑顔を取り戻すまでの心温まる雪解けのロマンス。

【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。 「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」 彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。 瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット! 彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる! その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。 一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。 知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!

ご要望通り幸せになりますね!

風見ゆうみ
恋愛
ロトス国の公爵令嬢である、レイア・プラウにはマシュー・ロマウ公爵令息という婚約者がいた。 従姉妹である第一王女のセレン様は他国の王太子であるディル殿下の元に嫁ぐ事になっていたけれど、ディル殿下は噂では仮面で顔を隠さないといけないほど醜い顔の上に訳ありの生い立ちの為、セレン様は私からマシュー様を奪い取り、私をディル殿下のところへ嫁がせようとする。 「僕はセレン様を幸せにする。君はディル殿下と幸せに」 「レイア、私はマシュー様と幸せになるから、あなたもディル殿下と幸せになってね」 マシュー様の腕の中で微笑むセレン様を見て心に決めた。 ええ、そうさせていただきます。 ご要望通りに、ディル殿下と幸せになってみせますね! ところでセレン様…、ディル殿下って、実はあなたが一目惚れした方と同一人物ってわかっておられますか? ※7/11日完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。

お前を愛することはない!?それより異世界なのに魔物も冒険者もいないだなんて酷くない?

白雪なこ
恋愛
元婚約者のせいで、今、私ったら、「お前を愛することない!」と言う、つまらない台詞を聞く仕事をしておりますが、晴れて婚約者が元婚約者になりましたので、特に文句はございません!やったぜ! 異世界に転生したっぽいのに、魔物も冒険者もいないので、夢と希望は自分で作ることにしました。まずは、一族郎党へのロマンの布教完了です。 *激しくゆるゆる。いや、おかしいだろ!とツッコミながらお読みください。 *タイトル変更・1話修正・短編から長編に変更 *外部サイトにも掲載しています。

役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。 絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。 しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身! 「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」 シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています