23 / 28
【23話】国王との謁見
しおりを挟む豪華な装飾が施されている、金色の巨大な両扉。
この大広間の中に、国王がいるという。
「お二人とも、準備はよろしいですかな?」
ゼルの問いに、ミレアとラルフは小さく頷いた。
「それでは、お入りください」
ゼルが扉を開く。
大広間はとてもつもなく広い空間になっていた。
床には大理石のタイルが敷き詰められている。
天井に吊るされている巨大なシャンデリアが、それを照らしていた。
部屋の中央には、横長のテーブルが設置されている。
その中心には、王冠を被った白髪交じりの男性が座っていた。
(あの人が国王だわ)
テーブルに向かって歩いていくミレアとラルフ。
国王の眼前で止まった二人は、深く頭を下げる。
「ここは玉座ではない。顔を上げてくれ」
顔を上げると、国王はにっこりと笑っていた。
優しい笑顔は、ラルフそっくりだ。
「よく来てくれたな。二人とも、まずは席に座ってくれ」
言われた通り、ミレアとラルフは国王の対面に隣り合って座る。
「急に呼び立ててしまってすまないな。特に、ミレアさん。緊張せずリラックスしてくれ」
「ありがとうございます」
一応はそう言ってみたものの、国王を前にしてリラックスなんてできっこない。
体はガチガチに固まっている。
「ここへ呼んだのは、この目で直接ミレアさんを見たいと思ったからだ」
「私を……ですか?」
「あぁ。ラルフから君の話を聞いて、興味が湧いたんだ」
国王がラルフの方を見る。
「一目見て分かったよ。ミレアさんがお前の言っていた通りの子だとね。ラルフ、良いパートナーを選んだな。天国にいる妻も、きっと喜んでいるだろう」
「ありがとうございます」
深く頭を下げるラルフ。
グイっと上がっている口元から、本当に嬉しそうなのが分かる。
同じようにして、ミレアも深く頭を下げる。
「私の参加を認めて下さり、誠に感謝いたします」
「気にしなくていい」
優しく微笑んでから、国王はフッという小さな笑い声を上げた。
「これまで女気のひとつもなかったラルフが、『パーティーに一緒に出たい女性がいる』と言ってきた時は、少し驚いたけどな」
「え、女気ひとつなかったのですか!」
意外過ぎて、つい大声を出してしまう。
こんなに優しくてカッコイイ男性がいたら、世の女性は放っておかないだろう。
過去の交際経験の一つや二つ、あって当然だと思っていた。
「縁談は山のように来ていたが、ラルフは全部断っていたんだ。結婚相手は俺の手で見つけたい、とそう言ってな」
「……そうだったんですね」
「このまま相手が見つからないのではと心配していたが、どうやら取り越し苦労だったようだ。ミレアさんと結婚すれば、ラルフは必ず幸せになれるだろう」
(私が、ラルフ様と結婚)
ミレアの顔がポッと赤くなる。
意識したら、どうにもドキドキして気恥ずかしい。
「父上、ミレアが困っています。お戯れはこれくらいで」
「おぉ、これはすまなかった」
ははは、と国王が笑い声を上げる。
随分とフレンドリーな雰囲気に、ミレアの緊張が解けていく。
「そうだミレアさん、冒険者のラルフについて教えてくれないか? ゼルから報告は受けているのだが、どうも味気なくてな。実際にラルフと暮らしている君の口から、直接聞いてみたいんだ」
「はい、私で良ければぜひ!」
ラルフにどれだけ助けて貰っているか。
その気持ちをいっぱいに込めながら、普段の日常を話していく。
前のめりでミレアの話を聞く国王。
相槌を打ちながら、とても楽しそうにしている。
その間ラルフは、ずっと気まずそうに顔を伏せていた。
(この人達と家族になれたら、毎日がきっと楽しいわね)
ラルフと国王の家族仲が良いことは、この時間だけでハッキリと分かった。
その輪の中に入れたらきっと楽しい、そうミレアは思った。
864
あなたにおすすめの小説
【完結】侯爵令嬢ガブリエラの災難な結婚 ~ふわふわ王太子に見初められたので婚約破棄を目指します!
三矢さくら
恋愛
【完結しました】ガブリエラはヴィラーグ王国の侯爵令嬢。突然、王太子アルパードから結婚の申し入れをされる。
だけど嬉しくない。なぜならヴィラーグ王国では三大公爵家の権勢が絶大。王太子妃は王家にも比肩する勢力の三大公爵家から輩出するのが慣例で、ガブリエラが王太子妃になれば実家のホルヴァース侯爵家がいじめ潰されてしまう。
かといって光栄な申し入れを断っても王家への不敬。それもお家断絶につながりかねない。
やむなく一旦は婚約するけれど、愛する実家を守るためどうにか穏便に婚約破棄しようと、ガブリエラの奮闘がはじまる。
しかし、アルパードの誰もが見惚れる美麗な笑顔と、まるで子供のように純粋な瞳。そして、アルパードがなぜ自分を選んだのか、その驚くべき理由を知ったガブリエラは、次第にアルパードに惹かれてしまい――。
ガブリエラとアルパードの初々しい恋は、王位継承を巡る陰謀、隣国との複雑な駆け引き、さらには権謀渦巻く国際謀略の渦へと呑み込まれてゆく。
華麗で重厚な王朝絵巻を舞台に、優雅で可憐で個性豊かなご令嬢キャラが多数活躍する、実は才色兼備で文武両道の猫かぶり令嬢ガブリエラが軽快に駆け抜ける、異色の異世界恋愛外交ファンタジー。
【完結】妹に存在を奪われた令嬢は知らない 〜彼女が刺繍に託した「たすけて」に、彼が気付いてくれていたことを〜
桜野なつみ
恋愛
存在を消された伯爵家の長女・ビオラ。声を失った彼女が、唯一想いを託せたのは針と糸だった。
白いビオラの刺繍に縫い込まれた「たすけて」の影文字。
それを見つけたのは、彼女の母の刺繍に人生を変えられた青年だった──。
言葉を失った少女と、針の声を聴く男が紡ぐ、静かな愛の物語。
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~
放浪人
恋愛
公爵令嬢セラフィナは、異母妹イゾルデの策略により、婚約者である王子アラリックから「悪役令嬢」の汚名を着せられ、婚約破棄と同時に辺境への追放を宣告される。絶望の中、彼女を待ち受けていたのは、冷酷無比と噂される「氷の辺境伯」カシアンとの政略結婚だった。死をも覚悟するセラフィナだったが、カシアンは噂とは裏腹に、不器用ながらも彼女を大切に扱い始める。戸惑いながらも、カシアンの隠された優しさに触れ、凍てついた心が少しずつ溶かされていくセラフィナ。しかし、そんな彼女たちの穏やかな日々を、過去の陰謀が再び脅かそうとする。果たしてセラフィナは、降りかかる不遇を乗り越え、カシアンと共に真実の愛と幸福を掴むことができるのか? そして、彼女を陥れた者たちに訪れる運命とは――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる