【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空

文字の大きさ
22 / 28

【22話】ラルフと王宮へ


 パーティー開催の一週間前。
 
 ラルフの家の前に、一台の馬車が停まった。
 
「迎えが来たようだ。行こう、ミレア」
「はい」

 家を出たミレアとラルフは、馬車に乗る。
 
 この馬車の向かう先は、王都にある王宮だ。
 パーティーの日まで、まずはそこで数日過ごすことになっている。
 
 嫌な思い出しかない王都。
 そこに戻るというのは、少しだけ気分が重くなる。
 
(でも、今の私は一人じゃない)

 隣に座るラルフの顔を、じっと見上げる。
 
 彼と一緒なら、どんな場所に行こうと大丈夫だ。
 近くにいるだけで不安な気持ちをかき消してくれる、そんな安心感がある。
 
「ミレア」

 名前を呟いたラルフが、ミレアの手をギュッと握る。
 
 その大きくて温かい手を、ミレアもすぐに握り返した。
 どこまでも優しい温もりが、握った手から体全体に広がっていく。
 
 カタカタと揺れる車内で、手を握り合う二人。
 見つめ合って互いに微笑んだ。
 
******

 三日ほどして王宮に到着した。
 
 馬車を降りると、執事服を着た初老の男性が出迎えてくれた。
 
「ラルフ様、ミレア様、お待ちしておりました」

 ピシッと背をただした男性が、深々と頭を下げる。
 品を感じる、とても丁寧なお辞儀だ。
 
「執事のゼルだ。前に言っただろ? 俺の代わりに仕事をしてくれている執事がいるって。それが彼だ」
「超凄腕の有能執事さんですね!」

 ゼルの方を向いたミレアは、深く頭を下げる。
 
「初めまして。ミレアと申します」
「おぉ、なんと礼儀正しい」

 白い髭をさすったゼルが、ニコリと笑う。
 
「ラルフ様に聞いていた通りの素敵なお方ですね」
「私のことをご存知なのですか?」
「はい。仕事をお手伝いしている関係上、ラルフ様とは頻繁に連絡を交わしていますからね。ラルフ様、あなたのことをいつも楽しそうに報告してくれるんですよ」

 いったいどんなことを報告していたのだろうか。
 考えると、何だか恥ずかしい気持ちになってきた。
 
「その話は今じゃなくていいだろう。早く案内してくれ」

 恥ずかしそうに下を向いたラルフが先を急かす。
 
 ゼルは楽しそうに口元を上げてから、「かしこまりました」と頷いた。
 
 
 ゼルに後に続き、王宮に入っていくミレアとラルフ。
 数々の美術品や絵画が展示されている廊下を歩いていく。
 
(やっぱり王宮ってすごいわね)

 周囲の光景に圧倒されながら歩いていくミレア。
 外から王宮を眺めたことはあっても、中に入ったことは一度もなかった。
 
 エルドール家の内装とは、比べ物にならないくらい豪華だ。
 王家の威光のようなものを実感して、体が緊張してくる。
 
「ラルフ様、国王様より『王宮へ着いたら顔を出すように』と仰せつかっております」
「分かった。すぐに向かう」
「それから、ミレア様もご一緒に、と」

 ミレアの足が急ブレーキをかける。
 国王と面会にすることになるなんて、これっぽちも思ってもいなかった。
 
「どどど、どうして私が!」

 大きく動揺。
 言葉がうまく出てこない。
 
「ミレア様のことを知っているのは、私だけではありません。国王様もご存知なのです」

 身元不詳のミレアをパーティーのパートナーにするにあたり、国王の許可を求めてラルフは直談判しに行ったらしい。
 その際、ミレアの人となりを詳しく話したのだそうだ。
 
「正直申しますと、初め、国王様は良い顔をしていませんでした。ですが、ラルフ様の話を聞いていくうちに表情が和らいだのです。最後には、笑顔で許可をお出しになりました」
「……そんなことがあったのですね」

 初耳だった。
 何回か王都に戻っているという話は聞いていたが、まさか国王に直談判しているとは思わなかった。

「黙っていてすまない。ミレアに余計な気を遣わせたくなかったんだ」
「謝らないで下さい」

 ミレアは首を横に振る。
 
 国王に直談判してくれたこと、そのことを黙っていたこと。
 それらは全て、ミレアのためにしてくれたことだ。
 
 ミレアはそれが、たまらなく嬉しかった。
 
「いきなり父上に会うのは緊張するだろう。ミレアは辞退してくれていい。父上には、俺からうまく伝えておく」
「いえ、大丈夫です。緊張はしますけど、お会いしてみたい気持ちの方が強いですから」

 ラルフのパートナーとしてパーティーに参加できるのは、国王が許可してくれたおかげだ。
 国王に直接会って、ミレアはちゃんとお礼を言いたかった。

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢として追放された私、辺境の公爵様に溺愛されています〜趣味の魔法薬作りが本物の聖女の力だったと気づいてももう遅い〜

黒崎隼人
恋愛
「お前のような女との婚約は、この場をもって破棄する」 妹のような男爵令嬢に功績をすべて奪われ、悪役令嬢として国を追放された公爵令嬢ルミナ。 行き場を失い、冷たい床に崩れ落ちた彼女に手を差し伸べたのは、恐ろしいと噂される北の辺境公爵、ヴィンセントだった。 「私の妻として、北の地へ来てくれないか」 彼の不器用ながらも温かい庇護の下、ルミナは得意の魔法薬作りで領地を脅かす呪いを次々と浄化していく。 さらには、呪いで苦しんでいたモフモフの聖獣ブランまで彼女にべったりと懐いてしまい……? 一方、ルミナという本物の聖女を失った王都は、偽聖女の祈りも虚しく滅亡の危機に瀕していた。 今さらルミナの力に気づき連れ戻そうとする王太子だったが、ヴィンセントは冷酷にそれを跳ね除ける。 「彼女は私の妻だ。奪い取りたければ、騎士団でも何でも差し向けてみるがいい」 これは、誰からも愛されなかった不遇の令嬢が、冷徹な公爵とモフモフ聖獣に底なしに溺愛され、本当の幸せと笑顔を取り戻すまでの心温まる雪解けのロマンス。

【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。 「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」 彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。 瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット! 彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる! その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。 一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。 知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!

ご要望通り幸せになりますね!

風見ゆうみ
恋愛
ロトス国の公爵令嬢である、レイア・プラウにはマシュー・ロマウ公爵令息という婚約者がいた。 従姉妹である第一王女のセレン様は他国の王太子であるディル殿下の元に嫁ぐ事になっていたけれど、ディル殿下は噂では仮面で顔を隠さないといけないほど醜い顔の上に訳ありの生い立ちの為、セレン様は私からマシュー様を奪い取り、私をディル殿下のところへ嫁がせようとする。 「僕はセレン様を幸せにする。君はディル殿下と幸せに」 「レイア、私はマシュー様と幸せになるから、あなたもディル殿下と幸せになってね」 マシュー様の腕の中で微笑むセレン様を見て心に決めた。 ええ、そうさせていただきます。 ご要望通りに、ディル殿下と幸せになってみせますね! ところでセレン様…、ディル殿下って、実はあなたが一目惚れした方と同一人物ってわかっておられますか? ※7/11日完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。

お前を愛することはない!?それより異世界なのに魔物も冒険者もいないだなんて酷くない?

白雪なこ
恋愛
元婚約者のせいで、今、私ったら、「お前を愛することない!」と言う、つまらない台詞を聞く仕事をしておりますが、晴れて婚約者が元婚約者になりましたので、特に文句はございません!やったぜ! 異世界に転生したっぽいのに、魔物も冒険者もいないので、夢と希望は自分で作ることにしました。まずは、一族郎党へのロマンの布教完了です。 *激しくゆるゆる。いや、おかしいだろ!とツッコミながらお読みください。 *タイトル変更・1話修正・短編から長編に変更 *外部サイトにも掲載しています。

役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。 絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。 しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身! 「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」 シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています