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【24話】パーティー開幕と衝撃の再会
しおりを挟む王宮に来てから数日が経ち、パーティーの当日になった。
ミレアとラルフは今、会場へ向かう馬車に揺られている。
「そのドレス、着てくれて嬉しい。よく似合っている」
今日のミレアは普段着ではなく、パーティー用におめかしをしている。
着ているのは、鮮やかな青色のエンパイアドレス。
以前、ラルフがプレゼントしてくれたものだ。
大切な宝物であるこのドレスを着て、今日という大事な日を迎えたかった。
「ラルフ様こそ、とってもお似合いです」
シルバーのジャケットに身を包んでいるラルフ。
ビシッと決めているその姿は、いつものラフな格好とはまた違ったカッコよさがある。
首元には、革製のネックレスを付けている。
ミレアがプレゼントした、安全祈願のネックレスだ。
お互いのプレゼントを身に着け、二人はパーティーに参加する。
まるで恋人のようなシチュエーション。
パーティーの開始前から、ミレアはテンションが上がっていた。
大きなホールの前で馬車が停まった。
そこが今日行われる、建国三百周年記念パーティーの会場だ。
王宮よりは小さいが、それでもかなりの人数を収容できるだろう。
「ミレア、手を借りるぞ」
「お願いします」
差し出した手に、ラルフの大きな手が重ねられる。
ラルフにエスコートしてもらいながら、ミレアは会場へと入っていく。
会場内には、既に多くの貴族がいた。
かなりの数の貴族家が、このパーティーに招待されているみたいだ。
会場に入ったミレアとラルフに、貴族たちは目も向けない。
第三王子の正体がラルフであると、彼らは知らないのだろう。
もし知っていたなら、会場に入った瞬間、多くの注目を集めていたはずだ。
「挨拶したい人たちがいるのだが、ミレアも一緒に来てくれないか?」
「分かりました」
ラルフと一緒に向かったのは、会場の一番奥に設けられている貴賓席だった。
仕切りが立てられており、周囲からは見えないようになっている。
そこには国王と、その隣に二人の男女がいた。
国王と男女は、とても親し気な雰囲気だ。
「父上、ご挨拶に伺いました」
国王に頭を下げるラルフ。
ミレアもそれに合わせて深く頭を下げる。
「いつもより男らしいな。よく似合っているぞ、ラルフ」
「ありがとうございます」
いつもより小さな声で返事をするラルフ。
照れているのだろうか。
「ミレアさんもよく似合っているよ。本当に美しい」
「ありがとうございます」
「君がミレアさんか。父上から聞いた通りの、可愛らしい人だね」
笑顔でそう言ったのは、国王の隣にいる男性だった。
ラルフと同じ美しい銀色の髪に、澄んだ水色の瞳をしている。
「僕はレードル。ラルフの兄で、第一王子をしている。で、僕の隣にいるのが、妻のエリアルだ」
「よろしくね」
エリアルは気品のある笑顔を見せた。
透明感のある水色の髪がさらりと揺れる。
とても可愛しい顔立ちをしているが、きっちりした佇まいから淑女のような上品さも感じる。
(まさか、あの有名な第一王子夫妻だったなんて!)
レードルとエリアルは、政治、経済あらゆる分野に精通しているとても優秀な人物。
確かな手腕を持っており、国内外に広く知られている。
フィルリシア王国民で、彼らを知らない人はいないだろう。
もちろんミレアも、名前は知っていた。
しかし、実際の姿を見たのはこれが初めてだった。
慌てて頭を下げる。
「私、ミレアと申します。お目にかかれて光栄です!」
「ははは、そんなに硬くならなくていいよ」
「そうよ。リラックスして」
レードルとエリアルが、そっくりな優しい顔で笑う。
(王族の人達って、みんな心が広いのね)
以前王宮で、同じことを国王に言われたのを思い出す。
国王、第一王子夫妻、ラルフ。これまで出会ってきた王族は、みな良い人たちばかりだ。
全員優しく偉ぶらず、家出令嬢に過ぎないミレアをこうして気遣ってくれる。
「久しぶりに会ったと思ったら、こんな可愛い子を連れて来るとはな。いったいどこで出会ったんだ?」
「話せば少し長くなるぞ」
「どれ、私にも聞かせてくれないか」
レードル、ラルフ、国王の三人は、少し離れたところへ移動。
男同士で話に花を咲かせている。
家族仲だけでなく、兄弟仲もいいようだ。
(なんだか羨ましいわね)
ミレアにもリルンという妹がいるが、あんな風に楽しそうに話したことは一度もない。
だからか、仲の良い兄弟というものに何だか不思議な感覚を覚える。
「ねぇ、ミレアさん」
ちょんちょんと肩をつついてきたエリアル。
口元が嬉しそうに上がっているのはなぜだろうか。
ラルフたちをぼんやり見ていたミレアは、突然のことに体がビクリと跳ねる。
「ミレアさんは、ラルフ様と結婚するのよね?」
ミレアの体が、さらにビクンと跳ねる。
いきなり何てことを言い出すのだろうか。
可愛らしい顔に見合わず、型破りな性格の持ち主なのかもしれない。
「私、ずっと妹が欲しかったの。だからとっても嬉しいわ!」
「そこまではまだ決まっていません」
「……え、そうなの?」
らんらんと輝いていたエリアルの瞳から、徐々に光が失われていく。
(私と姉妹になるのが、そんなに楽しみだったのかしら)
あくまで事実を言っただけなのだが、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
だからミレアは、追加で一言付け加える。
「でも、そうなりたいと強く願っています」
ちょっと恥ずかしいので、はにかみながら笑う。
このパーティーの後でラルフに伝えようとしている、ミレアの胸に秘めた気持ち。
口にした願いが叶うかは、それの結果次第だ。
両手を伸ばしたエリアルが、ミレアの両手をギュッと握った。
瞳は再び輝きを取り戻したのだが、今度はなぜか泣きそうになっている。
「私にできることがあったら何でも言って。それから私のことは、姉と呼んでくれていいからね」
「……それはちょっと早すぎるかと」
苦笑いを浮かべるミレアだったが、エリアルの気持ちは素直に嬉しかった。
世話焼き体質なところがエリザに少し似ているからか、出会って間もないのに好感を覚える。
それからミレアは、エリアルと取り留めのない話をした。
好きな食べ物、趣味、普段は何をしているか。
堅苦しさのかけらもない色々な話だ。
波長が合ったのか、話は多いに盛り上がる。
お姉さん兼友達が出来たみたいで、なんだか嬉しく感じる。
そうしていると、ラルフがこちらへ向かってきた。
「ミレア、そろそろ戻ろう」
「はい」
「なんだ戻ってしまうのか? 二人とも、ここにいればいいじゃないか」
レードルの申し出に、ラルフが首を横に振る。
「すまない兄上。第三王子であることは、まだ隠しておきたいんだ」
「そうか。それなら、今度一緒に食事しよう。エリアルとミレアさんも交えて四人で」
「素晴らしい提案よレードル。ミレアさんとは、もっとお話したいもの」
「エリアルがそこまで言うなんて珍しいな」
エリアルとレードルが嬉しそうに笑う。
「そういう訳だから、食事の件は覚えておいてくれ」
「あぁ。その約束は必ず果たそう」
「私もです!」
国王と第一王子夫妻に礼をして、ラルフとミレアは貴賓席を出た。
それから少しして、国王と第一王子夫妻がパーティー開始の挨拶を行う。
会場内から起こるたくさんの拍手とともに、パーティーが始まった。
先ほどまでいた貴賓席には、多くの貴族たちが列を作っている。
少しでも王家に顔を売っておきたいのだろう。
一方で、ミレアとラルフは平和だった。
大した力のない弱小貴族としか思われていないのか、媚びを売りにくる人間はいない。
それでも、やって来る人間はゼロではない。
「新規事業を立ち上げようと思っているですが、ご説明だけでもいかがでしょうか?」
「安価な輸入綿花によって、国内の綿花は確実に衰退します。どうです、私が取り仕切る綿花の輸入事業に一枚噛みませんか?」
色々な人間が、事業の紹介や共同事業の話を持ち掛けてくる。
言ったら悪いが、どれもこれも胡散臭い。
ラルフもそう思っているのか、軽くあしらっていた。
そうしてまた一人、ミレアたちのところに女性がやって来る。
しかしその人物は、今までのような事業を紹介にしに来た人間たちとは毛色が違っていた。
「私、リルン・エルドールと申します。……お久しぶりですね、お姉様」
挨拶をしてきたのは、ミレアの妹、リルンだった。
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