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【25話】また奪い取ってあげる ※リルン視点
王都で行われている、建国三百周年記念パーティー。
その会場に、リルンは一人で来ていた。
本来なら両親も一緒に来るはずだったのだが、融資返済の件でそれどころではないらしい。
(そんなことは使用人にでも任せて、パーティーに来ればよかったのに)
小さくため息を吐く。
楽しむときは思い切り楽しまないと、人生損するだけだと思う。
「でも、お父様とお母様がいてもいなくても関係ないか。私がやることは変わらないのだし」
リルンがこのパーティーに来た目的はただ一つ。
自分を楽しませてくれるような、素敵な男性を探すことだ。
既に複数人の男性から、リルンは好意を含んだ視線を受けている。
可愛らしい容姿に見とれているのが丸わかりだ。
ちょっと甘えた声をかければ、簡単に落ちるだろう。
彼らの中には、良い線をいっている男性もいる。
顔は悪くないし、着ている服装も結構良いものだ。
それなりに楽しめるだろう。
しかし、それなりではダメだ。
リグレルの失敗を踏まえ、今回の相手は、レベルの高い相手でなければならない。
(これだけの人数がいれば、相手を探すのには困らなさそうね)
広い会場内をざっと見渡していく。
思った通り、普通の社交パーティーとは比べ物にならないくらいの人間が参加している。
リルンが求めるレベルに達していそうな男性も、ちらほら見受けられた。
(あの人なんて良さそうね)
高級そうな黒ジャケットを着ている、金髪の男性に目をつける。
ダーゲットを決めれば、あとは接近して落とすのみ。
男を魅了する妖艶な笑みを浮かべ彼の元へ歩き出そうとした、その時だった。
離れたところにいる一人の男性が、リルンの目に入る。
瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。
さらりと艶めく銀の髪に、美しい真紅の瞳。
遠目で見ても分かるほどのとんでもない美丈夫が、そこにはいた。
これまで出会ってきた男性の中で、まず間違いなく一番だ。
彼に比べれば、他の男性など無価値に等しい。
お腹の底から、ウズウズと欲望が湧きあがる。
(あの人……欲しい。決めた、彼にする)
ダーゲット変更。
つい先ほどまでターゲットにしていた金髪の男性のことなど、もうどうでもいい。
今は何としても、銀髪の彼を手に入れたい。
「隣にいるのは婚約者かしら?」
銀髪の男性の横には、金髪の女性がいた。
リルンに比べれば見劣りするが、そこそこに綺麗な顔立ちをしている。
しかし、リルンが退くことはない。
相手がいようが関係ない。奪い取ってしまえばいいのだ。
「ずっとそうしてきたようにね」
フフッと小さな笑い声を上げて、リルンはターゲットに近づいていく。
一歩近づくたびに、男性の顔が鮮明になっていく。
やはり、とんでもない美丈夫だ。
鮮明になるのは男性だけではない。
同時に、隣にいる金髪の女性の顔も明らかになっていく。
そしてリルンは、彼女の正体に気付いた。
(もしかして……お姉様?)
ミレアが化粧している姿を初めて見た。
だから遠目では気づけなかったのもあるが、決してそれだけではない。
エルドール家にいた時とは、明らかに雰囲気が違う。
どんよりうじうじしていたのが、今はとても明るくなっている。
人が変わったようだ。
(いったい何があったのかしら。……もしかしてその原因は、隣にいる男性かしら)
口角がニヤリと上がる。
男性を奪ったらミレアはどんな顔をするのか、それを考えただけで心が躍った。
二人の目の前まで行くと、ミレアが驚いた顔をしていた。
「私、リルン・エルドールと申します。……お久しぶりですね、お姉様」
(こんないい男、お姉様にはもったいない。また奪い取ってあげる!)
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