【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

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第ニ章

day.35

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周さんと別れた後、はあ~っと溜息を吐き、どんよりしたまま家に帰った。
例のマナーについては、明日から4日間、周さんに大学が終わった後、教えてもらうことになった。
本当は冬悟に教えてもらうのが一番早いのだろうけど、この件はアイツに内緒のため、今回は頼ることはできない。
それに、今は頼りたくない。

家に帰った後、冬悟とはそのまま冷戦状態になった。
というより、冬悟は例の件について何か言おうとしたが、俺が拒絶した。
すると、それ以上は何も言っては来なかったが、その後もできる限り普通に接してくれようとしてくれるのを、俺がまだそこまで大人になりきれなくて、どうしても突っぱねてしまう。
だから、必要最低限の会話だけをする状態になってしまった。

大学に行って帰る間際、浩二に昨日のことを愚痴ると、絶句された。

「お前ら、…嘘だろ?一昨日めちゃくちゃラブラブだったじゃねぇか!何でたったの1日でそんなことになるんだよ!?」

「そんなの、俺が聞きてぇよ。」

ムスッとしている俺を見て、浩二はマジかよという風に頭を抱えた。

「確かにさ、諏訪さんの言い方はマズかったとは思うけど、それでここまで勘違いできるお前はある意味すげぇよ。」

「どういうことだよ?」

勘違いなんかしてねぇし、というように睨みつけると、やれやれと呆れたように頭を軽く振られた。

「俺から言うのも野暮だから言わねぇけど、そもそもだぜ?あの諏訪さんが、目的を達成した今、何の愛着も感じてない人間を側に置いておくと思うか?」

「それは…。」

冷静に考えてみると、それはないって断言できる。
アイツは要らないものはすぐに捨てるタイプだ。
だけど。

「ないかも…だけどさ、仮にもし俺に愛着があったとしても、この関係が恥ずかしいかどうかは別問題だろ?」

「純也、マジでそう思ってる?」

浩二に問われて改めて考えてみると、冬悟はきっと恥ずかしいなんて思っていない。
なぜなら、アイツが恥ずかしいそうにしている姿を見たことがない。
そもそも、アイツに羞恥心とかあるのだろうか?
だとしたら、別の理由で、言いたくないのだろう。
だけど、それが何かが、全くわからない。

「まぁ、とりあえず、がんばってマナー講習受けて、初パーティーがんばってこいよ。俺も、そこで諏訪さんの気持ちが多分わかると思うぜ。んで、お前が悪いなって思ったら、ちゃんと謝りなよ。」

「…おう。」

ぽんっと軽く肩を叩いた浩二は、ニッと笑った。
何で俺が悪いって思うことになっているんだ?
そう思いながら浩二を見た際に、時計がちらっと視界の端に入った。
その瞬間、慌ててガタッと椅子から立ち上がる。

「あっ、やべっ!俺もう出るわ!周さんとの約束の時間に遅れちまう!じゃ、浩二またな!」

机に置いていた自分の鞄をバッと掴んで、バタバタと走り去っていった。

「端から見たら大好き同士なのに、何でお互いだけがわからないんだろうなぁ。」

その後ろ姿を見送った浩二は、思わず苦笑いを浮かべた。




マナー講座の初日は、俺の家で行われた。
今、俺は背中や腰を中心に、プルプルしている。

「奥サマ、今とてもいい感じでス!真っ直ぐですヨ!」

真っ直ぐ立つだけなのに、どうしてこんなにしんどいのか。
冬悟も周さんも、姿勢が良い。
よくこの姿勢を保てているよなと心の底から感心する。
元々少し猫背気味な俺には、この姿勢を維持するだけでもかなりツラい。

「次はそのまま歩いてみましょウ!少し顎を引いて、しっかり背筋を伸ばしてくださイ!」

うっ、歩きにくい。
ギクシャクしながら歩くと、周さんからすぐにダメ出しが飛んでくる。

「奥サマ!手と足が一緒に出てしまっておりまス。それと、もう少し優雅に、堂々と歩いてみてくださイ!」

そんな一度に言われても、できねぇよぉ~。
泣きそうになりながら、何回もリテイクさせられる。

「今とってもいい感じですヨ!その感覚を覚えましょウ!」

何度も何度も歩かされ、次は挨拶の仕方や笑顔を作り方など、超基本的であろうことを教わった。
基本の筈なのに、全部やり終えると、全身の筋肉という筋肉がちーんと終わってしまった。
もう一歩たりとも動けない。
ソファでぐったりしている俺を、周さんは気遣って褒めてくれた。

「奥サマ、大丈夫ですカ?よく頑張られましタ!もう、最後なんてばっちりでしたヨ!これで基本は何とかなるでしょウ。」

「あ、ありがとうございます…。」

まさか初日でこんな状態になるなんて、想像もしていなかった。
元々育ちがそんなに良くない俺にとっては、マナーを覚えるだけでも一苦労だ。

この時は、あと3日もやっていけるだろうかと心配になったが、物覚えの悪い俺に、周さんは嫌味の一言もいわず、根気強く付き合ってくれた。

それに、これをがんばって習得できたら、冬悟にちゃんと妻だって認めてもらえるかもしれない。
ちゃんと胸を張って隣に立てるかもしれない。
その想いを原動力に、泣きそうになりながらも、地獄の特訓に耐え続けた。

立食パーティーでの食べ方や、話し方、会話の仕方などを教えてもらい、とうとう決行の日を迎えることとなった―。
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