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第ニ章
day.36
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船上パーティー当日。
潜入するのがバレないように、冬悟が家を出た後に、準備をしてから俺も家を出る。
外はもう薄暗くなっている。
パーティー会場から少し離れたところで、周さんと合流した。
「周さん!お待たせしてしまってごめんなさい!」
「えっと、奥サマ…?でお間違いないでしょうカ?」
訝しげに俺を見つめる周さんに、そうだったと思いながら、コクコクと頷いた。
実は、このままでは潜入するのはいいが、すぐに冬悟にバレてしまうということで、変装することになったのだ。
浩二に協力してもらい、普段とは違う髪型になるよう、茶髪でストレートのウィッグを買って付け、カラコンで目の印象を変え、メイクの仕方を教えてもらい、全くの別人になった。
そして、周さんが準備してくれたタキシードを着て、シークレットシューズで身長も少し底上げしているため、変わっていないのは声だけだ。
正直、俺もこの姿を鏡で見た時に、一瞬誰かわからなくなってしまい、違和感がハンパなかった。
「奥サマ…大変素晴らしい変装でございまス~!これだと、流石の社長もきっと誰だかわからないハズですヨ!」
パチパチと拍手してもらいながらベタ褒めされ、照れ臭くて思わずへへっと笑う。
「ありがとう。どうかな?カッコいい?」
「ハイ、大変可愛らしいでス!ですが念の為、社長との接触は避けてくださいネ?あの方は時々とても鋭いですのデ。」
…思っていた反応とはちょっと違ったけど、まぁいいや。
この姿だと、絶対に冬悟にはバレない自信しかないのだけれど、周さんにはコクッと頷いておく。
「では、設定をご説明いたしますネ。奥サマは今回、秘書見習いの新人として、私の部下として潜入していただきまス。一人称は、“僕”でお願いいたしまス。お名前ですが、ご旧姓からわかりやすく、“滝”ということにいたしましょウ。」
「わかりました。」
なんだかスパイ映画みたいでワクワクしてきた。
そっと周さんがこちらに向けて手を差し出した。
「では、参りましょうカ。」
その手に、自身の手を重ねる。
「よろしくお願いします!」
俺達は舞台となる豪華客船へと向かって歩き出した。
「すげぇ…でっけー!」
見上げてもその全貌を見ることができない程、巨大な白亜の船体の迫力に、初めて豪華客船を見た俺は、興奮を抑えられなかった。
ヤベッとすぐに手で口を押さえる。
隣では周さんがクスクスと笑っている。
「奥サマ、船は初めてですカ?大きいですよネ。中も素晴らしいですヨ。ですが、ここから先は、お静かにお願いしますネ。」
自身の口元に人差し指を立て、シーッとされてしまった。
子ども扱いをされているようで、恥ずかしい。
「…はい。」
ニコッと微笑み、その入口に向かっていく周さんから離れないよう、その後ろについて行く。
チケットと身分証を見せ、とうとうこの船に乗り込むことに成功した。
中に入るための扉が開かれた瞬間、目の前に広がったのは、まるで異世界だった。
高い天井の中央には、宝石のような光をまき散らす巨大なシャンデリアが吊るされている。
何層にも重なったガラスの滴が、照明に照らされて七色の煌めきを放ち、室内全体を華やかに照らしていた。
足元には厚手の絨毯が敷き詰められ、わずかな歩みさえも吸い込まれる。
左右には白いテーブルがずらりと並び、その上には銀のトレイに盛られた前菜や、繊細なグラスに注がれたシャンパンが、まるで美術品のように整列している。
場内にはドレスやタキシードに身を包んだ紳士淑女が集い、グラスを片手に笑みを交わしていた。
低く流れる弦楽器の音色が、ざわめきを上品に包み込んでいる。
…場違い感が半端じゃない。
こんな世界見たことない。
目眩がしそうな程の煌びやかな空間に、突然、緊張感に襲われ、足が竦む。
そんな中で、周さんは優雅に、こんにちはムッシュー、ごきげんようマダムと軽く挨拶を交わしていく。
俺も離れないよう必死に後に続き、挨拶をするが、貼り付けた笑顔が引き攣っているような気がする。
そして、教えてもらったマナーも既に崩壊している気がする。
歩きながら辺りを見回していると、探していた冬悟の姿を見つけた。
だけど、この目に映ったアイツは、普段とはまるで別人のようで、とても優雅に笑顔を携え、気品に満ち溢れている。
俺の知っている冬悟じゃない。
何故だか全然知らない人のように思えてしまい、急に孤独感に苛まれた。
その時、周さんがコソッと耳打ちしてきた。
「社長に挨拶をして参りますので、一瞬だけ離れまス。すぐ戻りますのデ。」
「えっ?」
ちょっ、待ってくれ!こんなところで1人にしないでくれ!!
心の中で必死に引き止めるも、願いは届かず、周さんは行ってしまった。
ヤバい!!
どうしよう!?
パニックになっていると、突然知らない人から声を掛けられた。
「こんにちは、ムッシュー。」
1人で対応とか絶対に無理!!
潜入するのがバレないように、冬悟が家を出た後に、準備をしてから俺も家を出る。
外はもう薄暗くなっている。
パーティー会場から少し離れたところで、周さんと合流した。
「周さん!お待たせしてしまってごめんなさい!」
「えっと、奥サマ…?でお間違いないでしょうカ?」
訝しげに俺を見つめる周さんに、そうだったと思いながら、コクコクと頷いた。
実は、このままでは潜入するのはいいが、すぐに冬悟にバレてしまうということで、変装することになったのだ。
浩二に協力してもらい、普段とは違う髪型になるよう、茶髪でストレートのウィッグを買って付け、カラコンで目の印象を変え、メイクの仕方を教えてもらい、全くの別人になった。
そして、周さんが準備してくれたタキシードを着て、シークレットシューズで身長も少し底上げしているため、変わっていないのは声だけだ。
正直、俺もこの姿を鏡で見た時に、一瞬誰かわからなくなってしまい、違和感がハンパなかった。
「奥サマ…大変素晴らしい変装でございまス~!これだと、流石の社長もきっと誰だかわからないハズですヨ!」
パチパチと拍手してもらいながらベタ褒めされ、照れ臭くて思わずへへっと笑う。
「ありがとう。どうかな?カッコいい?」
「ハイ、大変可愛らしいでス!ですが念の為、社長との接触は避けてくださいネ?あの方は時々とても鋭いですのデ。」
…思っていた反応とはちょっと違ったけど、まぁいいや。
この姿だと、絶対に冬悟にはバレない自信しかないのだけれど、周さんにはコクッと頷いておく。
「では、設定をご説明いたしますネ。奥サマは今回、秘書見習いの新人として、私の部下として潜入していただきまス。一人称は、“僕”でお願いいたしまス。お名前ですが、ご旧姓からわかりやすく、“滝”ということにいたしましょウ。」
「わかりました。」
なんだかスパイ映画みたいでワクワクしてきた。
そっと周さんがこちらに向けて手を差し出した。
「では、参りましょうカ。」
その手に、自身の手を重ねる。
「よろしくお願いします!」
俺達は舞台となる豪華客船へと向かって歩き出した。
「すげぇ…でっけー!」
見上げてもその全貌を見ることができない程、巨大な白亜の船体の迫力に、初めて豪華客船を見た俺は、興奮を抑えられなかった。
ヤベッとすぐに手で口を押さえる。
隣では周さんがクスクスと笑っている。
「奥サマ、船は初めてですカ?大きいですよネ。中も素晴らしいですヨ。ですが、ここから先は、お静かにお願いしますネ。」
自身の口元に人差し指を立て、シーッとされてしまった。
子ども扱いをされているようで、恥ずかしい。
「…はい。」
ニコッと微笑み、その入口に向かっていく周さんから離れないよう、その後ろについて行く。
チケットと身分証を見せ、とうとうこの船に乗り込むことに成功した。
中に入るための扉が開かれた瞬間、目の前に広がったのは、まるで異世界だった。
高い天井の中央には、宝石のような光をまき散らす巨大なシャンデリアが吊るされている。
何層にも重なったガラスの滴が、照明に照らされて七色の煌めきを放ち、室内全体を華やかに照らしていた。
足元には厚手の絨毯が敷き詰められ、わずかな歩みさえも吸い込まれる。
左右には白いテーブルがずらりと並び、その上には銀のトレイに盛られた前菜や、繊細なグラスに注がれたシャンパンが、まるで美術品のように整列している。
場内にはドレスやタキシードに身を包んだ紳士淑女が集い、グラスを片手に笑みを交わしていた。
低く流れる弦楽器の音色が、ざわめきを上品に包み込んでいる。
…場違い感が半端じゃない。
こんな世界見たことない。
目眩がしそうな程の煌びやかな空間に、突然、緊張感に襲われ、足が竦む。
そんな中で、周さんは優雅に、こんにちはムッシュー、ごきげんようマダムと軽く挨拶を交わしていく。
俺も離れないよう必死に後に続き、挨拶をするが、貼り付けた笑顔が引き攣っているような気がする。
そして、教えてもらったマナーも既に崩壊している気がする。
歩きながら辺りを見回していると、探していた冬悟の姿を見つけた。
だけど、この目に映ったアイツは、普段とはまるで別人のようで、とても優雅に笑顔を携え、気品に満ち溢れている。
俺の知っている冬悟じゃない。
何故だか全然知らない人のように思えてしまい、急に孤独感に苛まれた。
その時、周さんがコソッと耳打ちしてきた。
「社長に挨拶をして参りますので、一瞬だけ離れまス。すぐ戻りますのデ。」
「えっ?」
ちょっ、待ってくれ!こんなところで1人にしないでくれ!!
心の中で必死に引き止めるも、願いは届かず、周さんは行ってしまった。
ヤバい!!
どうしよう!?
パニックになっていると、突然知らない人から声を掛けられた。
「こんにちは、ムッシュー。」
1人で対応とか絶対に無理!!
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