虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

文字の大きさ
18 / 69
異世界フィオール

18話 異世界ごはん

しおりを挟む
「──ドラゴンのステーキ!!!?」

 宿屋1階の食堂にて、外の道路まで聞こえてしまうほどの叫び声を出したのはメーシャだった。

「ドラゴン自体を狩るのは難しく家畜化もできないので、ドラゴンの細胞を使った培養肉ですけどね。喜んでいただけて良かったです」

 メーシャたちはラードロがいるという洞窟にいく前に、宿屋で朝食をとることになったのだが、さすが異世界と言うべきか。

 メニューにはメーシャが言ったように"ドラゴンのステーキ"や"プルマルのミントゼリー"などのモンスター由来の材料が使われている料理や、"トビオオツノシカのツノ焼き"や"爆弾イチゴと竜巻きキャベツのサラダ"みたいな聞いたことがない動物や野菜を使っているもの。

 そして"泣かないオレンジマンドラゴラのグラッセ"、"黒トゲトゲのビネガーライス"、"曲りツノ牛のチーズ"などの、名前が違うものの地球でも見かける食材を使った料理も存在したのはちょっとした安心感のようなものがあった。ちなみに、それぞれ人参のグラッセ、ウニの海鮮丼、水牛のモッツァレラチーズだ。


『ドラゴン=ラードロを倒そうって時にドラゴンステーキを選ぶとはな! メーシャの故郷でいうところの験担げんかつぎってやつだな? ドラゴン=ラードロを喰ってやるつもりで豪快にいこうぜ!』

 ●     ●     ●

「はい、おまたせ! ごゆっくりどうぞ」

 店員のマッチョなおじさんが料理を運んでくれた。これで注文した料理は全部揃ったはずだ。

「ぅうおおおおおお!! ステーキきたー!!」

 メーシャはもちろんドラゴンステーキ。直径20cm厚さ15cmのボリューミーなミディアムレアのステーキだ。肉汁と果実酒でできたソースがかかっている。

「ちうっちゅいぃ~!」

 ヒデヨシはマシンガンヒマワリの種のペースト。この種は"ゲッシ"(齧歯げっし類型モンスター)の大好物なんだとメニューに書いていた。

「私はバルーンパーチという魚のアクアパッツァです」

 この魚は脂の乗ったフグのような弾力のある白身だが、毒がない代わりに少しタンパクな味である。なので、スパイスや旨味のある野菜と一緒に煮込むことで、手軽に極上のフグ肉と同等の美味しい料理にすることができる。

『くぅ~! 美味そうにもほどがある! 俺様に身体があれば! 半年…………いや、冬眠の前だから最後にメシを食ったのは1000年くらいまえか? 腹は減らねーがこういう時ちょっと残念だな……』

 デウスはご飯が食べられなくてしょんぼり。

「………………そっか。ま、身体ないんじゃしゃーない。宝珠を取り戻したら食べな」

 メーシャは淡々と言いながらも、ステーキを半分切り分けてソースごとアイテムボックスに送った。アイテムボックスに送ればホカホカで美味しい状態を保存できるので、デウスが宝珠を取り返して身体が戻った後に食べることができる。

『め、メーシャ~……。ありがとぅ~。あとこっちの世界に来た時理由も言わずに居なくなってごべんね~……』

 メーシャの行動に感極まったデウスは涙を(身体はないが精神的に)流しながら、感謝と謝罪の言葉を口にした。

「いいよー」

「ちうっちゅぁー!!?」

 そうこうしている間にヒデヨシがひまわりの種のペーストを口にして感動していた。

「ちゅるっちいちうちぃつーちゅいっちいち!」

 ……このヒマワリの種のペーストはただ砕いてペースト状にしているのではなく、丁寧に皮をむいて中の身を取り出し、バター状になるまで練り込んだ後きび砂糖と少しミルクを加えたシンプルながら極上の逸品である。

 ちなみに、このマシンガンヒマワリの種は、花の段階ではほとんどただのヒマワリなのだが、この品種は普通のものの数倍の大きさの肉厚な種をつける。そして成熟するとその名の通りマシンガンのごとく種を前方に発射。
 一応発射前にミシミシという音はするが、万が一当たれば生命の危機が危ないレベルで危険なので、近くで音が聞こえたら一般人も熟練の冒険者も匍匐前進ほふくぜんしんする。

「お、ヒデヨシ様のお口に合ったみたいですね!」

 カーミラはアクアパッツァを慣れた手つきで食べている。

「じゃあ、あーしも食べちゃおっかな! …………いっただっきまーす!」

 メーシャはひと口サイズに切って口に運んだ。

「ん~~~……!!!!」

 まず切った時に薄々感じていたが、弾力がすごいのに。細胞自体がしっかりした組織でできているので、少し切ったところで肉汁がこぼれずキープしてくれる。
 だが、噛んでいくと繊細ながらシャープな旨みが決壊したダムのようにあふれ出てくるのだ。
 ドラゴン肉はシンプルに美味すぎる。
 その美味さは数多のヒトを動かし、入手困難なドラゴン肉を1から培養肉の量産するまでになったほどだ。

「──消えちゃった……」

 メーシャは旨みに溺れたかと思ったら、いつの間にか食べ終わっていた事実を突きつけられて虚しさを感じてしまう。

「そう言えばデウス様は龍神であられるはずですが、恐れながら……ドラゴンを食べることに抵抗などはないのでしょうか?」

 カーミラが恐る恐るデウスに尋ねた。

『ヒトだって他の陸上生物を食べるだろ? 龍とドラゴンは別モンだ。それに培養肉だしな。心配してくれてありがとよ』

「いえ、すみません。こんな質問に答えて頂いてありがとうございます」

『へへっ。ここまで丁寧に接されるのも良いもんだな。……でも、もっと砕けた感じで良いぜ。これから旅の仲間になるんだしな』

 恐縮しまくっているカーミラにデウスは優しく言った。
 こんな感じなので忘れそうになるがこれでもデウスは龍神。自分をしたう者には慈悲深く、フレンドリーに接しても子どもを見守る親のような感覚になるのだ。つまり、むしろ嬉しい。

「そーだよカーミラちゃん。あーしのことも勇者様じゃなくて名前でいいよ」

「ちゆっちちうちう」

 メーシャに続きヒマワリの種ペーストに舌鼓をうっていたヒデヨシも仲良くしたいようだ。

「分かりました……! すぐには難しいですが、私も……その、実は友達が欲しかったので……徐々に自由にしますね! えっと……メーシャちゃん、ヒデヨシくん。それと……デウスさん」

 カーミラははみかみながらメーシャとヒデヨシを見たあと、どこにいるか分からないデウスに向かって伝えた。

「えへっ。新しい友達はいつでも嬉しいね」

 そうしてメーシャたちは新たな仲間兼友達と絆を深めつつ、最高の異世界ご飯デビューを果たしたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...