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異世界フィオール
19話 トレントの森でお喋り
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【泉の洞窟】今回メーシャたちが向かう場所で、ラードロの目撃情報がある場所である。
洞窟にある泉の水はそのまま飲めるほど綺麗で美味しいので、知る人ぞ知る隠れた名所のようになっている。
その洞窟があるのは、アレッサンドリーテの街から少し離れた位置に存在する【トレントの森】の中である。
その森は木々が鬱蒼と生い茂り道という道も存在しないためまっすぐ通りぬけることすら困難。それに加え、"トレント"という普通の木に擬態してエモノを捕食するモンスターが数多く棲息しており、腕に覚えがない一般人はもちろん、初心者冒険者の少人数パーティもこの森に入らないよう国から警告が出ている。
ただ、ある程度実力のあ冒険者や騎士クラスであればひとりで対処できる強さのモンスターなので、中級者への登竜門や世界のとある部族の成人の儀式に使われたりするとか。もちろん、トレント1体である場合の話なので、複数対確認した時は基本的に退避するのが推奨されている。
「──ぅわ~! めちゃ良い香りがする!」
メーシャは森に入るや否や何度も深呼吸して、薬草やハーブ、木々や花などの香りが入り混じった空気を堪能する。
『この森を出入りするヒトはほとんどいねーから、森っつーか自然本来の香りがするんだろうな! ヒトがたくさんいるのも好きだが、こういう自然も捨てがたい。くぅ~、フィオールさいこー!』
「ちちゅぁちちうちちうちゅっちゅちちゅあちいちい」
ヒデヨシは今朝持たせてもらった小さな斜めがけバッグから小さな包みを取り出す。オヤツだ。
「少し早いんじゃないです…………少し早いんじゃ……ない?」
カーミラが敬語で話しかけるが、恥ずかしがりながら砕けた口調に変える。一瞬頬が赤くなっていたように見えたが、照れ隠しなのかすぐにフルフェイスの兜をかぶってしまって分からなくなってしまった。
任務的にはメーシャの監視役ではあるのだが、王家が信じるウロボロスの勇者の願いともあればそれに沿わない理由はない。万一勇者でなかったとしても、仲良くしておくことで警戒されずに情報を得られる。
ただ、カーミラ自身はメーシャをウロボロスの勇者と確信していた。カーミラは精霊と契約する種族、エルフの血を引いており、オーラの性質や動きを産まれながらに見極めることができるのだ。なので、メーシャがまとうオーラがドラゴン=ラードロやその手下などのような邪悪な者ではないと察知できたし、嘘をついていないということは分かっていた。
それに何より、カーミラの(他のウロボロス信者にも)夢枕にデウスは立っていたので、尚更信じるに値すると確信があったのだ。
「少し歩いたし、オヤツくらいならイイじゃん! ほら、カーミラちゃんもおにぎりをどうぞ!」
メーシャが魔法陣から取り出したおにぎり屋さんのおにぎりをカーミラに渡す。
「ありがとうご……ありがとう。……いただきますね。……ん???」
カーミラは貰ったおにぎりをぱくり。しかし、中に入っていたのは見たこともない細長い物体で混乱してしまう。いや、正確には見たこと自体はあるが、食材として提供されたことがなかったのでそもそも食べ物という状態では初めましてなのだ。
「あ、食べたことないカンジか。それはね、タコの煮付けのおにぎりだよ。地元は海が近くにあるから新鮮なタコがとれんの。学校帰りによく行くおにぎり屋さんのやつだけど、けっこー美味しいっしょ?」
メーシャは学校帰りによく買い食いをしちゃうのだが、たこ焼き屋さんの他におにぎり屋さん、クレープ屋さん、たい焼きやさんなどによく行っていた。
「あ……美味しい。独特な弾力だけど柔らかくて、味付けも……これは植物系の醤と砂糖でしょうか? 香ばしくて柔らかい味わいですね」
カーミラはタコを味わいながらおにぎりをいろんな方向から見つめている。気に入ったようだ。
「よかった。…………そんで、ヒデヨシのオヤツはな~に?」
メーシャはしゃがんで足元にいるヒデヨシの顔を覗いた。すると……。
「ちーず!」
「えっ?」
「ちう?」
「……なんだ、気のせいか。ビックリした」
『そうそう、気のせいだって! メーシャ、実は昨日眠れてなかったんじゃねーのか? ヒデヨシがチーズなんて、なあ……? 普通喋るとしたら、『まんま』とか『いや』みたいなのだって』
「そういう問題かなー? まあ、確かにお注射でスーパーにしてもらったけど」
「ゲッシ(齧歯類型モンスター)は基本的にヒトの言葉を話します……話すしヒデヨシくんが喋るのも変じゃない……よ?」
「マジか! じゃあ、異世界に来たわけだし、異世界のルールにのっとるならヒデヨシも……?」
『じゃ、じゃあやっぱりさっきチーズって言ってたのって……?』
「ちーず?」
「『言ってるー!」』
驚いたメーシャとデウスは息ぴったりにハモってしまう。
そして、テンション爆あがりになったふたりヒデヨシをチラチラ見ながら少し相談。
● ● ●
「じゃあ、ヒデヨシにちょっと……」
『質問しちゃおっかなー?』
「ちう?」
「……あーしからねっ! えっとぉ~、国とか大陸とか海とかの形や情報が書いてるやつってなに~?」
「ちず?」
「正解っ! ふわっふわな例えだったかもだけど、分かったのえらい!」
どうやら、ヒデヨシにいろんな言葉を喋ってもらいたいようだ。
『次は俺様だな? ……こほん! 外の反対? はなんだ?』
「うち?」
『正解!』
「えぇ~? それって『ず』が入ってないじゃん!」
『そ、そうか?』
「うん、デウスもっかいね!」
『え~っと、じゃあ……。流れがあってぐるぐるしてるのって……? い、いけるかな?』
デウスは説明しようとするが、うまく例えられずに自信なさげ。
「……うず?」
「『正解だー!」』
まさかの難問をヒデヨシ一発クリア。メーシャとデウスは大喜び。
「あ、あの! 私も良い……かな?」
カーミラもこの流れに乗っかりたいようだ。
「いいよ~」
「で、では! 他のヒトに何か知らせたいときに出す行動は? ……これは難問なはず。答えられるかな、ヒデヨシくん」
カーミラが出した問題は今まで発音できた音ではあるが、普段使いのものではない。不慣れな音の羅列にヒデヨシは勝てるのだろうか?
「…………」
ヒデヨシは少し考えるそぶりを見せるが、少し間を置いて顔を上げた。
「……あいず?」
ヒデヨシの言葉の中に『ちゅあ』だとか『ちい』に含まれる母音部分と、今回発音できた『ず』を組み合わせたものが正解だった。
「うちの子天才じゃん」
『言葉の魔術師かよ』
「大賢者チャピランティヌスにも引けを取らない賢さです」
「ちゅあっちぃ! うずうず!」
三者三様の褒め言葉に嬉しくなり、ヒデヨシは飛び上がりながら小踊りしてしまう。
カーミラの言うチャピランティヌスというのは、この世界に伝わる英雄の名前だとか。
「あ~楽しかった! じゃあそろ進もっか。ふぁ~……それにしても木漏れ日が気持ちいいね~」
ひとしきり楽しんだ後、ようやく重い腰を上げた一行は洞窟に進むことにした。
『そうだな~』
「あ、メーシャちゃん……そこの根っこ気をつけて!」
あくびをしながら進むメーシャの足元に地面から木の根っこが大きく飛び出ている。
「え? ……ぉわっとぉ~っ!?」
カーミラが教えるもひと足遅く、メーシャはものの見事に足を取られて転んでしまった。
「あぁ~苦い……」
口の中が地面に生えていた薬草の味だ。ただ、幸い怪我はないようだ。
「ちゅあ?」
「あんがと、大丈夫だし。ごめんね、気を取り直して……」
メーシャはいい感じの位置にある支えに違和感を覚える。
『おい、メーシャそれって!』
「──トレントです!!」
「しかもいっぱいいるんだけど~!?」
長い間同じところで騒いでいたからだろうか、メーシャたちの周りに樹木のウロが顔になったモンスターが10体以上集まってきていた。
「ちちゅちいずいちゅ!!」
「異世界初バトル、いっちょやるか~!」
洞窟にある泉の水はそのまま飲めるほど綺麗で美味しいので、知る人ぞ知る隠れた名所のようになっている。
その洞窟があるのは、アレッサンドリーテの街から少し離れた位置に存在する【トレントの森】の中である。
その森は木々が鬱蒼と生い茂り道という道も存在しないためまっすぐ通りぬけることすら困難。それに加え、"トレント"という普通の木に擬態してエモノを捕食するモンスターが数多く棲息しており、腕に覚えがない一般人はもちろん、初心者冒険者の少人数パーティもこの森に入らないよう国から警告が出ている。
ただ、ある程度実力のあ冒険者や騎士クラスであればひとりで対処できる強さのモンスターなので、中級者への登竜門や世界のとある部族の成人の儀式に使われたりするとか。もちろん、トレント1体である場合の話なので、複数対確認した時は基本的に退避するのが推奨されている。
「──ぅわ~! めちゃ良い香りがする!」
メーシャは森に入るや否や何度も深呼吸して、薬草やハーブ、木々や花などの香りが入り混じった空気を堪能する。
『この森を出入りするヒトはほとんどいねーから、森っつーか自然本来の香りがするんだろうな! ヒトがたくさんいるのも好きだが、こういう自然も捨てがたい。くぅ~、フィオールさいこー!』
「ちちゅぁちちうちちうちゅっちゅちちゅあちいちい」
ヒデヨシは今朝持たせてもらった小さな斜めがけバッグから小さな包みを取り出す。オヤツだ。
「少し早いんじゃないです…………少し早いんじゃ……ない?」
カーミラが敬語で話しかけるが、恥ずかしがりながら砕けた口調に変える。一瞬頬が赤くなっていたように見えたが、照れ隠しなのかすぐにフルフェイスの兜をかぶってしまって分からなくなってしまった。
任務的にはメーシャの監視役ではあるのだが、王家が信じるウロボロスの勇者の願いともあればそれに沿わない理由はない。万一勇者でなかったとしても、仲良くしておくことで警戒されずに情報を得られる。
ただ、カーミラ自身はメーシャをウロボロスの勇者と確信していた。カーミラは精霊と契約する種族、エルフの血を引いており、オーラの性質や動きを産まれながらに見極めることができるのだ。なので、メーシャがまとうオーラがドラゴン=ラードロやその手下などのような邪悪な者ではないと察知できたし、嘘をついていないということは分かっていた。
それに何より、カーミラの(他のウロボロス信者にも)夢枕にデウスは立っていたので、尚更信じるに値すると確信があったのだ。
「少し歩いたし、オヤツくらいならイイじゃん! ほら、カーミラちゃんもおにぎりをどうぞ!」
メーシャが魔法陣から取り出したおにぎり屋さんのおにぎりをカーミラに渡す。
「ありがとうご……ありがとう。……いただきますね。……ん???」
カーミラは貰ったおにぎりをぱくり。しかし、中に入っていたのは見たこともない細長い物体で混乱してしまう。いや、正確には見たこと自体はあるが、食材として提供されたことがなかったのでそもそも食べ物という状態では初めましてなのだ。
「あ、食べたことないカンジか。それはね、タコの煮付けのおにぎりだよ。地元は海が近くにあるから新鮮なタコがとれんの。学校帰りによく行くおにぎり屋さんのやつだけど、けっこー美味しいっしょ?」
メーシャは学校帰りによく買い食いをしちゃうのだが、たこ焼き屋さんの他におにぎり屋さん、クレープ屋さん、たい焼きやさんなどによく行っていた。
「あ……美味しい。独特な弾力だけど柔らかくて、味付けも……これは植物系の醤と砂糖でしょうか? 香ばしくて柔らかい味わいですね」
カーミラはタコを味わいながらおにぎりをいろんな方向から見つめている。気に入ったようだ。
「よかった。…………そんで、ヒデヨシのオヤツはな~に?」
メーシャはしゃがんで足元にいるヒデヨシの顔を覗いた。すると……。
「ちーず!」
「えっ?」
「ちう?」
「……なんだ、気のせいか。ビックリした」
『そうそう、気のせいだって! メーシャ、実は昨日眠れてなかったんじゃねーのか? ヒデヨシがチーズなんて、なあ……? 普通喋るとしたら、『まんま』とか『いや』みたいなのだって』
「そういう問題かなー? まあ、確かにお注射でスーパーにしてもらったけど」
「ゲッシ(齧歯類型モンスター)は基本的にヒトの言葉を話します……話すしヒデヨシくんが喋るのも変じゃない……よ?」
「マジか! じゃあ、異世界に来たわけだし、異世界のルールにのっとるならヒデヨシも……?」
『じゃ、じゃあやっぱりさっきチーズって言ってたのって……?』
「ちーず?」
「『言ってるー!」』
驚いたメーシャとデウスは息ぴったりにハモってしまう。
そして、テンション爆あがりになったふたりヒデヨシをチラチラ見ながら少し相談。
● ● ●
「じゃあ、ヒデヨシにちょっと……」
『質問しちゃおっかなー?』
「ちう?」
「……あーしからねっ! えっとぉ~、国とか大陸とか海とかの形や情報が書いてるやつってなに~?」
「ちず?」
「正解っ! ふわっふわな例えだったかもだけど、分かったのえらい!」
どうやら、ヒデヨシにいろんな言葉を喋ってもらいたいようだ。
『次は俺様だな? ……こほん! 外の反対? はなんだ?』
「うち?」
『正解!』
「えぇ~? それって『ず』が入ってないじゃん!」
『そ、そうか?』
「うん、デウスもっかいね!」
『え~っと、じゃあ……。流れがあってぐるぐるしてるのって……? い、いけるかな?』
デウスは説明しようとするが、うまく例えられずに自信なさげ。
「……うず?」
「『正解だー!」』
まさかの難問をヒデヨシ一発クリア。メーシャとデウスは大喜び。
「あ、あの! 私も良い……かな?」
カーミラもこの流れに乗っかりたいようだ。
「いいよ~」
「で、では! 他のヒトに何か知らせたいときに出す行動は? ……これは難問なはず。答えられるかな、ヒデヨシくん」
カーミラが出した問題は今まで発音できた音ではあるが、普段使いのものではない。不慣れな音の羅列にヒデヨシは勝てるのだろうか?
「…………」
ヒデヨシは少し考えるそぶりを見せるが、少し間を置いて顔を上げた。
「……あいず?」
ヒデヨシの言葉の中に『ちゅあ』だとか『ちい』に含まれる母音部分と、今回発音できた『ず』を組み合わせたものが正解だった。
「うちの子天才じゃん」
『言葉の魔術師かよ』
「大賢者チャピランティヌスにも引けを取らない賢さです」
「ちゅあっちぃ! うずうず!」
三者三様の褒め言葉に嬉しくなり、ヒデヨシは飛び上がりながら小踊りしてしまう。
カーミラの言うチャピランティヌスというのは、この世界に伝わる英雄の名前だとか。
「あ~楽しかった! じゃあそろ進もっか。ふぁ~……それにしても木漏れ日が気持ちいいね~」
ひとしきり楽しんだ後、ようやく重い腰を上げた一行は洞窟に進むことにした。
『そうだな~』
「あ、メーシャちゃん……そこの根っこ気をつけて!」
あくびをしながら進むメーシャの足元に地面から木の根っこが大きく飛び出ている。
「え? ……ぉわっとぉ~っ!?」
カーミラが教えるもひと足遅く、メーシャはものの見事に足を取られて転んでしまった。
「あぁ~苦い……」
口の中が地面に生えていた薬草の味だ。ただ、幸い怪我はないようだ。
「ちゅあ?」
「あんがと、大丈夫だし。ごめんね、気を取り直して……」
メーシャはいい感じの位置にある支えに違和感を覚える。
『おい、メーシャそれって!』
「──トレントです!!」
「しかもいっぱいいるんだけど~!?」
長い間同じところで騒いでいたからだろうか、メーシャたちの周りに樹木のウロが顔になったモンスターが10体以上集まってきていた。
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