虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

文字の大きさ
31 / 69
職業 《 勇者 》

31話 虹色のオーラを目指して

しおりを挟む
「──まずヒデヨシさん。身体能力ですが、打たれ強くは無く力も種族がら高く無いものの、俊敏で小さいので攻撃を回避しやすく、テクニックや的確に急所を狙って短所をうまくカバーしていました。
 次にスキル面ですが……普通のモンスターに対しての初期スコアは高くありませんでした。炎を吐いたり爪や歯を使っていて倒せはしますが、冒険者の上位30%程度の才能といった所でしょうか。
 ……ただ、ラードロと相対した時にスコアが跳ね上がりまして、格上でも一瞬の隙さえ突くことができれば圧倒できていましたね。それに、その後もう一度普通のモンスターと戦った時に新しいスキルを巧みに使いこなしスコアが一足飛びに伸びていたのも印象的です。
 職業としましては、アサシン、シーフあたりの素早さの要求されるものか、唯一無二の特殊な近接型スキルを使う"トリッカー"というもので登録するのがオススメです」

 ヒデヨシのデータを受付のお姉さんが説明してくれた。
 ちなみにこの職業は、就いたからといって覚えられるスキルが変わるというものではない。

 冒険者のデータベースに登録しておいて、助っ人が必要な時や複数ギルドで協力するときに参照するためのものだ。ただ、登録した職業に対応した訓練を受けることができるので、すぐには決められなかい初心者や、気になった職業があったり、パーティのバランスを考えるために一度職業を変えるなんてこともよくある話だ。


「トリッカーですか?」

 ヒデヨシが首を傾げる。

「はい、トリッカーは先ほども言ったように近接型の希少性が高かったり唯一無二のスキルを持った方が、他の職業の型にハマらない、スキルを活かした戦い方をする場合に名乗ることが多いですね。
 例えば、敵を麻痺させたり毒にしたりする状態異常スキルを活かしたサポートや、特殊な人形を使って戦ったり、手品のようにトランプやコインなどを使って意識外から攻撃したり。
 モンスター種の方が多いんですが……よくあるパターンだと炎や氷などのブレスを吐いてみたり、牙や爪を使った戦いをしたり、珍しいパターンだと身体から溶岩を噴出させたり、姿をドラゴンやゴーレムなどにその都度変化させて戦ったり、翼がある方は貫通力の高い羽を飛ばすなんて方もいますね。訓練される場合はもちろん、ベテランの教官がスキルに応じた戦い方をアドバイスしてくれますよ」

「……アサシンがかっこいいなと思ったんですが、僕のスキルも客観的な視点で知りたいですし……トリッカーにしましょうか」

 ヒデヨシは悩みながらもトリッカーを選択した。

「星1の冒険者の職業は一応"仮登録"になってますので、変えたくなったらこちらに仰って下さい。手続き無しで変更できますからね」

 お姉さんがそう言いながら、パソコンを操作してヒデヨシの職業欄に『トリッカー』と入力する。

「──はい。それでお次はメーシャさんですね」

「きたきたっ」

 今度はメーシャの番だ。

「素の身体能力もさることながら、魔力の総量もすさまじく、こと攻撃系のスキルや魔法に至っては上位0.5%の才能がありました。特殊スキルを駆使してどんな状況でも臨機応変に対応できていて、まさにダイヤの原石です」

 メーシャの才能に対しベタ褒めだったが、それを1番喜んだのはメーシャでは無かった。

『くぅ~!! っぱ、そうだよな? 初めて見た時から他とはひと味違うと感じたんだよな! へへっ、俺様の審美眼もさることながら運命力の振り幅もすさまじいってな!』

「振り幅がすさまじいって、マイナスもすごそうだけどイイのかっ」

『ことツッコミの切れ味に至っては上位0.5%の才能ってか?』

 今のデウスなら何を言ってもウキウキで喜びそうだ。

「……ただ」

「『ただ?」』

 しかし、そこに不穏な香りのする言葉が付け足される。

「才能に甘んじて無理やり突撃するシーンが散見されました。それに、魔法も特殊スキルも使う時に勢い任せなので、必要量の数倍以上魔力を消費しており、長期戦や強敵と戦う場合倒しきれないとジリ貧で追い詰められていました。
 同じ格上の敵と戦った時、メーシャさんは毎回途中でバテてしまってスコアが振るわないのに、不慣れな状態のヒデヨシさんの方が大幅にスコアが高いなんてこともありました。慣れれば尚更です。
 ……まさに原石。原石のまま放置されている状態ですね。個人的にとてももったいないです。差し出がましいかもしれませんが、メーシャさんはこれからしっかり戦い方を学んでください」

『……つまりメーシャの戦い方は大ざっぱで、後先考えてないってこったな』

「……デウスはせめて『全力で今を大事にしてる』みたいな言い方してよ。こんなの、言葉の切れ味上位0.5%だよ」

 先ほどまでの大はしゃぎはどこへやら、メーシャとデウスはお通夜なみにテンションが急降下してしまった。

「……あ、審査で他に良かった点とか向いている職業とかってなんですかっ?」

 見かねたヒデヨシが慌てて話を進める。

「良かった点ですね。……まずやっぱり欠かせないのが特殊スキルでしょうか。これは前例のない唯一無二の性能で、敵の出した魔法や武器を奪い取って無力化できるのはもちろん、仲間のスキルをタイミングをズラして使って相手を翻弄ほんろうしたり、手に入れたものを組み合わせてみたりと、手が読めない上に汎用性が高い素晴らしいスキルです」

『……だろうな』

 デウスはもし実体があったらきっとこれ以上ないくらいドヤ顔をしているだろう。湧き上がる嬉しさがまったく隠しきれていない。

「あと魔法の適性も軒並み高く、現状風魔法しか使えないようですが、他にも炎、水、地、雷、闇、光全ての魔法も学べば習得できそうですね。ただ、全てを最高まで成長させるとなると時間がかかりますので、2~3種類を極めて他の属性に手を出すのもありです。
 それと、やはり身体能力の高さなんですが、ただの回し蹴りが音速を超えて衝撃波を放ち敵を一網打尽にしていました。
 小さな衝撃波を出すだけならさほど難しくはありませんが、ダメージを与えるだけでなく複数の敵を薙ぎ払う威力にするのは高ランク帯の前衛職冒険者でも難しいと言われています」

 メーシャはやはり勇者に選ばれただけあって才能が突出しているらしい。

「……あーしがすごいのは分かったけど、冷静に聞いてるとあーし並かそれ以上にすごい人もいるんだね。世界って広いな」

 上位0.5%ということなら、冒険者が1000人いたらメーシャの他に4人は同じかそれ以上のそれ以上の強さの者がいるわけだ。

「そうですね。メーシャさんはまだ駆け出しでもありますし、才能を引き出したりそれに見合う経験もない現状では、メーシャさんより強い冒険者の方は少なくないでしょうね。とは言っても、メーシャさんも適切な努力をすれば、特殊スキルと合わせて冒険者のトップに立つのも不可能ではないと思いますが」

「そか。がんばんないとだね」

「それで、メーシャさんの職業のおすすめですが……」

 お姉さんはそこでニヤリと笑って焦らす。その表情はどこか、子どもにサプライズプレゼントをする前の親のようだ。

「なになに?」

 その表情に釣られてメーシャも笑顔になってしまう。

「ずばり……""はいかがでしょうっ」

 これが言えたのがよほど嬉しいのか、お姉さんの言葉尻も弾んでしまう。

「勇者……?」

 メーシャはその言葉に驚いてしまう。
 受付のお姉さんはメーシャがウロボロスの勇者だということは知らないはずだったからだ。

「はい。隣国の"コリンドーネ"の貴族サフィーア家の方がひとり勇者と名乗っているそうですが、才能や特異性を考えればメーシャさんだって負けてないはずです。近接も魔法もできて、身体能力も魔力も才能も申し分ありません。特殊スキルもあります。それに……」

 お姉さんはそこまで言うと声をひそめ、結界がしっかりあるのを再度確認して言った。

「不確かな話ですし、騒ぎになるとご迷惑かもしれませんのでここだけの話ですが……審査のデータを見ていたら、メーシャさんが一度だけ虹色のオーラを出したんです。虹色のオーラというのは、昔話とか神話で知ったんですが『ウロボロス様のチカラ』を示しているんだとか。……機械のバグかもしれませんが、メーシャさんは才能もありますし私にはなんとなく本当のような気がするんです」

 メーシャは今まで虹色のオーラは出したことがない。宝珠を手に入れてチカラを解放すれば、もしかするとそのオーラが出せるようになるのだろうか?

「虹色……」

「だから、嫌でなければ勇者を名乗っちゃいましょうよ」

 お姉さんはノリノリでニッコニコだ。

「…………」

 メーシャが少し考えていると。

『メーシャが虹色か。虹色のチカラはなんだが……もし本当にそうなったら面白えな。それこそ邪神を超えられるかもしれねえ』

 デウスと同じ領域。いや、デウスの協力があるのだから、それ以上のチカラを使えるだろう。そうなればデウスだけでなく、たくさんの人を救うことができるはずだ。

「……そっか。じゃ、いい機会だし"自称"を取り払って大々的に『勇者』と名乗っちゃうか!」

 それで何かが変わるわけではない。しかし、メーシャはひとつ勇者としての覚悟が強まったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...