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職業 《 勇者 》
32話 クエスト研修
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アレッサンドリーテはずれの荒野。トレントの森から北上し、隣国コリンドーネとアレッサンドリーテを隔てる『煌めきの岩山』手前にある荒野だ。
近くに砂漠も存在しているため乾燥が強く、街周辺の温暖で緑豊かな雰囲気とはガラッと変わり、植物はサボテンやガジュマルのようなも乾燥に強いものが生え、生息するモンスターは鱗が鉱物でできている"ロックサラマンダー"や額に大きなツノが生えた"ひと角シカ"、ほぼ無害な砂漠ハトなどが住んでいる。
これらは大して脅威にはならないが、砂漠に近づくにつれて強いモンスターが増えてくる。
エモノを石化するトカゲの"バジリスク"、体高が3m以上あり突進で魔法装甲車ですら押し返すというサイの"タンクライノ"、爆発するかのごとく突進してエモノを仕留めるライオン"ジェットレオ"、凶暴凶悪で大きく発達した下顎と牙が印象的な肉食鬼型モンスターの"オーガ"など、星4冒険者がパーティを組まなければまず厳しいモンスターばかりだ。
ちなみに、砂漠はもっとヤバいモンスターがいるので、上記のモンスターもうかつに砂漠に入ればもれなくエサにされるという。
そして、その砂漠のモンスターすらエサにしてしまう砂漠のヌシが、砂漠の中を泳ぐ盲目のドラゴン亜種である"サンドワーム"だ。
サンドワームは砂かきのように進化した小さな翼を使い、音速ギリギリのスピードでエモノに近づき音もなく丸呑みにするとか。
「──ただ、今回のターゲットはサンドワームじゃない。生息地外に現れたオーガだ」
メーシャとヒデヨシは研修のため、ギルドマスターのデイビッドと共に荒野に来ていた。
デイビッドは今回はモンスターと対峙すると言うことで、前回も着ていた重装鎧に加えて、虎の頭からフルフェイスヘルムをかぶり、背中にはメーシャの胴よりも太い巨大なバスターソードをかけていた。
「そのオーガって縄張りを広げたカンジ? 単体? 複数?」
「オーガって武器を使うんですか?」
メーシャとヒデヨシは立て続けに質問する。
「質問があるのは良いことだ。確信があるなら良いが、そうでないのに疑問も湧いてこないのは知識不足が原因。つまり、スタート位置にもまだ立っていないと言うことだからな。それに、どんなに経験を積んでも冒険者の性質上初めから確信が持てると言う場面は少ない。むしろ、小さな疑問を放置して命を落とさないよう、毎回謙虚に慎重に、そして大胆にクエストを進めるんだ。分かったな?」
デイビッドは優しい笑顔でそう言った。そして、荒野の方に顔を向けると続けて。
「……事前に分かっているのは、近くにある集落の家畜が食い荒らされていたことと、その住民がこの近くでオーガを1体見たと言うことだけ。だから、そのオーガが縄張りを広げたかそれとも追い出されたのか、単体での移動なのか群れなのか、武器や戦略を使う知能があるのかも冒険者自身で調べることになる」
「まあ、なんでも最初から全部分かってて敵を倒すだけってのは難しいか」
メーシャがふむふむと頷く。
「そうだ。だが君たちは初心者だ。故に何をどう調べたらいいか分からないだろう。だから、今回は俺がすでに調べてある。そして、どこをどう調べていくかを教えながらオーガの仮住まいを目指していくぞ」
これはあくまで研修であり、全てを新米冒険者に任せるのは荷が重すぎるので、実践するのは一部で基本的には説明や現地の空気感を味わうのが目的だ。
「はーい」
「ワクワクしてきましたね、お嬢様」
ヒデヨシは今回小さなショルダーバッグを背負い、念のために頭には半球状のアイアンヘルムをかぶっている。
「だね。ヒデヨシも油断しちゃダメだよ~?」
メーシャはいつもの制服の上に鉄の胸当てと、鉄の腰鎧、それとヒデヨシがかぶっているアイアンヘルムの大きいサイズだ。ちなみにこれらはシタデルの備品であり、冒険者は星2まで無料でレンタルできる。
「それじゃ出発するぞふたりとも」
デイビッドは手をクイっと動かしてメーシャたちを呼ぶ。
「しゅっぱつしんこー」
「おー」
● ● ●
「──ここ、一見わかりにくいが地面の色が少し濃いだろう? 血の跡だ。近くに……ほらあそこ、動物の骨が落ちているのが見えるな。襲った家畜をここまで持ってきて食べたんだろうな」
デイビッドが草むらの方を指さして言う。
「ほんとだ。でも、依頼者さんの牧場から何キロも離れてるよ? 道具を使って運んだのかな? 手で運べるほどの力持ちなのかな?」
「お嬢様、でも車輪の後とか何か引きずった後は見えませんよ」
「マジか。……あ、よく見ると足跡がいっぱいあるね」
ヒデヨシもメーシャもヒントはもらいつつも自分の頭で考える。
「よく気がついたな。オーガはとても筋力が発達していてな、牛一頭くらいなら肩に抱えて簡単に数km運べるんだ。
足跡を見るときに気をつけるのは行きと帰りの数の差、足跡の深さや乱れ、道の通り方だ。同一個体なら道を歩くのも規則化されてあまり乱れがないんだ。深さや乱れは急いでいたりどれだけ踏みしめたかわかる。数の差がある場合は、片方に進む場合もう片方から挟み撃ちにされないよう気をつける。とかだな」
「では、オーガは複数体いるんですね」
「深くはあるけど、乱れてはないから急いでないのか。周囲に逃げるほどの相手がいないのか、それともいないタイミングで決行したか……」
● ● ●
足跡をたどりながらもう少し進むと、天然にできた洞窟が見えてきた。
「下に少ないながらも水が流れているだろ? 長い年月をかけてできた天然の洞窟だ。これを飲み水にして、家畜をエサにして食いつないでいるようだ」
「なんかにおってきたね」
メーシャが強まるにおいに鼻をつまむ。
「排泄物のにおいだな。だが、それだけじゃない。なにか気付かないか?」
デイビッドの質問にふたりは考えるが、少ししてヒデヨシが閃いた。
「……血のにおいですか?」
「当たりだ。しかし、家畜の骨があったところと比べて乾いた印象を受ける。新鮮な肉や怪我人はいなさそうだな」
「それで何がわかんの?」
メーシャが質問する。
「まだ何も。これは後々生きてくるヒントだ。それで、次によく見てみろ……!」
デイビッドが少し身をかがめ、洞窟の方を指をさした。
「……あ、なんか灰色の2mくらいのツノが生えたやつ出てきたよ」
メーシャとヒデヨシもデイビッドにならって姿勢を低くする。
「棍棒を持ってますし、周りをキョロキョロしています。それに、何か声を発しています」
「……見張りだ。中に仲間がいるんだ。これで複数いることは分かったな。そして最後……よく見とけ」
デイビッドの言う通り様子を見ていると、怪我をしたらしいオーガが出てきた。
「でも、怪我は治りかけてるっぽいね。さっきの血のにおいってこれか。でも、この辺じゃオーガって強いんだよね?」
「強い。一体でもな。だが、怪我をしているし、警戒心も強い。これは調べたら分かるんだがオーガは天敵という天敵はいなくてな、見張りをすること自体が少ないんだ」
「じゃあ、縄張りを広げるっていうのには無理があるね」
「では、元の住処を追い出された複数体の群れが、この辺りに移り住んで、エサがないから家畜を襲ったということですかね?」
ヒデヨシがデイビッドに確認する。
「……ほとんど正解だな。ただ、エサがないわけじゃないんだ。自分たちより強いモンスターに襲われて追い出されたオーガは、再び見つかって襲われないために周囲に誰もいないタイミングを見計らって、静かに家畜をさらいエサにしたってところだな」
「なるほど。……そんな状態で群れが手分けして行動しているとも考えられないし、オーガはみんな洞窟ら辺にいるって考えて良いのかな?」
メーシャたちは答えにたどり着くことができた。
「正解だ。どんなモンスターがオーガを襲ったか気になるところだが、今は後ろの警戒は解かずに洞窟にいるオーガを倒すぞ。良いな?」
「っし! いっちょやりますか」
「いざ突入です!」
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そして、その砂漠のモンスターすらエサにしてしまう砂漠のヌシが、砂漠の中を泳ぐ盲目のドラゴン亜種である"サンドワーム"だ。
サンドワームは砂かきのように進化した小さな翼を使い、音速ギリギリのスピードでエモノに近づき音もなく丸呑みにするとか。
「──ただ、今回のターゲットはサンドワームじゃない。生息地外に現れたオーガだ」
メーシャとヒデヨシは研修のため、ギルドマスターのデイビッドと共に荒野に来ていた。
デイビッドは今回はモンスターと対峙すると言うことで、前回も着ていた重装鎧に加えて、虎の頭からフルフェイスヘルムをかぶり、背中にはメーシャの胴よりも太い巨大なバスターソードをかけていた。
「そのオーガって縄張りを広げたカンジ? 単体? 複数?」
「オーガって武器を使うんですか?」
メーシャとヒデヨシは立て続けに質問する。
「質問があるのは良いことだ。確信があるなら良いが、そうでないのに疑問も湧いてこないのは知識不足が原因。つまり、スタート位置にもまだ立っていないと言うことだからな。それに、どんなに経験を積んでも冒険者の性質上初めから確信が持てると言う場面は少ない。むしろ、小さな疑問を放置して命を落とさないよう、毎回謙虚に慎重に、そして大胆にクエストを進めるんだ。分かったな?」
デイビッドは優しい笑顔でそう言った。そして、荒野の方に顔を向けると続けて。
「……事前に分かっているのは、近くにある集落の家畜が食い荒らされていたことと、その住民がこの近くでオーガを1体見たと言うことだけ。だから、そのオーガが縄張りを広げたかそれとも追い出されたのか、単体での移動なのか群れなのか、武器や戦略を使う知能があるのかも冒険者自身で調べることになる」
「まあ、なんでも最初から全部分かってて敵を倒すだけってのは難しいか」
メーシャがふむふむと頷く。
「そうだ。だが君たちは初心者だ。故に何をどう調べたらいいか分からないだろう。だから、今回は俺がすでに調べてある。そして、どこをどう調べていくかを教えながらオーガの仮住まいを目指していくぞ」
これはあくまで研修であり、全てを新米冒険者に任せるのは荷が重すぎるので、実践するのは一部で基本的には説明や現地の空気感を味わうのが目的だ。
「はーい」
「ワクワクしてきましたね、お嬢様」
ヒデヨシは今回小さなショルダーバッグを背負い、念のために頭には半球状のアイアンヘルムをかぶっている。
「だね。ヒデヨシも油断しちゃダメだよ~?」
メーシャはいつもの制服の上に鉄の胸当てと、鉄の腰鎧、それとヒデヨシがかぶっているアイアンヘルムの大きいサイズだ。ちなみにこれらはシタデルの備品であり、冒険者は星2まで無料でレンタルできる。
「それじゃ出発するぞふたりとも」
デイビッドは手をクイっと動かしてメーシャたちを呼ぶ。
「しゅっぱつしんこー」
「おー」
● ● ●
「──ここ、一見わかりにくいが地面の色が少し濃いだろう? 血の跡だ。近くに……ほらあそこ、動物の骨が落ちているのが見えるな。襲った家畜をここまで持ってきて食べたんだろうな」
デイビッドが草むらの方を指さして言う。
「ほんとだ。でも、依頼者さんの牧場から何キロも離れてるよ? 道具を使って運んだのかな? 手で運べるほどの力持ちなのかな?」
「お嬢様、でも車輪の後とか何か引きずった後は見えませんよ」
「マジか。……あ、よく見ると足跡がいっぱいあるね」
ヒデヨシもメーシャもヒントはもらいつつも自分の頭で考える。
「よく気がついたな。オーガはとても筋力が発達していてな、牛一頭くらいなら肩に抱えて簡単に数km運べるんだ。
足跡を見るときに気をつけるのは行きと帰りの数の差、足跡の深さや乱れ、道の通り方だ。同一個体なら道を歩くのも規則化されてあまり乱れがないんだ。深さや乱れは急いでいたりどれだけ踏みしめたかわかる。数の差がある場合は、片方に進む場合もう片方から挟み撃ちにされないよう気をつける。とかだな」
「では、オーガは複数体いるんですね」
「深くはあるけど、乱れてはないから急いでないのか。周囲に逃げるほどの相手がいないのか、それともいないタイミングで決行したか……」
● ● ●
足跡をたどりながらもう少し進むと、天然にできた洞窟が見えてきた。
「下に少ないながらも水が流れているだろ? 長い年月をかけてできた天然の洞窟だ。これを飲み水にして、家畜をエサにして食いつないでいるようだ」
「なんかにおってきたね」
メーシャが強まるにおいに鼻をつまむ。
「排泄物のにおいだな。だが、それだけじゃない。なにか気付かないか?」
デイビッドの質問にふたりは考えるが、少ししてヒデヨシが閃いた。
「……血のにおいですか?」
「当たりだ。しかし、家畜の骨があったところと比べて乾いた印象を受ける。新鮮な肉や怪我人はいなさそうだな」
「それで何がわかんの?」
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「でも、怪我は治りかけてるっぽいね。さっきの血のにおいってこれか。でも、この辺じゃオーガって強いんだよね?」
「強い。一体でもな。だが、怪我をしているし、警戒心も強い。これは調べたら分かるんだがオーガは天敵という天敵はいなくてな、見張りをすること自体が少ないんだ」
「じゃあ、縄張りを広げるっていうのには無理があるね」
「では、元の住処を追い出された複数体の群れが、この辺りに移り住んで、エサがないから家畜を襲ったということですかね?」
ヒデヨシがデイビッドに確認する。
「……ほとんど正解だな。ただ、エサがないわけじゃないんだ。自分たちより強いモンスターに襲われて追い出されたオーガは、再び見つかって襲われないために周囲に誰もいないタイミングを見計らって、静かに家畜をさらいエサにしたってところだな」
「なるほど。……そんな状態で群れが手分けして行動しているとも考えられないし、オーガはみんな洞窟ら辺にいるって考えて良いのかな?」
メーシャたちは答えにたどり着くことができた。
「正解だ。どんなモンスターがオーガを襲ったか気になるところだが、今は後ろの警戒は解かずに洞窟にいるオーガを倒すぞ。良いな?」
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