平穏なβ人生の終わりの始まりについて(完結)

ビスケット

文字の大きさ
3 / 40

幼稚舎組と中入組

しおりを挟む
鶴水つるみ在学時、京極と俺は先輩後輩といっても特に親しい間柄ではなかった。多少の因縁はあったものの、むしろ同門なだけで他人に限りなく近かった。
なぜなら京極は幼稚舎組だからだ。

俺は中学受験をして入学したわけだが、幼稚舎上がりの連中は俺達のことを中入組と言っていた。
俺達もそんな彼等を幼稚舎組と呼ぶようになるには時間はかからなかった。

鶴水学園では、幼稚舎組と中入組ははっきりと区別されていた。
まず物理的にクラスが分かれている。
それから、幼稚舎組には 学年を超えて在校生同士で特別な友好関係を結ぶ、そんな習慣があるようだった。
中入組には何も知らされないので詳しいことは分からないが、俺はそれをメンター制のようなものだろうと見ていた。

幼稚舎組が中心であるという考えが学園には一貫して流れており、その最たるものは生徒会は幼稚舎組により選出され、中入生には投票権しか与えられないという身も蓋もないものだった。
そんなわけだから、幼稚舎組の生徒たちが俺たちを視界に入れるときは、文化の違う外国人 もしくは一時いっときの間借り人を見るような そんな視線を投げかけてきた。
もしかしたら俺たちは、彼ら幼稚舎組が下々の人々の生態を観察できるように、学園が用意した教材だったのかもしれないと思うのは穿ちすぎだろうか。

だが、学園の豊かな教育資源を支えているのは幼稚舎組の圧倒的な資金力であるのは確かで、そこは俺は割り切ることにしていた。

実際に、学園は教育の質はもちろん、施設が充実していた。
部活動はその充実した施設を利用して行われ、指導者や備品等が不足なく整備されていた。
部活動の参加は任意だったが、中入生のほとんどがどこかに参加し、学園の潤沢な資金力の恩恵を受けたのだった。

俺は馬鹿高い学費の鶴水大学に進むつもりはさらさらなかったので、入学当初から大学は国立を狙っていた。
大学受験が本格化するまでの数年くらいは、ここでしかできない勉強以外の何かをやってみたいと思っていた俺は、かねてから興味があった柔道を選んだ。
そこでは中学から始める奴がほとんどだったので俺のような初心者にも敷居が低かったのと、坊主にしなくてよいのは非常に大事なポイントだった。

一方、幼稚舎組の彼らが部活動に参加することはなかった。多額の資金提供をしてくれている彼らが部活動に参加しないとは、なんともったいないことだと思ったものだが、それはしょせんβの価値観だ。
学園で部活動に投入される経費など、幼稚舎組には痛くもかゆくもないどころか、思いつきもしない位なのだろう。さすがは名門α、豪気なことだと思ったものだった。

こんな風に鶴水学園というところは、αとβとΩの比率に違いはあるものの社会の縮図そのものだった。
そこには物理的だけでなく心理的な線引きが確かにあったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親に虐げられてきたβが、Ωと偽ってαと婚約してしまった話

さるやま
BL
◆瑞希(受け)語り
□アキ(攻め)語り

攻め→→→→←←受け

眞鍋秋人(攻め)
優秀なα。真鍋家の次期当主。本質は狡くて狡猾だが、それを上手く隠して好青年を演じている。瑞希にはアキさんと呼ばれている。

高宮瑞希(受け)
Ωと偽っている平凡なβ。幼少期の経験からか自己肯定感が低く、自分に自信がない。自己犠牲的。

有栖蕾
花の精のように美しいと名高い美少年のΩ。アキさんの元婚約者(と言っても、正式な婚約関係になく、幼少期の口約束程度)であり、アキさんのことをまだ好いている。瑞希のことを秋人の婚約者として紹介され、許せない相手になった。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

処理中です...