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腕の中で2
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言葉のない俺を見据えながら、奴は続ける。
「婚約指輪はヒート前に守に贈っていて、婚約は無事に成っていますし、すぐにでも婚姻届を出せば出産までの時間の開きは十分です。私はそんなのはどうでもいいんですが、あなたは結婚するまでの手順を踏みたいのでしょう?
三週間前、恥ずかしそうに、駅の書店で結婚雑誌を買ってましたもんね。
お相手の女性は、たまたま出会った男性とすぐに恋に落ちてしまったから雑誌の出番は無かったみたいですが、大丈夫。私の為に役立てられます。」
一方的に指輪を嵌めただけで婚約成立って頭おかしいとか、ストーカー的な問題発言を聞いたような気がするとか、言いたいことは色々あったが、つどつど突っ込んでも話が進まないのでスルー一択だ。
「・・・これって婚約指輪だったのか。」
赤い石のついた指輪を見ながら俺はつぶやいた。
「もちろん、そちらが気に入らなければ お望みの指輪を贈りますよ。ちょうどいいので、結婚指輪も一緒にみてみましょう。」
ちょうどいいって何が。・・・とは言わずにこれもスルー。俺のスルースキルがどんどん上がっていく。
「───結婚な・・・。べつに俺だってそんなこだわりはないぞ。
なんとなく彼女からもそろそろ結婚って雰囲気が出てたし、転勤に合わせてプロポーズするのが自然かと思ってはいたけどな。
雑誌はだな、そのタイミングが来た時に彼女にばかり負担を掛けないように、前もっていろいろ頭に入れておきたかっただけだ。・・・なんだよその顔は。」
奴は恐ろしく整った顔を明後日の方に向けて、不貞腐れたように小さくつぶやいた。
「別に。」
言葉にしてみると、不思議な気持ちになる。
ほんの数週間前、2年付き合っていた彼女とそろそろ次に進みたいと、プロポーズやら指輪やら式場やら、これからの予算や段取りを調べはじめた頃に、他に好きな人が出来たと振られた。
それが今はどうだ。男から無理やり指輪が嵌められたと思ったら、あそこにも嵌められまくり、子供まで仕込まれて結婚の申し込みを受けている。それこそ順番がおかしすぎる。
そんなことを考えていたら、奴の両手が俺の顔にそっと近づいてきた。
大きな手のひらに俺の両頬がすっぽり包み込まれると、次はゆっくりと奴の顔が近づいてきたので、キスされるのかと思ったら違った。
奴の額が俺の額に押し当てられて、そのまま奴は言葉を続けた。
「特別措置法で定められている保護義務に従って、私は守の求めに応じて番契約を履行しますよ。
もちろん子供に対しての親の権利もね。
つまり結婚するしないにかかわらず、わたしと守の夫夫生活はこれからもずっと続くし、守のお腹にいる子供は二人で育てていくことに変わりはないのです。」
奴の吐息がかかる中、俺も答えた。
「俺の求めって・・・。ヒートか?その時はお前を呼ばなきゃいい。気合いで耐える・・・のはやっぱり厳しいんだろうな。」
すると、クスクスという奴の笑い声が直接響いてきた。
「ええ、無理でしょうね。そんなことが可能ならば端からΩ保護法なんて必要ないし、措置法だって今回成立してない。」
淡々とそう語ると、おれの唇にその唇をひたりと押し当ててきた。
「Ωの自覚を持った守にはもう分かっているはずだ。わたしに守が必要なように、守ももう私なしではいられない。・・・これからずっとだ。」
そう、唇を押し当てたまま語り終えると、言葉を口移しにでもするかのように舌を入れてきた。
「婚約指輪はヒート前に守に贈っていて、婚約は無事に成っていますし、すぐにでも婚姻届を出せば出産までの時間の開きは十分です。私はそんなのはどうでもいいんですが、あなたは結婚するまでの手順を踏みたいのでしょう?
三週間前、恥ずかしそうに、駅の書店で結婚雑誌を買ってましたもんね。
お相手の女性は、たまたま出会った男性とすぐに恋に落ちてしまったから雑誌の出番は無かったみたいですが、大丈夫。私の為に役立てられます。」
一方的に指輪を嵌めただけで婚約成立って頭おかしいとか、ストーカー的な問題発言を聞いたような気がするとか、言いたいことは色々あったが、つどつど突っ込んでも話が進まないのでスルー一択だ。
「・・・これって婚約指輪だったのか。」
赤い石のついた指輪を見ながら俺はつぶやいた。
「もちろん、そちらが気に入らなければ お望みの指輪を贈りますよ。ちょうどいいので、結婚指輪も一緒にみてみましょう。」
ちょうどいいって何が。・・・とは言わずにこれもスルー。俺のスルースキルがどんどん上がっていく。
「───結婚な・・・。べつに俺だってそんなこだわりはないぞ。
なんとなく彼女からもそろそろ結婚って雰囲気が出てたし、転勤に合わせてプロポーズするのが自然かと思ってはいたけどな。
雑誌はだな、そのタイミングが来た時に彼女にばかり負担を掛けないように、前もっていろいろ頭に入れておきたかっただけだ。・・・なんだよその顔は。」
奴は恐ろしく整った顔を明後日の方に向けて、不貞腐れたように小さくつぶやいた。
「別に。」
言葉にしてみると、不思議な気持ちになる。
ほんの数週間前、2年付き合っていた彼女とそろそろ次に進みたいと、プロポーズやら指輪やら式場やら、これからの予算や段取りを調べはじめた頃に、他に好きな人が出来たと振られた。
それが今はどうだ。男から無理やり指輪が嵌められたと思ったら、あそこにも嵌められまくり、子供まで仕込まれて結婚の申し込みを受けている。それこそ順番がおかしすぎる。
そんなことを考えていたら、奴の両手が俺の顔にそっと近づいてきた。
大きな手のひらに俺の両頬がすっぽり包み込まれると、次はゆっくりと奴の顔が近づいてきたので、キスされるのかと思ったら違った。
奴の額が俺の額に押し当てられて、そのまま奴は言葉を続けた。
「特別措置法で定められている保護義務に従って、私は守の求めに応じて番契約を履行しますよ。
もちろん子供に対しての親の権利もね。
つまり結婚するしないにかかわらず、わたしと守の夫夫生活はこれからもずっと続くし、守のお腹にいる子供は二人で育てていくことに変わりはないのです。」
奴の吐息がかかる中、俺も答えた。
「俺の求めって・・・。ヒートか?その時はお前を呼ばなきゃいい。気合いで耐える・・・のはやっぱり厳しいんだろうな。」
すると、クスクスという奴の笑い声が直接響いてきた。
「ええ、無理でしょうね。そんなことが可能ならば端からΩ保護法なんて必要ないし、措置法だって今回成立してない。」
淡々とそう語ると、おれの唇にその唇をひたりと押し当ててきた。
「Ωの自覚を持った守にはもう分かっているはずだ。わたしに守が必要なように、守ももう私なしではいられない。・・・これからずっとだ。」
そう、唇を押し当てたまま語り終えると、言葉を口移しにでもするかのように舌を入れてきた。
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