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レーリオが取った行動
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ふと目を覚ますと、視界に入ってきたのは見慣れたベッドの天蓋だった。
(あれ? わたくし……皆でエミリアの泉に行っていたはずなのに、どうして寝室にいるのかしら?)
ぼんやりと部屋の中を見回そうとすると、誰かに手を握られた。
「気がついたかい?」
「レーリオ様……」
レーリオが心配そうな表情で、エミリーの顔を覗き込んでくる。そして体を起こしてくれた。
(わたくし……)
段々と思考が定まってくると――彼との出会い、そして別れ。そのすべてを思い出して、涙がぶわっとあふれてきた。
「ひっ、くっ……ううっ、レーリオさまっ……わ、わたくし、思い出しました……」
「うん。話すより思い出してもらったほうが早いなと思って、無理矢理記憶を引っ張り出したんだ。びっくりしただろう? つらいことを思い出させてしまって、すまなかった」
「いいえ、いいえ!」
手を伸ばしてぎゅっと抱き締めてくれるレーリオの腕の中で、何度も首を横に振る。
前世――レーリオを愛し、正真正銘彼のものになりたいと思った時、エミリーは彼と同じ時を生きる魔族になりたいと切に願った。
けれど、それを神は許さなかった。
レーリオの血と魔力。そして精を受けて、魔族になろうとした時、体の中にある『神々のしるし』が邪魔をしたのだ。
突如、魔法陣のような神々しいしるしがエミリーの体から浮かび上がり、その光が黒いものに侵されて朽ちるように燃えていった。それが苦しくて、とても痛かったことを思い出す。
だが、体の中で神力と魔力が戦っているのだと思えば、むしろ嬉しかった。この苦しさや痛みに打ち勝ちさえすればレーリオのものになれる。そう思えば、つらくなんてなかったのだ。が、エミリーは打ち勝つことができなかった。
徐々に動かなくなっていく体を抱いて泣くレーリオに大丈夫だと言って、抱き締め返してあげられなかったことが今も悔やまれる。
エミリーは彼の背中に手をまわして、あの時したかったように彼を抱き締めた。
「レーリオ様、ごめんなさい……。泣かせてしまってごめんなさい。長い間、一人にしてごめんなさい」
「エミリー、謝らないで。私のほうこそ、すまなかった。まずは神々を殺してからにしなければならなかったのに……。あの程度の神力くらい我が魔力なら打ち消せる。そう驕っていたんだ。本当にエミリーを失いたくないなら、驕らず油断せず最善を尽くさねばならなかったのに」
「やめてください。わたくしは貴方に抱かれ、貴方の血と魔力を受け、貴方のものになれたことが嬉しかったのです。だから後悔なんてしないでください。ご自分を責めないで」
後悔の滲む声でそう言ったレーリオの両肩を掴み、彼の目をじっと見据える。すると、彼は眉を寄せ痛ましそうな表情をした。
その表情から、彼の後悔の深さが窺いしれる。
「ありがとう……。でも後悔しないなんて無理だ。神々は聖女でありながら魔族になることを選んだ罰だということを示したかったのだろう――あの時、エミリーの体に雷が落ちた。私はそれを阻止することすらできなかったんだ」
レーリオが軋むほどに拳を握りしめる。その手に自分の手をそっと重ねた。
そういえば神々により引き裂かれ、神罰を受けた聖女は命を落としたと建国神話に書いてあった。あれは本当のことだったのだ。
(けれど、わたくしは神罰なんて怖くないのです。貴方を愛したことが罰だと言うのなら、地獄に堕ちたって構いません)
「だから私は……エミリーを奪った神を殺したんだ」
レーリオの底冷えするような低く冷たい声にハッとする。
「エミリーの死後、私は天界に乗り込み、悲しみと怒りのままに暴れた。そしてエミリーを特に気に入っていた神を二柱消したんだ」
そう話してくれるレーリオの顔は、いつもの優しげな表情ではなかった。恐ろしいほどに冷たく仄暗い表情をした彼に、エミリーは何も言えなくなった。
表情も声もとても静かだが、そこに怒りが込められているのが分かる。レーリオは未だに神を許していないのだ。
どんなに優しく振る舞っていても彼は魔王なのだということをまざまざと突きつけられた気がして、エミリーは顔を俯けた。
「……その勢いでエミリーのいない人間の世界も壊してしまおうと思った。あの時の私は怒りで前が見えなくなっていたのだと思う。けれど、グレタが言ったんだ。死んだエミリーの体の中から鼓動が聞こえると。だから、踏みとどまれたんだと思う」
「え……?」
「たった一度の交わりなのに、エミリーは死んでしまったのに、懐妊していたんだよ」
レーリオの言葉に目を見張る。とても信じられないと、彼の顔を見つめると彼が笑った。
「私の血と魔力。精。エミリーが生きたいと願う心――生命力が奇跡を生んだのだと思う。つまり、今現在のディフェンデレの王族はエミリーの子孫でもあるんだよ」
「そ、そんな……嘘……」
「嘘ではないよ。私はエミリーに嘘なんてつかない」
それが本当なら、とても素晴らしいことだ。
てっきりレーリオが次代に血を繋げるために別の人との間に子を作っていたと思っていた。建国し王となったからには、王族として子をなす行為は義務でもある。だから、寂しいが仕方のないことだ。そう思っていたのに、彼にはずっと自分だけだったのだと知って、胸が熱くなった。
(嬉しい……!)
エミリーがふにゃっと笑うと、彼はエミリーの手をぎゅっと握り込んだ。
「エミリーの体内に私たちの子がいる。そう思えたら、冷静になれたんだ。それに絶望の中で確かにエミリーの声を聞いた」
「わたくしの?」
「うん。自分が死んでも、悲しまないでほしい。幸せに生きてほしいという声が聞こえた。だから、私は神々と話し合いのテーブルにつくことができたんだ」
散々暴れまわったことが脅威だったのか神々は、レーリオにこの大陸を明け渡すから不可侵を求めたと、彼は言った。
今後、神族と魔族は関わらない。今回のことで散り散りになってしまったエミリーの魂を修復し、必ずレーリオに返すという約束をしたらしい。
「だから、この大陸の神がレーリオ様なのですね」
「うん、そうだね。わざとそうなるように仕向けたわけではないけど、前世のエミリーを傷つけた者をすべて排除し、人々から神への信仰心を消していった。そして、魔族を住まわせ、人間と共生させた。すると、自然と私を神と崇める者が増えていったんだよ」
長い時の中で、魔族と人間が共に生きるようになって、魔法が当たり前のように生活の一部になっていった。
人々の数が増えれば、考え方が違う者同士が袂をわかっていく。でも元は一つであったので、この大陸はどの国も崇めている神が一緒だ。
それでも国が違えば考え方は変わる。だから戦争が起きてしまうのだ。
「ごめんね、エミリー。怖がらせてしまったね」
レーリオがエミリーを抱き締め、背中を撫でてくれる。エミリーは甘えるように彼の胸にすり寄った。
「いやになった?」
「いいえ!」
力一杯否定すると、顎をすくい上げ、そっと口付けられる。彼に応えたくて、口の中に入ってきた彼の舌に自分の舌を絡めた。レーリオの背中に手をまわし抱きつくと、ゆっくりと唇が離れて、次は瞼に口付けが落ちてくる。
「ねぇ、エミリー。こんな時に悪いんだけど、わがままを言ってもいいかな?」
「はい」
なんだろう。レーリオがそんなことを言うのは珍しい。見当がつかなくて、エミリーは首を傾げた。
「エミリーを抱きたい」
「っ!」
しっとりとした声で囁かれて、胸がどくんと鼓動を打つ。顔に熱が集まってくるのが分かって、隠すように彼の胸に顔をうずめた。
「こ、今度こそ、わたくしのすべてをレーリオ様のものにしてくださいませ」
「ありがとう、エミリー」
エミリーが頷くと、ベッドに押し倒される。覆い被さり、二人の視線が絡み合った。
(あれ? わたくし……皆でエミリアの泉に行っていたはずなのに、どうして寝室にいるのかしら?)
ぼんやりと部屋の中を見回そうとすると、誰かに手を握られた。
「気がついたかい?」
「レーリオ様……」
レーリオが心配そうな表情で、エミリーの顔を覗き込んでくる。そして体を起こしてくれた。
(わたくし……)
段々と思考が定まってくると――彼との出会い、そして別れ。そのすべてを思い出して、涙がぶわっとあふれてきた。
「ひっ、くっ……ううっ、レーリオさまっ……わ、わたくし、思い出しました……」
「うん。話すより思い出してもらったほうが早いなと思って、無理矢理記憶を引っ張り出したんだ。びっくりしただろう? つらいことを思い出させてしまって、すまなかった」
「いいえ、いいえ!」
手を伸ばしてぎゅっと抱き締めてくれるレーリオの腕の中で、何度も首を横に振る。
前世――レーリオを愛し、正真正銘彼のものになりたいと思った時、エミリーは彼と同じ時を生きる魔族になりたいと切に願った。
けれど、それを神は許さなかった。
レーリオの血と魔力。そして精を受けて、魔族になろうとした時、体の中にある『神々のしるし』が邪魔をしたのだ。
突如、魔法陣のような神々しいしるしがエミリーの体から浮かび上がり、その光が黒いものに侵されて朽ちるように燃えていった。それが苦しくて、とても痛かったことを思い出す。
だが、体の中で神力と魔力が戦っているのだと思えば、むしろ嬉しかった。この苦しさや痛みに打ち勝ちさえすればレーリオのものになれる。そう思えば、つらくなんてなかったのだ。が、エミリーは打ち勝つことができなかった。
徐々に動かなくなっていく体を抱いて泣くレーリオに大丈夫だと言って、抱き締め返してあげられなかったことが今も悔やまれる。
エミリーは彼の背中に手をまわして、あの時したかったように彼を抱き締めた。
「レーリオ様、ごめんなさい……。泣かせてしまってごめんなさい。長い間、一人にしてごめんなさい」
「エミリー、謝らないで。私のほうこそ、すまなかった。まずは神々を殺してからにしなければならなかったのに……。あの程度の神力くらい我が魔力なら打ち消せる。そう驕っていたんだ。本当にエミリーを失いたくないなら、驕らず油断せず最善を尽くさねばならなかったのに」
「やめてください。わたくしは貴方に抱かれ、貴方の血と魔力を受け、貴方のものになれたことが嬉しかったのです。だから後悔なんてしないでください。ご自分を責めないで」
後悔の滲む声でそう言ったレーリオの両肩を掴み、彼の目をじっと見据える。すると、彼は眉を寄せ痛ましそうな表情をした。
その表情から、彼の後悔の深さが窺いしれる。
「ありがとう……。でも後悔しないなんて無理だ。神々は聖女でありながら魔族になることを選んだ罰だということを示したかったのだろう――あの時、エミリーの体に雷が落ちた。私はそれを阻止することすらできなかったんだ」
レーリオが軋むほどに拳を握りしめる。その手に自分の手をそっと重ねた。
そういえば神々により引き裂かれ、神罰を受けた聖女は命を落としたと建国神話に書いてあった。あれは本当のことだったのだ。
(けれど、わたくしは神罰なんて怖くないのです。貴方を愛したことが罰だと言うのなら、地獄に堕ちたって構いません)
「だから私は……エミリーを奪った神を殺したんだ」
レーリオの底冷えするような低く冷たい声にハッとする。
「エミリーの死後、私は天界に乗り込み、悲しみと怒りのままに暴れた。そしてエミリーを特に気に入っていた神を二柱消したんだ」
そう話してくれるレーリオの顔は、いつもの優しげな表情ではなかった。恐ろしいほどに冷たく仄暗い表情をした彼に、エミリーは何も言えなくなった。
表情も声もとても静かだが、そこに怒りが込められているのが分かる。レーリオは未だに神を許していないのだ。
どんなに優しく振る舞っていても彼は魔王なのだということをまざまざと突きつけられた気がして、エミリーは顔を俯けた。
「……その勢いでエミリーのいない人間の世界も壊してしまおうと思った。あの時の私は怒りで前が見えなくなっていたのだと思う。けれど、グレタが言ったんだ。死んだエミリーの体の中から鼓動が聞こえると。だから、踏みとどまれたんだと思う」
「え……?」
「たった一度の交わりなのに、エミリーは死んでしまったのに、懐妊していたんだよ」
レーリオの言葉に目を見張る。とても信じられないと、彼の顔を見つめると彼が笑った。
「私の血と魔力。精。エミリーが生きたいと願う心――生命力が奇跡を生んだのだと思う。つまり、今現在のディフェンデレの王族はエミリーの子孫でもあるんだよ」
「そ、そんな……嘘……」
「嘘ではないよ。私はエミリーに嘘なんてつかない」
それが本当なら、とても素晴らしいことだ。
てっきりレーリオが次代に血を繋げるために別の人との間に子を作っていたと思っていた。建国し王となったからには、王族として子をなす行為は義務でもある。だから、寂しいが仕方のないことだ。そう思っていたのに、彼にはずっと自分だけだったのだと知って、胸が熱くなった。
(嬉しい……!)
エミリーがふにゃっと笑うと、彼はエミリーの手をぎゅっと握り込んだ。
「エミリーの体内に私たちの子がいる。そう思えたら、冷静になれたんだ。それに絶望の中で確かにエミリーの声を聞いた」
「わたくしの?」
「うん。自分が死んでも、悲しまないでほしい。幸せに生きてほしいという声が聞こえた。だから、私は神々と話し合いのテーブルにつくことができたんだ」
散々暴れまわったことが脅威だったのか神々は、レーリオにこの大陸を明け渡すから不可侵を求めたと、彼は言った。
今後、神族と魔族は関わらない。今回のことで散り散りになってしまったエミリーの魂を修復し、必ずレーリオに返すという約束をしたらしい。
「だから、この大陸の神がレーリオ様なのですね」
「うん、そうだね。わざとそうなるように仕向けたわけではないけど、前世のエミリーを傷つけた者をすべて排除し、人々から神への信仰心を消していった。そして、魔族を住まわせ、人間と共生させた。すると、自然と私を神と崇める者が増えていったんだよ」
長い時の中で、魔族と人間が共に生きるようになって、魔法が当たり前のように生活の一部になっていった。
人々の数が増えれば、考え方が違う者同士が袂をわかっていく。でも元は一つであったので、この大陸はどの国も崇めている神が一緒だ。
それでも国が違えば考え方は変わる。だから戦争が起きてしまうのだ。
「ごめんね、エミリー。怖がらせてしまったね」
レーリオがエミリーを抱き締め、背中を撫でてくれる。エミリーは甘えるように彼の胸にすり寄った。
「いやになった?」
「いいえ!」
力一杯否定すると、顎をすくい上げ、そっと口付けられる。彼に応えたくて、口の中に入ってきた彼の舌に自分の舌を絡めた。レーリオの背中に手をまわし抱きつくと、ゆっくりと唇が離れて、次は瞼に口付けが落ちてくる。
「ねぇ、エミリー。こんな時に悪いんだけど、わがままを言ってもいいかな?」
「はい」
なんだろう。レーリオがそんなことを言うのは珍しい。見当がつかなくて、エミリーは首を傾げた。
「エミリーを抱きたい」
「っ!」
しっとりとした声で囁かれて、胸がどくんと鼓動を打つ。顔に熱が集まってくるのが分かって、隠すように彼の胸に顔をうずめた。
「こ、今度こそ、わたくしのすべてをレーリオ様のものにしてくださいませ」
「ありがとう、エミリー」
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