81 / 101
本編~4ヶ月目~
第69話~未来の展望~
しおりを挟む
~新宿・大久保~
~メゾン・リープ 203号室~
「うーん……」
その翌日、土曜日の午前中。
僕は自分の部屋、ベッドの上にあぐらをかいて、腕組みしながら眉間にしわを寄せていた。
悩みは尽きない。今日の仕事のこともそうだし、世界転移術の習得に関してもそうだ。チェルパから地球へ転移してきた人々についても悩ましいし、そもそも来週にどんなお通しを出して、どんな日本酒を仕入れるかも頭に残っていた。
壁にもたれながら唸っていたら、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。ベッドから降りてドアのノブを捻ったら、向こうからエティが顔を出してきた。
「どうしたのマウロ、唸り声が私の部屋まで聞こえてきているけど」
「ああ……エティ。すまない」
いけない、唸っていたら隣の部屋まで漏れ聞こえていたらしい。頭を下げながら彼女を部屋に招き入れて、僕は再びベッドに腰を下ろした。
「いや、さ……コトナリさんに内なる穴を開けてもらった後のことを、考えてて」
「世界転移術を身に着けた、後ってこと?」
黒い鼻から小さく息を漏らして話す僕の言葉に、エティが自分の長い耳に手をやりながら返してくる。その言葉に、僕はこくりと頷いた。
世界転移術を僕なり他の四人なりが身に着けるとして、それは大きな転換点ではあるが、決してそれが目標にはならない。むしろ、そこからが始まりだ。
元々こういう話になったのも、地球とチェルパの互いの位相が接近しすぎていて、穴が開く安くなっている状況を改善するため、なのだ。
「そう。世界転移術の取得はゴールじゃない、むしろスタートラインに立ったくらいのことなわけだろ。その先には『世界を動かして位相を離す』って大仕事が待っている」
「そうね」
僕の言葉に、エティもしっかりと頷いた。
元々しっかり者の彼女のことだ。本来の目的を忘れる、と言うようなことは無いだろうと思っていたし、実際無くて安心した。
それを踏まえた上で、僕は部屋のフローリングに立ったままの僕を見つめる彼女に、真っすぐ視線を向けて口を開く。
「どうやれば、『世界を動かす』ことが出来ると思う?」
僕の言葉に、エティは眉間を寄せながら小さく唸った。
世界を動かす。我ながら、随分と抽象的なことを問いかけているものだと思う。百人に問いかければ、百通りの答えが返ってくるだろう。そのうちのどれくらいが、真に正解かも分からない。
しかしその抽象的な問いかけをする必要がある程に、僕は悩んでいた。世界転移術を身に着けることがスタートだ、と理解しているからこその問いかけ。仲間であるエティと、その辺りの意識のすり合わせはしておきたくて。
しかして数十秒悩んだ後、彼女はおもむろに口を開いた。
「そうね……今までも冒険者としていろんな仕事をしたけれど、それで世界が動かせたかっていうと、自信がないわ」
「だろう? 僕もない。きっと、冒険者としての活動では、世界を動かすことは出来ないんだと、思う」
耳をしゅんと下げながら話す彼女に頷いて、僕は組んだ両手に自分の鼻をつけた。
Sランク冒険者の、それ相応に知名度のある僕でも、簡単に行かないことは容易に想像がついた。シュマル王国内に四人しかいないSランクだが、国外に目を向ければもっとたくさんいるのだ。
エティも僕の言葉に頷きながら、両手を後に回した。
「仕方がないわ。シュマル王国でこそS級として名が通っているけれど、他の国にもSランク冒険者はたくさんいるんだもの」
彼女の言葉に、俯いたままの僕だ。
元々、Aランクのパーティーとしてシュマル王国内では相応に知名度のあった「三匹の仔犬」だが、ラトゥール大陸や南方諸島、もっと言えばチェルパという世界全体に影響力があったかと言えば、そこまではいかなかった。
国外に出て仕事をすることも「八枚の翼」ほど多くはない。冒険者の立場から世界を動かすのは、難しいだろう。
「そうなんだよな。僕達は、僕達にしか出来ないことをやっていくしか、世界を動かすには至らないんだと思う。それこそ、姉さんがやっているように、自分の店と異世界を繋げるとか――」
「あっ、そうだわ」
思いつくままに言葉を零していく僕。すると、エティが何かを思いついた様子で言葉を遮った。同時にぱんと両手を打ち鳴らす。
何事か、と顔を上げる僕に顔を寄せるようにして、彼女は笑みを浮かべながら口を開いた。
「ねえマウロ、私、今ふっと思いついたんだけど。『陽羽南』をラトゥール大陸にも出店するっていうの、ありじゃないかしら?」
「うん?」
彼女の言葉に、僕はきっと目を見開き、きょとんとしていたことだろう。
「陽羽南」をラトゥール大陸にも出店する。地球にではなく、チェルパに。
その発想は、まさしくなかった。
口を噤んで、自分の中にその言葉を落とし込んでいる間にも、エティはどんどん話しかけてくる。
「世界転移術がどういう形で発現するかにもよるけれど、地球とチェルパを自由に繋げて、自由に行き来が出来るようになれば、あっちに地球の食材やお酒を持ち込むことも、出来ると思うの。なんだかんだ言ってチェルパの人達ってお酒が好きだし、話題になるんじゃない?」
「そうか……なるほどな」
その言葉に、ようやく得心が言った僕は納得した。
チェルパの国々は、どの国でもアルコールの消費が盛んだ。蒸留酒のような強い酒こそ無いが、エールやワイン、シードルは日常的に消費されているし、日本酒と同じようにコメを発酵させた米酒も、南方諸島で作られている。ナタニエル三世陛下が愛飲しているように、愛好家もいるものだ。
それを考えれば確かに、地球の日本酒もワインも、なんならビールも、快く受け入れられるだろう。冷たいし、風味も優れているし、種類がけた外れに多い。楽しめるはずだ。
ありかもしれない、と思いつつ、ふと現実に立ち返って僕は腕を組んだ。
「ただ、地球から食材も酒も何もかもを持ち込んで作るのだと、面白みもないしな……僕達がこっちでシュマルの料理を作るのにしたって、食材は地球のものを使っているし」
「確かにね。醤油とか料理酒とかの調味料は、あっちじゃ調達しようがないから持ち込むしかないんでしょうけど……似た食材はあっちにも多いし」
僕の言葉に、エティも同意を返してくる。
異世界から食料品や食材を持ち込むと、その世界には無い病気やら菌やらが持ち込まれる危険があるから、極力しないのがルールだ。先日の一時帰還の時に僕達がお土産でペペルの実を持たされた時も、すぐに区役所の転移課に持ち込んで、危険性の有無を確認してもらっている。
なるべくなら食材は、チェルパにあるものを使って作りたい。調味料は向こうで調達するのは難易度が高いだろうから、しょうがないけれど。
逆に言えば、条件をクリアするのはさして難しい話ではなさそうだ。
「でも、いいかもな、それ。地球で異世界の料理が受け入れられているんだから、地球仕込みの料理が異世界で受け入れられないとは、考えにくいしな」
「そうそう。いい案だと思わない?」
ようやく笑顔を浮かべつつ、僕は頷いた。発案したエティ自身も嬉しそうである。
チェルパに、ラトゥール大陸の国に、自分の店を持って、地球由来の料理や酒を提供する。
なるほど、これなら確かに「世界を動かす」に値することが出来そうだ。
そこから僕達二人はどんどん展望を広げていった。どんな料理を中心に作ろうか、どんな酒を仕入れて提供しようか、などなど。
「あと、思ったんだけどさ。包丁とか鍋とか、やるなら持っていきたいよな。もうチェルパ伝統の包丁で料理するのなんて、考えられないし」
「あぁ、マウロいっつも言ってるものね、包丁の切れ味が比べ物にならない、鍋も軽くて使いやすいって」
そして調理器具はどうしようか、という話になったところで、僕達の意見はすぐさまに一致した。
もう、地球の、というか日本で買える包丁と鍋に慣れ親しんでしまったから、それ以外のものを使うなんて考えられない。軽いし、丈夫だし、手入れがしやすいし、何より気持ちいいくらいによく切れる。
王都の冒険者ギルドの食堂で働いていた時に使っていた包丁なんて、刃は欠けているし歪んでいるしで、使いづらくてしょうがなかった。鍋も鉄製で重たかったし。
だんだん現実的に考えられるようになってきて、僕はふと天井を見上げた。
「そうだな……とはいえ、やっぱり生活の基盤はこっちにするつもりではいるけれど」
そう、店を向こうで開くとしても、僕は歌舞伎町店の店長だし、そこから離れるつもりは今のところないのだ。理想を言えば歌舞伎町店の店長をやりながら、チェルパでの店にも顔を出したい。とはいえそんなことをしたら、文字通り休む暇がなさそうだ。
僕が頭をひねっていると、また何かを思いついたらしいエティがぽんと手を叩く。
「それなら、ほら、系列店のオーナーって手もあるわよ。お店の建物と場所だけマウロが持って、店長は他の人にやってもらうとか。なんて言ったかしら、『ふらんちゃいず』? みたいな」
「あ、なるほど」
その言葉に、またも気付かされてハッとした表情になる僕だ。
確かにこの新宿区内でも、店長とは別に店の所有者がいて、その所有者が管理したり店の方向性に意見したりといった話はよく耳にする。
それをチェルパでもやれば、確かに僕の労力は減らせるだろう。なんならオーナーとして店に時折顔を出すことも出来そうだ。王都の目抜き通り周辺にも飲食店はあるし、営業しておらずテナント募集中の建物もある。不可能ではない。
「オーナーか……いいかもな……」
オーナー。その魅力的な響きに目を細めながら、僕は将来の展望をどんどん膨らませていくのだった。
~第70話へ~
~メゾン・リープ 203号室~
「うーん……」
その翌日、土曜日の午前中。
僕は自分の部屋、ベッドの上にあぐらをかいて、腕組みしながら眉間にしわを寄せていた。
悩みは尽きない。今日の仕事のこともそうだし、世界転移術の習得に関してもそうだ。チェルパから地球へ転移してきた人々についても悩ましいし、そもそも来週にどんなお通しを出して、どんな日本酒を仕入れるかも頭に残っていた。
壁にもたれながら唸っていたら、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。ベッドから降りてドアのノブを捻ったら、向こうからエティが顔を出してきた。
「どうしたのマウロ、唸り声が私の部屋まで聞こえてきているけど」
「ああ……エティ。すまない」
いけない、唸っていたら隣の部屋まで漏れ聞こえていたらしい。頭を下げながら彼女を部屋に招き入れて、僕は再びベッドに腰を下ろした。
「いや、さ……コトナリさんに内なる穴を開けてもらった後のことを、考えてて」
「世界転移術を身に着けた、後ってこと?」
黒い鼻から小さく息を漏らして話す僕の言葉に、エティが自分の長い耳に手をやりながら返してくる。その言葉に、僕はこくりと頷いた。
世界転移術を僕なり他の四人なりが身に着けるとして、それは大きな転換点ではあるが、決してそれが目標にはならない。むしろ、そこからが始まりだ。
元々こういう話になったのも、地球とチェルパの互いの位相が接近しすぎていて、穴が開く安くなっている状況を改善するため、なのだ。
「そう。世界転移術の取得はゴールじゃない、むしろスタートラインに立ったくらいのことなわけだろ。その先には『世界を動かして位相を離す』って大仕事が待っている」
「そうね」
僕の言葉に、エティもしっかりと頷いた。
元々しっかり者の彼女のことだ。本来の目的を忘れる、と言うようなことは無いだろうと思っていたし、実際無くて安心した。
それを踏まえた上で、僕は部屋のフローリングに立ったままの僕を見つめる彼女に、真っすぐ視線を向けて口を開く。
「どうやれば、『世界を動かす』ことが出来ると思う?」
僕の言葉に、エティは眉間を寄せながら小さく唸った。
世界を動かす。我ながら、随分と抽象的なことを問いかけているものだと思う。百人に問いかければ、百通りの答えが返ってくるだろう。そのうちのどれくらいが、真に正解かも分からない。
しかしその抽象的な問いかけをする必要がある程に、僕は悩んでいた。世界転移術を身に着けることがスタートだ、と理解しているからこその問いかけ。仲間であるエティと、その辺りの意識のすり合わせはしておきたくて。
しかして数十秒悩んだ後、彼女はおもむろに口を開いた。
「そうね……今までも冒険者としていろんな仕事をしたけれど、それで世界が動かせたかっていうと、自信がないわ」
「だろう? 僕もない。きっと、冒険者としての活動では、世界を動かすことは出来ないんだと、思う」
耳をしゅんと下げながら話す彼女に頷いて、僕は組んだ両手に自分の鼻をつけた。
Sランク冒険者の、それ相応に知名度のある僕でも、簡単に行かないことは容易に想像がついた。シュマル王国内に四人しかいないSランクだが、国外に目を向ければもっとたくさんいるのだ。
エティも僕の言葉に頷きながら、両手を後に回した。
「仕方がないわ。シュマル王国でこそS級として名が通っているけれど、他の国にもSランク冒険者はたくさんいるんだもの」
彼女の言葉に、俯いたままの僕だ。
元々、Aランクのパーティーとしてシュマル王国内では相応に知名度のあった「三匹の仔犬」だが、ラトゥール大陸や南方諸島、もっと言えばチェルパという世界全体に影響力があったかと言えば、そこまではいかなかった。
国外に出て仕事をすることも「八枚の翼」ほど多くはない。冒険者の立場から世界を動かすのは、難しいだろう。
「そうなんだよな。僕達は、僕達にしか出来ないことをやっていくしか、世界を動かすには至らないんだと思う。それこそ、姉さんがやっているように、自分の店と異世界を繋げるとか――」
「あっ、そうだわ」
思いつくままに言葉を零していく僕。すると、エティが何かを思いついた様子で言葉を遮った。同時にぱんと両手を打ち鳴らす。
何事か、と顔を上げる僕に顔を寄せるようにして、彼女は笑みを浮かべながら口を開いた。
「ねえマウロ、私、今ふっと思いついたんだけど。『陽羽南』をラトゥール大陸にも出店するっていうの、ありじゃないかしら?」
「うん?」
彼女の言葉に、僕はきっと目を見開き、きょとんとしていたことだろう。
「陽羽南」をラトゥール大陸にも出店する。地球にではなく、チェルパに。
その発想は、まさしくなかった。
口を噤んで、自分の中にその言葉を落とし込んでいる間にも、エティはどんどん話しかけてくる。
「世界転移術がどういう形で発現するかにもよるけれど、地球とチェルパを自由に繋げて、自由に行き来が出来るようになれば、あっちに地球の食材やお酒を持ち込むことも、出来ると思うの。なんだかんだ言ってチェルパの人達ってお酒が好きだし、話題になるんじゃない?」
「そうか……なるほどな」
その言葉に、ようやく得心が言った僕は納得した。
チェルパの国々は、どの国でもアルコールの消費が盛んだ。蒸留酒のような強い酒こそ無いが、エールやワイン、シードルは日常的に消費されているし、日本酒と同じようにコメを発酵させた米酒も、南方諸島で作られている。ナタニエル三世陛下が愛飲しているように、愛好家もいるものだ。
それを考えれば確かに、地球の日本酒もワインも、なんならビールも、快く受け入れられるだろう。冷たいし、風味も優れているし、種類がけた外れに多い。楽しめるはずだ。
ありかもしれない、と思いつつ、ふと現実に立ち返って僕は腕を組んだ。
「ただ、地球から食材も酒も何もかもを持ち込んで作るのだと、面白みもないしな……僕達がこっちでシュマルの料理を作るのにしたって、食材は地球のものを使っているし」
「確かにね。醤油とか料理酒とかの調味料は、あっちじゃ調達しようがないから持ち込むしかないんでしょうけど……似た食材はあっちにも多いし」
僕の言葉に、エティも同意を返してくる。
異世界から食料品や食材を持ち込むと、その世界には無い病気やら菌やらが持ち込まれる危険があるから、極力しないのがルールだ。先日の一時帰還の時に僕達がお土産でペペルの実を持たされた時も、すぐに区役所の転移課に持ち込んで、危険性の有無を確認してもらっている。
なるべくなら食材は、チェルパにあるものを使って作りたい。調味料は向こうで調達するのは難易度が高いだろうから、しょうがないけれど。
逆に言えば、条件をクリアするのはさして難しい話ではなさそうだ。
「でも、いいかもな、それ。地球で異世界の料理が受け入れられているんだから、地球仕込みの料理が異世界で受け入れられないとは、考えにくいしな」
「そうそう。いい案だと思わない?」
ようやく笑顔を浮かべつつ、僕は頷いた。発案したエティ自身も嬉しそうである。
チェルパに、ラトゥール大陸の国に、自分の店を持って、地球由来の料理や酒を提供する。
なるほど、これなら確かに「世界を動かす」に値することが出来そうだ。
そこから僕達二人はどんどん展望を広げていった。どんな料理を中心に作ろうか、どんな酒を仕入れて提供しようか、などなど。
「あと、思ったんだけどさ。包丁とか鍋とか、やるなら持っていきたいよな。もうチェルパ伝統の包丁で料理するのなんて、考えられないし」
「あぁ、マウロいっつも言ってるものね、包丁の切れ味が比べ物にならない、鍋も軽くて使いやすいって」
そして調理器具はどうしようか、という話になったところで、僕達の意見はすぐさまに一致した。
もう、地球の、というか日本で買える包丁と鍋に慣れ親しんでしまったから、それ以外のものを使うなんて考えられない。軽いし、丈夫だし、手入れがしやすいし、何より気持ちいいくらいによく切れる。
王都の冒険者ギルドの食堂で働いていた時に使っていた包丁なんて、刃は欠けているし歪んでいるしで、使いづらくてしょうがなかった。鍋も鉄製で重たかったし。
だんだん現実的に考えられるようになってきて、僕はふと天井を見上げた。
「そうだな……とはいえ、やっぱり生活の基盤はこっちにするつもりではいるけれど」
そう、店を向こうで開くとしても、僕は歌舞伎町店の店長だし、そこから離れるつもりは今のところないのだ。理想を言えば歌舞伎町店の店長をやりながら、チェルパでの店にも顔を出したい。とはいえそんなことをしたら、文字通り休む暇がなさそうだ。
僕が頭をひねっていると、また何かを思いついたらしいエティがぽんと手を叩く。
「それなら、ほら、系列店のオーナーって手もあるわよ。お店の建物と場所だけマウロが持って、店長は他の人にやってもらうとか。なんて言ったかしら、『ふらんちゃいず』? みたいな」
「あ、なるほど」
その言葉に、またも気付かされてハッとした表情になる僕だ。
確かにこの新宿区内でも、店長とは別に店の所有者がいて、その所有者が管理したり店の方向性に意見したりといった話はよく耳にする。
それをチェルパでもやれば、確かに僕の労力は減らせるだろう。なんならオーナーとして店に時折顔を出すことも出来そうだ。王都の目抜き通り周辺にも飲食店はあるし、営業しておらずテナント募集中の建物もある。不可能ではない。
「オーナーか……いいかもな……」
オーナー。その魅力的な響きに目を細めながら、僕は将来の展望をどんどん膨らませていくのだった。
~第70話へ~
1
あなたにおすすめの小説
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる