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「なんだって!夢で母上がそんな事を!?」
「お母様のお告げを無視したら、悪いことが起こるような気がするの…。わたくし何だか怖いわ…」
「エリー!大丈夫だ、お兄様がついているよ」
「(瞳をうるませて)お兄様!!」
「エリーの危機を察した母上が、天国から伝えてくれたのかもしれないね。王太子殿下とは婚約を結ばないよう父上にお願いしてみよう」
________________
(そんな展開を信じていた時がわたくしにもありました)
少しぬるくなった紅茶を飲みながら、庭園の薔薇を遠目に一輪二輪…、と心のなかで数えてみる。
(「最強のカード」なんて無かったじゃない!どう言うことなのお母様!!)
「僕の話を聞いているかい、エリザベス?」
「もちろんよ、お兄様」
すっかり本名呼びになってしまったお兄様に念を押される。
(視線が痛すぎるわ。過保護なお兄様が恋しい…)
あの後、お兄様は「奥様のお告げだ」と騒ぐラリサやメイド達を下がらせてしまった。
「もう一度聞くけれど…、君は王太子殿下との婚約に何か思うところがあるのかい?」
「あら、それはどういった意味ですの?」
「……例えば王太子妃の責務に重圧を感じているとか、誰か想う相手ができたとか…そういった事だよ。…そうなのかい?」
「まぁ!なぜそんなことを…」
「考えて当然だろう、突然あんな事を言い出して…」
「言い出すなんて…。ラリサと話していたところに突然お兄様が入っていらして、聞かれたから答えただけだわ」
「……」
お兄様は「お母様のお告げ」なんて全然信じていないようだった。
(確かにお告げなんて胡散臭い話をマルッと信じるのはちょっとアレよね。
だけどここは騙されてほしかったわ。
だってわたくしの命がかかっているのだもの!)
のらりくらりとお兄様の言葉をかわしながら、もうお告げでゴリ押しするのは無理だと諦める。
「…わたくし、筆頭公爵家の娘としていずれは(ハニトラにひっかかる予定の)王太子殿下を支えるべく努力してきましたわ。その事に不満も疑問も感じたことは(今までは)一度もありません。
…ただ、もしかしたら心の奥底で(ハニトラ略)殿下との婚約に不安を感じているのかもしれません(毒殺されたくないし)。
だから、無意識にお母様に助けを求め、あんな夢を見てしまったのかもしれませんわね」
少しやけくそに言って俯いていると、大きくため息をついたお兄様が椅子から離れ、わたくしの横に跪いて目線を合わせてきた。
「君の要らぬ重荷になっては、と国王陛下のご厚情で公表はしていなかったが…。ずいぶん前に君と殿下の婚約は正式に結ばれているんだ」
「……!」
「…君なら王家と公爵家の婚姻契約がどれほど重いものかわかっているね?」
「……」
ショックで言葉も出なかった。
婚約阻止と婚約破棄では天と地との差があるからだ。
(うる薔薇では建国祭より前に婚約を発表したとあったわよね!?あったよね!?書面での契約済みってどういうこと!?)
「エリザベス、何度でも聞くよ。この婚約に思うところが?」
お兄様の金色の瞳は、わたくしの心の動きを一つも見逃さないとみつめてくる。
とてもこれ以上嘘をつけそうになかった。
高位貴族の義務、公爵令嬢の矜持、淑女教育、絶対王政…色々な言葉が頭によぎる。
でも「わたくし」も、前世の感覚を持つ「私」も…
この我儘が通ることは無いだろうけれど…
けれど、裏切りも、冤罪も、断罪も、毒殺も、全部全部!
そんな未来はご免ですわ!!
「…殿下との婚姻は絶対にいや!!」
「わかったエリー、婚約は破棄しよう」
「へっ…?」
「なんだって!夢で母上がそんな事を!?」
「お母様のお告げを無視したら、悪いことが起こるような気がするの…。わたくし何だか怖いわ…」
「エリー!大丈夫だ、お兄様がついているよ」
「(瞳をうるませて)お兄様!!」
「エリーの危機を察した母上が、天国から伝えてくれたのかもしれないね。王太子殿下とは婚約を結ばないよう父上にお願いしてみよう」
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(そんな展開を信じていた時がわたくしにもありました)
少しぬるくなった紅茶を飲みながら、庭園の薔薇を遠目に一輪二輪…、と心のなかで数えてみる。
(「最強のカード」なんて無かったじゃない!どう言うことなのお母様!!)
「僕の話を聞いているかい、エリザベス?」
「もちろんよ、お兄様」
すっかり本名呼びになってしまったお兄様に念を押される。
(視線が痛すぎるわ。過保護なお兄様が恋しい…)
あの後、お兄様は「奥様のお告げだ」と騒ぐラリサやメイド達を下がらせてしまった。
「もう一度聞くけれど…、君は王太子殿下との婚約に何か思うところがあるのかい?」
「あら、それはどういった意味ですの?」
「……例えば王太子妃の責務に重圧を感じているとか、誰か想う相手ができたとか…そういった事だよ。…そうなのかい?」
「まぁ!なぜそんなことを…」
「考えて当然だろう、突然あんな事を言い出して…」
「言い出すなんて…。ラリサと話していたところに突然お兄様が入っていらして、聞かれたから答えただけだわ」
「……」
お兄様は「お母様のお告げ」なんて全然信じていないようだった。
(確かにお告げなんて胡散臭い話をマルッと信じるのはちょっとアレよね。
だけどここは騙されてほしかったわ。
だってわたくしの命がかかっているのだもの!)
のらりくらりとお兄様の言葉をかわしながら、もうお告げでゴリ押しするのは無理だと諦める。
「…わたくし、筆頭公爵家の娘としていずれは(ハニトラにひっかかる予定の)王太子殿下を支えるべく努力してきましたわ。その事に不満も疑問も感じたことは(今までは)一度もありません。
…ただ、もしかしたら心の奥底で(ハニトラ略)殿下との婚約に不安を感じているのかもしれません(毒殺されたくないし)。
だから、無意識にお母様に助けを求め、あんな夢を見てしまったのかもしれませんわね」
少しやけくそに言って俯いていると、大きくため息をついたお兄様が椅子から離れ、わたくしの横に跪いて目線を合わせてきた。
「君の要らぬ重荷になっては、と国王陛下のご厚情で公表はしていなかったが…。ずいぶん前に君と殿下の婚約は正式に結ばれているんだ」
「……!」
「…君なら王家と公爵家の婚姻契約がどれほど重いものかわかっているね?」
「……」
ショックで言葉も出なかった。
婚約阻止と婚約破棄では天と地との差があるからだ。
(うる薔薇では建国祭より前に婚約を発表したとあったわよね!?あったよね!?書面での契約済みってどういうこと!?)
「エリザベス、何度でも聞くよ。この婚約に思うところが?」
お兄様の金色の瞳は、わたくしの心の動きを一つも見逃さないとみつめてくる。
とてもこれ以上嘘をつけそうになかった。
高位貴族の義務、公爵令嬢の矜持、淑女教育、絶対王政…色々な言葉が頭によぎる。
でも「わたくし」も、前世の感覚を持つ「私」も…
この我儘が通ることは無いだろうけれど…
けれど、裏切りも、冤罪も、断罪も、毒殺も、全部全部!
そんな未来はご免ですわ!!
「…殿下との婚姻は絶対にいや!!」
「わかったエリー、婚約は破棄しよう」
「へっ…?」
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