ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり

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第1章 カイト、五歳までの軌跡

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(貴族牢)
冷たい無機質な格子に囲われた貴族牢。
「ジョージ、ジョージ!」
奥深い場所にあるこの場所で私の小さな声がやけに大きく聞こえる。
貴族牢と言っても、長年誰にも使われていなかった場所で、この狭くて小さな場所を私が彷徨う度に軽く埃が舞う。

高くて、背を伸ばしても、椅子に上ってみても到底届かない場所にある明り取りの小窓からは少しだけ光が揺らめき、空気中に漂う埃の動きが見て取れる。

私には、私の息子を王位に付けたい希望があった。私に振り向いてはくれないジルバート様。愛して貰えないなら、私を蔑ろにしたジルバート様を私の手で亡きものにしたかった。

愛されないと傷ついた私の心に刺さった小さな棘は段々と私の心に深く差し込まれていった。

愛されないなら、もう要らない。
そう思った瞬間、胸につかえていた涙がかやいた。
………なら、消してしまえばいい。
そんな思いが膨らんで行くのは自然に思えた。

だけど、頭のどこかで自分がとんでもない事をしでかしているって分かっていた。

ジョージは私の子。
私とジルバート様との子どもだと思っていた。けれど、違った。
ジョージが成長していくと、ジルバート様の子ではないと気づいてしまったわ。
その時の絶望ったらなかったわね。

不貞の証拠となるジョージ。
一度は「死んだことにしてしまう予定」だった。だけど、日に日に笑うようになり、私に抱っこを求めて泣く姿に私は無償の愛を感じるようになってしまった。

愛するジルバート様には愛されない私。
愛する人を裏切って出来た子どもを愛せなかった私。
そんな私を愛してくれて、私に手を伸ばし、私に愛を乞う息子。

段々と笑うようになってきた。
こんな私でも母と思ってくれるの?
本能なの?私を求めてくれるの?

抱くと甘いミルクの匂いがした。
思いのほか、ずっしりとした重さに生命の重さを感じた。
私は悪い母親よ。そう思うのに、私の視線を受け止め、無邪気に笑い、私に抱かれて喜んでいる。世話役のメイドでも、乳母でもなく、機嫌が悪くてグズる時は私でないと泣き止まない。ほんの小さな優越感。

柔らかなほっぺた。ぷくぷくの手。
いつの間にか私は、ジョージを愛していたのね。

私の罪は大きいわ。あの子が将来、私が母親だと知ったら私を憎むでしょうね。

私を忘れて、幸せになって。
せめてあの小さなジョージの温もりをもう一度抱きしめたい。
だけど、そうするとに未練が残るでしょうね。

だから、もう二度と会わない方がいいわね。
もうすぐ私はジルバート様に処刑される。
どうか、どうか、ジョージは助けて欲しい。最後のお願い。

聞き入れてもらえるか分からない、私の切なる想い。

そんな思考も、遠い入口からこちらに向かって歩いてくる靴の足音が私を現実に引き戻す。

暗くて顔が見えない。
だけど、私には誰だかわかる。
あのコツコツと響く足音、あの歩き方、あの足を運ぶ間合い、どれをとっても、その人が誰なのか、否が応でも私には、誰がここにやってきたのか分かってしまった。

私が愛して愛し抜いた人。

ああ、ジルバート様。

「シルビア、最後に私はあなたと話に来た。正直に話した方がいい。ただ自白剤は飲んでもらうから、何もかも吐いてもらうぞ」


最後だ。私は酷く痛む胸を抑えながら、シルビアに飲ませるコップに入った自白剤を私の口に含む。
そして、すぐさまシルビアの顎をつかみ、口付けて、自白剤をシルビアの喉に流し込んだ。

シルビアにする最後の口付け。
私の愛したシルビア。
甘い口付けに自白剤を。

自白剤を持ってこられたジルバート様が、私に飲ませるはずの自白剤を自分の口に運ぶ様子に私は驚きを隠せない。

驚いたのもつかの間。
ジルバート様は私に口付けをし、直接私に自白剤を流し込んできた。

なぜ?
どうしてあなたが?
そう思うけれどもう声は出なかった。
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