ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり

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第2章 いよいよ開幕!――物語は“影”の深層へ!

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(ダウニーの部屋)

「ねぇ、ダウニー。あなたが眠りについてから色々あったわ。セバスからはね、ケンブルクの国の人が、このマーシュ領に攻めてきたらしいの。あなたが眠りにつく前にセバスにこの領地の事を一任したでしょ。そこでね、驚いたことにカイくんが参加してるのよ。あの子が考えた作戦が凄く上手くいったんですって。」

ベッドで深い眠りにつく愛する夫は、ずっと寝たまままだ起きる様子がない。

なんでも、王都で皇太子妃の陰謀に巻き込まれたと聞いたわ。
自衛のためにダウニー自身で、ナイフを腕に突き刺したと聞いた時には胸が潰れる思いになったのよ。しかも、そのナイフには毒が仕込まれていてダウニーの体を蝕んでいたそうじゃない。

そこに、カイくんが傷を治すために振りかけた聖水。それが毒を取り除いてくれてダウニーは一命を取り留めて、今、静かに眠っている。呼吸も浅くはあるが、脈はしっかり鼓動を打っている。

今は回復期ってことのようね。

それがいつまでなのか分からない。

そんな中、今回のケンブルクからの襲撃。
夜中、ふと何やら人の気配が動く気がして様子を伺ったわ。
明かりが灯る部屋、セバスの部屋の前にそっと佇む小さな影。見間違えることはない、私の息子。

私も何かを感じてる。それはカイくんも同じ。
やがてカイくんはセバスの部屋に入っていった。

時折聞こえるカイくんの声。
セバスのところには、マーシュ領の騎士団長が全員集結し、何やら話し合われている様子。

近くに潜むマールを見つけ、私は確認をする。

「奥様、どうやらケンブルクからの襲撃があるかもしれません。セバスが騎士団長たちを集めたところにカイト坊ちゃんが参加しました。守備や攻撃、作戦にカイト坊ちゃんは率先して参加してるようです。」

「そう……」

ダウニーがいない今、セバスやルーク、全騎士団長が揃っているなら問題ないわね。カイくんがちゃんと役に立ててるといいのだけれど。

あの子は、イカルダの女神様からの知恵、また稀人としての知識があるわ。
私たちには考えられない知恵があるかもしれないもの、様子見ね。
何かあれば、大人が守ってくれる。
邪魔になるようならすぐにカイくんは部屋に戻されるはずよ。

大きな掛けだけど、カイくんを信じてみたい。周りのことも信じてる、だから、任せてみたい。何故かそう思えたの。

王都から戻ったカイくんは、顔が違ったわ。守られるだけの子どもではないわ。
守りたいって気持ちが大きくなったのを感じたのよ。ほんの少し離れただけなのに、カイくんは大きく成長したわ。

発想の柔軟性は素晴らしいものがあるわ。
ダウニーから聞いたの。
カイトは人を導く力があるって。

「本当に危ない時は守って欲しいの。みんな分かってくれてると信じてるわ。
みんなも必ず勝つのよ。誰1人欠けてはだめよ。お願い、ここを守ってくれるわよね。」

「奥様、大丈夫ですよ。マーシュ領のみんながカイト坊ちゃんが大好きです。何があっても必ずお守りします。カイト坊ちゃんだけではありません。奥様も、アリアーナお嬢様も、今、お休みになっているダウニー様も私たちがお守りします。」

「ありがとう。頼むわね」

「さあさ、奥様、今は大事な体です。アリアーナお嬢様と一緒に、ひとまずは避難致しましょう。アリアーナお嬢様をお迎えに行きますよ」

「ええ……」

私たちを守るために頑張るカイくんや、みんな。そのみんなが頑張っているところに私とアリアーナがいては、邪魔になるだけ。安全な場所にいることが何よりの対策。

カイくんが心配だけど、今はみんなを信じるのよ。
マールとアリアーナの部屋へ行き、アリアーナをマールが抱き上げ、この屋敷で1番安全な場所へ。
何があっても、家族は一緒よ。
だから、ダウニーの部屋で、ダウニーのそばに。

「アリちゃん、今日はパパと一緒に休みましょう。」

まだ眠たさで意識の浅いアリアーナをダウニーのベッドに寝かせる。
アリアーナはモゾモゾしながら、少しするとスヤスヤ寝息を立て始めた。

ダウニーのベッドは、私たち4人がゆうに眠れるほどのサイズ。だから、今、ダウニーの邪魔にはならないはずよね。

私も、少しベッドの横で、身を休めた。

「奥様、何かあればすぐにお知らせします。まずは旦那様の元でお休みになって下さい。」

マールがアリと私に掛け布団をかけてくれた。

「ありがとう…」

そう言いつつも、私は眠れなかった。
静かに横になり、長い、長い、夜明けを待つ。

窓の外からは静寂が、遠くからは争うような小さな声と何かがぶつかるような、そんなに音が微かに、途切れ途切れに届く。

私は祈るしかできない。

(どうか、どうか、イカルダの女神様、カイトをお守り下さい。私たちをお守り下さい。そして、ダウニーをお助け下さい)

私の祈りは、私の手からぽわんと柔らかな光となって天へ向かって放たれた。

そして、長い夜明け。
カイトと、みんなが無事であること、そしてケンブルクの兵を捕えたことをマールから報告を受けた。

「良かった、みんなにありがとうと伝えてちょうだい。ご馳走で労わなきゃね」

「カイト坊ちゃんが既に指示を出してますよ、なんでも“バーベキュー”と言うみんなで楽しみながら食事ができるようです。みんなその準備に頑張ってますよ。それと…」

「何かしら?」

「カイト坊ちゃんの提案で、騎士団が美味しそうにご飯を食べているところをケンブルクの兵士に見せつけて、“与えない”という罰を与えるそうです。」

「それは、それで……匂いだけ。」

なかなか、面白い罰を考えるわね。

「可哀想に…でも、我慢なんてできるのかしらね。あの食べ物を食べられないなんで、ある意味拷問ね」

「はい、こんな拷問もあるのだと、私も今まで考えもしなかったです。カイト坊ちゃんが考えることは、“新しい発見”ばかりですね」

「そうね、あの子はこれからどう成長するのかしら。このマーシュ領がどうなっていくのかしらね。」
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