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第一章
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しおりを挟む「ねぇ、ユウ君。この衣装って、どうどう?」
私は早速、ユゥベール第二王子殿下であるユウ君のアトリエに来ている。
あのお茶会の二日後、ユウ君の手配した馬車が伯爵家に来たので、私は喜んで王宮に来たのだ。
「おっ、いいねぇ~。やっぱコスプレっぽいのがいいよね~」
「そうそう、この服ね、ホットパンツに黒のニーハイソックスと、なんとうさ耳パーカーですっ!」
転生前のニホンでは当たり前だった服も、この異世界では奇抜な衣装でしかない。
この服装の良さを分かってくれる人はこれまでいなかったから、私はユウ君に見せたくて、張り切って持ってきたのだった。
「いいじゃ~ん、じゃ、ポーズは、そうだな、横向きの三角座りで、顔だけこっちむいて、傾けて、」
「あっ、やっぱり髪型はツインテールだよね! ピンク髪だし!」
私の中ではイチオシのツインテール。でも、これも実は子供っぽくみえるらしい。
「やっぱ、リアのセンスいいよね。オッケー、ここに座って」
ユウ君は道具を持ち出すと、まずはスケッチといいながら私を描きはじめる。
シャッ、シャッという音が聞こえるが、何を描いているのかは見えない。
「ねぇ、ユウ君。この世界は乙ゲーだって言っていたけど、ユウ君も攻略対象なの?」
「うへぇ~、ビンゴ! そうなんだよねぇ~、僕も可愛い弟キャラって言うの? リアリムと恋に落ちるルートもあったよ」
と、簡単に言いながら筆を進める。
って、それはちょっと気持ち悪い、弟と恋なんて。
「えぇぇ、それは嫌。やっぱりユウ君はユウ君だから、私は無理。ユウ君も無理でしょ?」
「っへ? 僕は無理じゃないよ。今のリアなら大丈夫だよ」
「っな、なにをっ!」
思わず真っ赤になってしまう。
そりゃ、今は他人だから恋愛可能と言えは、そうだけど、
「でも、リアが嫌なら別に、無理やりくっつくこともないよね。でも、リアは兄上の婚約者候補でしょ」
「それは、そうなの。私のアホな発言を誤解されてしまって。で、訂正しようにもウィルストン殿下は人の話を聞いてくれないし」
私はこれまでの経緯をかいつまんで話した。
私のあの「結婚相手としてウィルストン殿下は最高」発言、あれだけは訂正、いや、あの後の言葉を聞いてほしい。
私はイザベラ様こそふさわしい、と言いたかっただけなのに。
「それは、もう遅いよね。でもってリアは好きな人がいるんでしょ、誰?」
「えっとぉ、騎士団にいる、ウィルティム様。2年前にね、助けてもらったの。それ以来、本当は好きなんだけど」
ポーズを崩せないけど、結構恥ずかしい。
こうして恋愛話ができる友達はいなかったから、女子会みたいで嬉しい。
「ウィルティム? そんなキャラいたのかなぁ、モブか? でも、ヒロインが好きになるくらいだから……」
「もうっ、ユウ君。乙ゲーはいいんだよ。私はこうして生きているし、王太子ルートも、第二王子ルートも、お兄様ルートも全部嫌なんだから」
「ははっ、そうだね。ゲーム補正とかかかっても、運命と思うしかないよねぇ~」
明るく返事をしてくれるユウ君は、おしゃべりしながらも絵筆を進めているようだ。
「でもね、ウィルストン殿下が、私にロックオンしていて。どうにかして婚約話を断りたいの」
「へぇ~、兄上が。リアリムにねぇ~、いいじゃん、かっこいいし。王子だし」
「いくらカッコよくたって、王子だから嫌なの。王太子になんてなったら、ゆくゆくは王様だよ?」
私が頭から否定していると、ユウ君はふっと真面目な顔をしてきた。
「でも、リア。政治とか、経済学とか好きだったじゃん。あの知識、生かせるよ」
そうだった、転生前の私は大学で政治学専攻で、真面目に政治家の秘書を目指していた時期もあった。
でも、そんなことは夢物語で、庶民だった私は平凡な事務員になったのだった。
「もう、覚えていないよ。それに、今の私は平凡主義者なの。平凡が一番、平和が一番!」
「ふーん、そうなんだ」
ユウ君はしばらく考えるように、持っていた絵筆を止めた。
「兄上と結婚したくないんだったら、いっそ純潔を捨てたら? その、ウィルティム様だっけ? その人に頼んで、一発やっちゃいなよ」
「は、はぁぁ~?」
なんだろう、真面目な話をしていたと思うのだけど、ユウ君、今、貴方は何と言ったのですか?
「一発、やっちゃいな。で、純潔ではありませんとか言えば、流石に王族に嫁ぐことはできないでしょ」
「で、でも、そ、その後が、怖い」
そう、純潔を失った伯爵令嬢にまともな結婚など来ない。
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