クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

文字の大きさ
6 / 87

クラスのマドンナが朝食を用意してくれた件

しおりを挟む
 佐々木悠里に手を引かれ、俺たちはゲームセンターに到着した。

 中は賑やかで、色とりどりのネオンが光り、電子音と歓声が入り混じっている。

 ――懐かしいな。

 小さい頃、父と母に連れられてよく来ていた気がする。 
 しかし、その思い出は遠い過去のものだった。

「ねぇ、裕貴くん! これ見て! この猫のぬいぐるみ、めちゃくちゃ可愛くない?」

 悠里は目を輝かせながら、クレーンゲームの中にある白い猫のぬいぐるみを指さした。

「やるのか?」

「うん! 見ててよ、私のゲームテクニック!」

 彼女が楽しそうに笑うので、俺はいつもの癖で財布を取り出し、コインを入れようとした。

「裕貴くん。私がやるんだから、お金は私が出すよ」

 彼女はそう言って、俺の手をそっと押し戻した。

 ……これまでの俺だったら、何も考えずに出していたかもしれない。

 でも、今は違う。

「よし……狙うのはこの白猫だね!」

 悠里は慎重にレバーを操作し、クレーンを動かした。

 結果――惨敗。

「うぅ……全然取れない……」

 彼女は肩を落としながら、俺の方を見上げる。

「裕貴くん、私もうお金ないよぉ」

 その顔は、まるで子供みたいだった。

 なんだか可愛いな……と思いつつ、俺は財布から500円玉を取り出した。

「じゃあ、俺がやってみるよ」

 コインを入れ、クレーンを慎重に操作する。

 すると――

「……取れた」

 一発。

 一発で白猫のぬいぐるみが落ちてきた。

「す、すごい! 裕貴くん、めちゃくちゃ上手いじゃん!」

「そんなことないよ。昔、よくやってたからね」

 俺はぬいぐるみを拾い上げ、彼女に差し出した。

「はい、これ」

「え!? いやいや、貰えないよ! それは裕貴くんのものでしょ!」

「じゃあ、もう一個取れたらあげるよ。あと5回残ってるし」

 次に狙うのは黒猫のぬいぐるみ。

 慎重に操作し――

 二回目でゲット。

「すごっ!?」

 悠里が目を丸くして俺を見つめる。

「これでお互い1つずつ。これなら違和感ないでしょ?」

「そ、そうだけど……。本当にいいの?」

「うん、大丈夫。だって、友達だし」

 俺がそう言うと、彼女は驚いた顔をした後、何かを悟ったように頷いた。

「そうだね!」



 それから俺たちは、ゲームセンターを回り、色んな店を見て回った。

 そして気がつけば、外はオレンジ色に染まっていた。

 今までの俺は、一人でショッピングモールに来ても何もすることがなく、すぐに帰っていた。

 けれど、佐々木さんといると、時間が経つのがあっという間に感じる。

「楽しかったね、裕貴くん!」

「うん、楽しかった……。それで、見つかりました? 自分に合いそうな趣味とか」

 俺がそう聞くと、悠里は「うーん」と考え込んだ後、ニコッと笑った。

「正直、見つかってないけど……でも、裕貴くんといるのが楽しかった!」

 その日の彼女の笑顔は、俺の脳裏に焼き付くほどに眩しかった。



「お坊ちゃん、朝ですよ~」

 優しく甘い声が耳元で響く。

 ――え?

 俺は飛び起き、寝ぼけた視界をこすりながら、声の方を見る。

 そこには――メイド服を着た佐々木悠里がいた。

「さ、佐々木さん!?」

 俺は思わず叫ぶ。

 悠里はロングスカートの裾をつまみ、優雅に一礼した。

「朝食をご用意しましたので、ご案内に参りました」

 ……夢じゃないよな?

 俺はまだ混乱しつつ、彼女の微笑みを眺める。



 食卓には、これまでの俺の食生活とはまるで違う、栄養バランスの取れた朝食が並んでいた。

 野菜が多めで、余計な脂質や糖分は極力控えられている。

 完全に「ダイエットメニュー」だ。

「……これ、本当に俺の朝ご飯?」

「うん! お坊ちゃんの健康を考えて作ったの!」

 悠里は得意げに胸を張る。

 こうして俺は、今までとは違う朝食を食べ、新たな一歩を踏み出した。



「せっかくだから、一緒に学校行かない?」

 靴を履いていると、後ろから悠里の声がした。

 振り向くと、制服姿の彼女が微笑んでいる。

「え、一緒に?」

「そんなに驚く? だって、私たち同じ学校で、友達じゃん!」

 ……たしかにそうだけど。

 結局、俺は悠里と一緒に登校することになった。



 校門をくぐると、周囲の視線が一気に俺たちに集まる。

「ねぇ、あれ見て! 佐々木さんが地味な男子と一緒に登校してる!」

「うわ、ほんとだ……どういう関係?」

「なんか、佐々木さん可哀想……」

 周囲の視線が痛い。

 冷たい噂話が、容赦なく耳に届く。

 俺は俯きそうになったが――

「気にしないでいいよ」

 悠里が、そっと俺の腕を掴んで微笑んだ。

「私がついてるから」



 教室の前で、悠里の友達が彼女を呼んだ。

「ごめんね、裕貴くん! 私、ちょっと友達と話してくるね!」

「う、うん」

 そうして彼女は友達の元へ行き、俺は一人で教室の扉を開ける。

 中に入ると、クラスメイトたちはそれぞれ友達と楽しそうに話している。

 ……俺はどうすればいいんだろう。

 席に座り、授業の準備をしようとした時――

「おはよう、裕貴真一郎くんで合ってるかな?」

 俺に声をかけてきたのは、俺とは真反対の雰囲気を持つ、爽やかな男子だった。

 短く整えられた髪、端正な顔立ち、そして堂々とした態度。

 彼は俺に手を差し出し、爽やかに笑う。

「俺は四宮春樹(しのみや はるき)。よろしくな」

 ――この日、俺の人生にまた一つ、新たな出会いが生まれた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...