クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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修学旅行での関係性

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 そして迎えた、修学旅行当日。

 朝の校門前には、大きな観光バスが横づけされ、生徒たちの歓声とキャリーバッグの音が入り混じっていた。教師たちの声がどこかへ掻き消されるほど、空気は浮き足立っている。

「おーい! 裕貴ー! 遅いぞー!」

 バスの前で、春樹が俺に手を振っていた。

「いや、別に遅刻してないって」

 そう言いながら俺が駆け寄ると、春樹は小さく笑って「まあな」とだけ返した。

 その横で、佐々木さんが少し離れたところからこちらを見ていた。

 ふわりと揺れる制服のスカート。キャリーケースのハンドルを握る手。彼女は俺と目が合うと、少しだけはにかんで小さく手を振った。

 その仕草に、俺の胸が少しだけ高鳴った。

 隣には神木さんの姿もあった。けれど、彼女は何も言わず、ただ俺たちの様子を静かに見つめていた。いつものように笑うわけでも、茶化すように声をかけてくるわけでもなく。

 それが、ほんの少しだけ寂しそうに見えてしまったのは――俺の思い過ごしかもしれない。

「よーし! 乗車班確認するぞー!」

 担任の沢田先生の掛け声が響き、生徒たちはそれぞれのグループに集まっていく。

 俺の班は――春樹、佐々木さん、神木さん、そしてクラスの明るい男子・河合の五人。

「奇跡のバランスってやつだなー!」

 河合が無邪気に笑いながら、自分の席へと乗り込んでいく。

 俺は一番後ろの窓際の席に座り、その隣には佐々木さんが自然な流れで腰を下ろした。

「ねぇ裕貴くん、バスの中って少し緊張するよね」

「うん、変に静かだったりするし……」

 そう言いながらも、俺の心は静かではなかった。佐々木さんの隣という位置。周囲の目。春樹の視線。神木さんの沈黙――全部が、いつもと違っていた。

「でも、少し楽しみにしてた。……こうして、隣になれるの」

 佐々木さんがぽつりと呟く。小さな声に、鼓動が一つ跳ねる。

「そ、そうなの?」

「うん。修学旅行って、ちょっと特別な時間じゃない? だから、誰と過ごすかが大事で……」

 そこまで言って、彼女はふっと視線を窓の外に向けた。

 そんな彼女の横顔を見ていると、車内のざわつきがどこか遠くに思えた。



 バスが動き出してからしばらく、車内では自由な会話が飛び交い、スマホで音楽を聴いたり、カードゲームを始めるグループも出てきた。

「裕貴~、こっち来て一緒にトランプやらない?」

 少し前の席から、神木さんが声をかけてきた。

 俺が立ち上がろうとすると――

「……でも今は、このままでいてほしい」

 佐々木さんの小さな声が俺の袖を引き留めた。

 その声は、頼るようでもあり、少しだけ不安げでもあった。

「……ごめん神木さん、ちょっと疲れてるから、またあとで行くね」

「……ふーん、そっか。まぁ、いっか」

 神木さんは軽く笑ってみせたが、すぐに視線を逸らした。

 春樹はそのやりとりを見ながら、何も言わずに前を向いた。



 バスは進み続ける。次第に眠り始める生徒たちもちらほら出てきた。

 俺もなんとなくぼんやりとした意識のまま、佐々木さんと窓の外の景色を眺めていた。

 すると、不意に肩に柔らかな重みがかかる。

 佐々木さんが、寝息を立てながら、俺の肩に頭を預けていた。

 外は静かで、車内もゆるやかな沈黙に包まれていた。

 誰もこの瞬間を邪魔しない。けれど、誰にも見られてはいけないような気がして、俺は窓の外から目を離せなかった。

 ――でも、俺の心は、彼女のぬくもりだけを感じていた。

 修学旅行は、始まったばかりだ。

 この旅で、俺たちの関係がどう変わっていくのか。
 誰かの心が、どこに向かっていくのか――

 今はまだ、誰にもわからなかった。

 修学旅行は、始まったばかりだ。

 この旅で、俺たちの関係がどう変わっていくのか。
 誰かの心が、どこに向かっていくのか――

 今はまだ、誰にもわからなかった。
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