クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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マドンナと俺と先生!?の北海道旅行!?

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 朝食を終えた俺と悠里は、旅館のロビーでくつろいでいた。

 が、そこに現れたのは――

「お待たせ~。部屋でストレッチしてたら時間かかったわ」

 ラフな浴衣姿にサングラスをかけ、缶コーヒー片手に現れたのは、我らが沢田先生だった。

「……その姿で“先生”名乗っていいのか、マジで?」

「ばーか、これがオトナの余裕ってやつよ。で? 今日は何するの? 観光? デート? それとも……肝試し?」

「最後の選択肢だけ飛びすぎなんですけど!?」

「ふふっ、楽しそう」

 悠里は相変わらずニコニコしているが、その笑顔の裏で“本当に楽しんでる”のか“内心ハラハラしてる”のかは、俺にはまだ読み切れなかった。

 



 午前中は、近くのガラス工芸体験に行った。

「へえ~、佐々木って手先器用なんだな」

「え? そうかな?」

 悠里は繊細な手つきでグラスに模様を刻んでいる。一方の俺は、なぜか猫の絵がリアルすぎてちょっと怖くなってきた。

「真一郎、猫好きだったんだ?」

「いや、好きだけど、たぶんこれはホラー系の猫になってる気がする……」

 そんな俺のセンスを見て、横で沢田先生が爆笑していた。

「ぷっ、なにそれ! ラブコメ主人公が作るもんじゃないでしょ、その猫!」

「うるさいです先生! そもそも教師が生徒に爆笑ってどうなんですか!」

「教師ってのはな、教えるだけじゃなくて、茶化すのも仕事なんだよ。青春の監督業だからね~」

「初耳だわ!」

 



 午後は、坂道の続く古い街並みを散策。

「ふふっ、あれ見て、真一郎。猫がこっち見てるよ」

「うわ……俺のグラスの呪いかな……」

「そんなことないってば。むしろ、守り神かも」

 猫を指さして微笑む悠里。なんだか、今日はいつもより素直で、ちょっと甘えん坊な雰囲気だった。

「……ねえ」

 悠里が俺の手をそっと取る。

「今日も、手つないで歩いてもいい?」

「……ああ」

 自然に指が絡む。体温が伝わってくるだけで、どこか安心する。

 ふと視線を上げると、沢田先生が数メートル後ろから俺たちを見ていた。

 ニヤニヤしながら、スマホを構えて――

「撮ったー!」

「先生!? まさか今の写真撮りました!? SNSにあげたりしませんよね!?」

「心配すんな、職員の内部資料として保存するだけだよ。題名は“恋、温まってます”かな?」

「題名やめろおおおお!!」

「ふふっ、いい先生だね、真一郎」

「え、悠里……? 味方してくれないの!?」

 



 夕方。

 旅館の露天風呂でひとり湯船に浸かっていると、ふと沢田先生の言葉が思い出された。

『真一郎、あんたさ――“誰かを大切にする”って、ちゃんと覚悟持って言えてる?』

 その言葉が、胸のどこかに引っかかっていた。

 ……たしかに、俺は佐々木と付き合ってる。
 でも、この先の将来まで見てるかと問われると、正直、そこまでの自信はまだない。

(……けど、それでも)

 目を閉じて、湯気の中で考える。

(今は、ちゃんと“守りたい”って思ってる。それだけは、確かだ)

 



 夕食後、旅館の庭園で。

 ライトアップされた紅葉の下、悠里が俺の隣に座った。

「……ねえ、今日一日、楽しかった?」

「もちろん。……ちょっと、騒がしかったけどな」

「うん。……私ね、やっぱり思ったの」

「ん?」

「真一郎の隣、やっぱり落ち着くなって」

 そう言って、彼女はそっと俺の肩に頭を乗せてきた。

「……大好きだよ、真一郎」

 その言葉に、俺は心の中で何度も返事を繰り返す。

(俺も。大好きだ。――これからも、ずっと)

 

 遠くで、沢田先生のくしゃみが聞こえた。

「……なにこれ。甘さで風邪ひきそうなんだけど」

 

 ――北海道旅行編、まだまだ終わらない。
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