86 / 87
恩師よ永遠に!
しおりを挟む
「それじゃあ、先生はそろそろ帰らなくちゃいけないから、あとは二人で……仲良くな」
旅館の前、冷えた空気に白い息を吐きながら、沢田先生は小さく手を振る。帰りの車に向かって歩き出す背中は、いつもよりちょっとだけ寂しそうだった。
その背中に、俺は声をかけた。
「先生……本当に偶然だったんですか? ここに来たの」
すると、先生は足を止めて振り返り、にっと爽やかに笑った。
「実はな。裕貴のご両親から個人的に連絡が来たんだよ。……なんで私の連絡先知ってたのかは怖いけどな」
「……マジですか」
「北海道だろ? 子供だけの旅行じゃ親は心配だってさ。まあ、保護者として様子見に来たってわけだ。旅費も出してもらったし、色々と条件付きでな」
先生は肩をすくめると、俺に茶化すような視線を投げかけた。
「……とはいえ、こっちも連休中だ。ずっと付き合うわけにもいかない。せいぜい二日ってところだな。――よかったな、冷やかし役が帰ってくれて」
「そんなことないですよ。先生は……俺の大事な恩師ですから」
俺の素直な言葉に、沢田先生は目を丸くした。
「裕貴……?」
「俺、先生に会えてよかったって思ってます。……先生がいたから、俺は悠里と向き合う勇気を持てた。感謝してます。ほんとに、ありがとうございました」
しばしの沈黙のあと、沢田先生は口元を引き結び、うっすらと目元を潤ませながら言った。
「……そういうのはな、卒業式で言うもんだぞ、バカ」
「すいません、先走りました」
俺が照れて言うと、先生は笑って頭を撫でてくれた。
「じゃあな、佐々木」
「はい、裕貴のこと、私に任せてください」
「……安心した」
そして、先生は車に乗り込み、俺たちに手を振って去っていった。
※
その日の晩、旅館の一室には穏やかな時間が流れていた。
布団の上、浴衣姿で正座する悠里が、ふわりと笑いかけてくる。
「真一郎……。私ね、本当に、あなたに会えてよかったって思ってるの。……だから、今夜は……一緒に寝てもいいかな?」
頬をほんのり紅潮させながら、まっすぐ俺を見つめてくる悠里。
その一言だけで、心臓が跳ねた。
「……うん。俺も、そう思ってる」
部屋の電気が消え、月明かりが淡く差し込む。窓からは静かな雪景色。時間がゆっくりと流れているような気がした。
そんな中――
「悠里、俺、今日はちゃんと寝られそうにないかも……」
「ううん。……私が、寝かせないかも」
柔らかな声とともに、彼女はそっと俺の胸元に身体を預けてくる。
「わ、わっ!? ちょ、ちょっと、悠里……!」
「黙ってて、ご主人様……」
くすぐったいような声と、唇に伝わる甘くて柔らかな感触。頭が真っ白になる。
——理性が、危うい。
だけど、俺は必死に耐えて、そっと彼女の背に腕を回した。
やがてキスが終わり、火照った頬のまま彼女が囁く。
「続きは……おうちに帰ってから、ね?」
俺は、少し笑って頷いた。
「うん……帰ったら、ちゃんと覚悟しておくよ」
その夜は、雪の音さえ静まるような、深くて、特別な夜だった。
………………………………………………………………
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。
次回最終回です!この後投稿予定です!
旅館の前、冷えた空気に白い息を吐きながら、沢田先生は小さく手を振る。帰りの車に向かって歩き出す背中は、いつもよりちょっとだけ寂しそうだった。
その背中に、俺は声をかけた。
「先生……本当に偶然だったんですか? ここに来たの」
すると、先生は足を止めて振り返り、にっと爽やかに笑った。
「実はな。裕貴のご両親から個人的に連絡が来たんだよ。……なんで私の連絡先知ってたのかは怖いけどな」
「……マジですか」
「北海道だろ? 子供だけの旅行じゃ親は心配だってさ。まあ、保護者として様子見に来たってわけだ。旅費も出してもらったし、色々と条件付きでな」
先生は肩をすくめると、俺に茶化すような視線を投げかけた。
「……とはいえ、こっちも連休中だ。ずっと付き合うわけにもいかない。せいぜい二日ってところだな。――よかったな、冷やかし役が帰ってくれて」
「そんなことないですよ。先生は……俺の大事な恩師ですから」
俺の素直な言葉に、沢田先生は目を丸くした。
「裕貴……?」
「俺、先生に会えてよかったって思ってます。……先生がいたから、俺は悠里と向き合う勇気を持てた。感謝してます。ほんとに、ありがとうございました」
しばしの沈黙のあと、沢田先生は口元を引き結び、うっすらと目元を潤ませながら言った。
「……そういうのはな、卒業式で言うもんだぞ、バカ」
「すいません、先走りました」
俺が照れて言うと、先生は笑って頭を撫でてくれた。
「じゃあな、佐々木」
「はい、裕貴のこと、私に任せてください」
「……安心した」
そして、先生は車に乗り込み、俺たちに手を振って去っていった。
※
その日の晩、旅館の一室には穏やかな時間が流れていた。
布団の上、浴衣姿で正座する悠里が、ふわりと笑いかけてくる。
「真一郎……。私ね、本当に、あなたに会えてよかったって思ってるの。……だから、今夜は……一緒に寝てもいいかな?」
頬をほんのり紅潮させながら、まっすぐ俺を見つめてくる悠里。
その一言だけで、心臓が跳ねた。
「……うん。俺も、そう思ってる」
部屋の電気が消え、月明かりが淡く差し込む。窓からは静かな雪景色。時間がゆっくりと流れているような気がした。
そんな中――
「悠里、俺、今日はちゃんと寝られそうにないかも……」
「ううん。……私が、寝かせないかも」
柔らかな声とともに、彼女はそっと俺の胸元に身体を預けてくる。
「わ、わっ!? ちょ、ちょっと、悠里……!」
「黙ってて、ご主人様……」
くすぐったいような声と、唇に伝わる甘くて柔らかな感触。頭が真っ白になる。
——理性が、危うい。
だけど、俺は必死に耐えて、そっと彼女の背に腕を回した。
やがてキスが終わり、火照った頬のまま彼女が囁く。
「続きは……おうちに帰ってから、ね?」
俺は、少し笑って頷いた。
「うん……帰ったら、ちゃんと覚悟しておくよ」
その夜は、雪の音さえ静まるような、深くて、特別な夜だった。
………………………………………………………………
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。
次回最終回です!この後投稿予定です!
12
あなたにおすすめの小説
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる