【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました

むらびっと

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4階 ボス戦3

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    「それじゃあ…………」

 ウン姉はまたプールからガサゴソとしてなにか取りだした。

 「そんな量じゃ足りないと思ってオカワリ用意しておきました~♡」

 ドーンとまた重音を響かせてまたあの肉と野菜の煮込み料理が出てきた。しかも先程よりもひと回り大きい気がする。

 「…………くっ……!」

 ナーシンはそれを見て顔を俯かせる。

 「あのー、ナーシンくん。これ、どういう状況?」

 流石に意味不明すぎてナーシンに恐る恐る聞いてみる。

 「…………昔、母が亡くなったという話をしただろう……?」

 「そうだったね」

 「それからなんだ、姉がこうなったのは…………」

 「こうなったとは?」

 「姉は……姉は早くして母をなくした俺を悲しませないように毎日手料理を作ってくれたんだ……近所の人や近場のレストラン等でレシピを教わってとても子供とは思えない腕前になった……そしてその料理を食べて俺は喜び、毎日姉の料理を楽しみにしていた。その時だけは母を失った悲しみを忘れられた。その結果がこれだ……」

 ナーシンはまた膝を床につき、床を叩く。

 「姉は未だに俺が悲しくならないように、母がいなくて寂しくならないようにと大量に料理を出てくるんだ!しかも歳を重ねるごとに「育ち盛りだからね!」と言って量がどんどん増していく!だが俺はそんな健気な姉の料理を残してはいけまいというプレッシャーで毎度押しつぶされそうなんだ!ああ恐ろしい!」

 ええ……まさかのそんな理由……?いい話?なのか?どういう感情になればいいの……?でも確かにナーシンがいくら超人でも胃袋の大きさはどうにもならないのか……。

 そんな事を考えている間にナーシンは次の鍋に手をつけていた。

 「ちょ、ナーシン、無理しない方がいいよ!さっきから思ってたけどこんなの一人で食べる量じゃないよ!全盛期のジャイアント白田が食べられるかも分からない量だよ!?」

 「いや、食べなくては……姉さんを悲しませる訳にはいかない……!」

 ナーシンは震える手でスプーンで煮込み料理をすくい、口に運ぼうとする。

 「やめなって!こんな量食べたら流石の君も死んじゃうって!てゆーかコイツ君のお姉さんじゃないし!」

 「いや、この人は確かに姉さんだ!料理の味も確かに姉さんのものだ!俺が時間になっても家に帰らないから心配してここまで料理を持ってきてくれたんだ!」

 そう言うとまたガツガツと料理を頬張り始めた。

 ヤバい……このままだとナーシンの胃がパンクしてまじで死ぬかもしれない……。だが僕のことを見向きもしていないウンディーネに言って聞くようなもんじゃ無いだろうし、そもそもウンディーネに僕の正体を言って仮に止めたとしてナーシンにも僕の正体がバレてしまう。そんなの絶対阻止しなくては……でも早くしないとナーシンが死ぬ……!どうするどうするどうする!?

 僕は天才的な頭脳をフル回転させる。そりゃもう必死こいて今までの経験を元に解決策を導き出す。

 そして2秒後、僕は1つの案を捻り出した。

 そうだ、実際にナーシンのお姉さんを見てみよう。

 なぜその結論に達したかって?それは人間の脳は結局曖昧にしか覚えていないからである。このウンディーネが化けたお姉さんは確かに今のナーシンには本物のお姉さんに思えているだろう。しかしこれは現在ナーシンがぼんやりと思い出したもの、いわば即席お姉さんなのだ。実際のお姉さんとは確実に決定的違いが生じるはずである。例えば身長が本当はすごく高かったり、目の色が違ったり。そこを指摘すればいけるのではないかと思った次第だ。

 仕方ない、久々にやってみるか……。

 僕は目を瞑り、『千里眼』を使う。この能力は遠くのものを見ることはもちろん、未来のことまで見通すことが出来る能力だ。疲れるからあまり使いたくなかったのだが今はそんなこと言ってられない。そしてこのウン姉そっくりな人を近くの街で探した。運良く街はすぐに見つかったのでくまなく探す。だがなかなか見つからない。

 ならば……!

 僕は『透視能力』も使い、街の人以外の建物や物を全て見透かす。

 するとウン姉そっくりな人を見つけた。街の雑貨屋で本を読んでいるようだ。そしてその人物を観察する。

 …………見つけた……完壁な間違いを……!

 僕は目を開く。目の前には口に手を当て、苦しそうに料理を頬張るナーシンが見えた。

 「ナーシン、もう頑張らなくていいよ」

 「……いや、食べるのをやめるわけには……」

 「わかったんだよ。いいかい?あれは君のお姉さんではない、紛れもなく偽物だ。何故ならば……」
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