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2.君となら
しおりを挟む五日後、ヴェルナルディ公爵令息様から手紙が来た。
『婚姻の話を進めたい。二日後に訪問する』という主旨だ。
お父様もお母様もリシアンヌまで、みんな乗り気で、引き気味なのは私だけだ。
貴族の結婚に夢を見てはいけないと薄々感じていたが、妹に懸想する人を夫に持つ羽目になるとは…
正直、始まる前から人生終わったと感じる。
でも、悲観していても仕方ない。
そうして、ヴェルナルディ公爵令息様をお迎えする日。
今日も時間通りの訪問だ。
きっと生真面目な性格なのだろう。
「ご機嫌麗しゅう、ヴェルナルディ公爵令息様。」
「アリシア嬢、息災か?」
「見ての通りにございます。」
「ははっ、庭園を見せてもらおう。」
案内する私に、ヴェルナルディ公爵令息様は笑いながら着いて来た。
「俺は、アリシア嬢と結婚したいと考えているが、君はどうだ?」
「筆頭公爵家のヴェルナルディ公爵令息様と、お父様のお考えに従います。」
「君は俺でいいのか?」
「そもそも私には、大変勿体ないお話ですから、光栄に存じます。」
それならば…とヴェルナルディ公爵令息様は私を抱き寄せる。
「何をなさるの?」
「夫婦となるのだから慣れてもらおうかなと。しかし、小さいな…胸元にも届いてないな。」
「もう今から背は伸びませんから…場所は取りませんので、お邪魔にはならない筈です。」
「あははっ!面白いな、君は!!」
そんなに笑うことかしら?と思いつつ、笑顔が素敵な方だなと思う。
そんな自分に、ダメダメ、冷静にならなくちゃと心の中で喝を入れる。
「数回しか会っていないが、君となら上手くやっていけるような気がするんだ。頭の回転が早く、自分の立ち位置を把握しているし、何より興味深い。どうか結婚を承諾して欲しい。」
「喜んでお受け致します。」
「え、即答???」
「はい、自分の立ち位置を把握しておりますから。」
ヴェルナルディ公爵令息様は、また大笑いして、私を抱き締めた。
「これ以上は、結婚してからですわよ?」
早目に釘を打っておくと、チェッとヴェルナルディ公爵令息様は残念がった。
「では、その時を楽しみにしている。取り敢えず、今日は帰るが、またすぐ来る。」
ヴェルナルディ公爵令息様は、背が高くて声が低くて、という印象は変わらないが、思ったよりも明るい性格のようだ。
私を興味深いというよりは、揶揄って反応を楽しんでいるのだろう。
でも、今日も気付いてしまった。
足繁く通う理由。
熱い視線の先には、いつもリシアンヌが居る。
あなたは、ご自分の気付いていないだろうに。
どうか、その想いがこれ以上、大きくならないようにと私は思う。
そう思いながら、この結婚を進めることに異議を唱えない私は、何なんだろう。
妹に懸想して気付かないヴェルナルディ公爵令息様もおかしいけど、私が一番おかしいのかもしれない。
初めからリシアンヌ宛に求婚書が届いていれば、ヴェルナルディ公爵令息様の頑張り次第で恋愛結婚になったかもしれない。
しかし、私が相手ならば政略結婚に鞍替えだ。
先のことを考えると、気が重い。
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