【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい

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12.目覚め

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(お腹の中で動いている。もしかして、赤ちゃん…)

ぼんやりとした視界、お腹の中で感じる胎動、ベッド脇に寄り添うジェスター。
意識が戻った時、私が感じた全て。

(あぁ…生きてる…赤ちゃん、生きたかったよね…ごめんね、こんなママで…もう何があっても死なない。あなたと生きていく…)

ぼんやりとした視界が涙で更にぼやけた時、ジェスターが気付いた。

「ミラ!ミラ、意識が戻ったのか!!」

「う…ん……」

「良かった!良かった…ミラ…本当にすまない…俺が悪かった…」

膝をついて謝罪するジェスターに、今は何の感情も湧かなかった。

「お父様やお母様は…?」

「邸にいる!呼んでくる!!」

走って部屋を出るジェスターは、すぐに両親を連れて来てくれた。
伯母のマーガレットもいた。

「ミラ…良かった…」

「ミラ、もう大丈夫!皆、ついてるわ!!」

温厚で優しい父と母が泣いている。

「ミラ、ごめんなさい…私が判断を誤ったわ。責任は取ります。」

厳しい顔のマーガレット。

「私…ここにいていいの…?邪魔者かもしれない…」

「違う!ミラは邪魔者なんかじゃない!!ミラ、俺の傍にいてくれ…」

泣き崩れそうなジェスターに、少し心が動く。

「ミラ、今は意識が戻ったばかりだから、明日話せるようなら話しましょう。まずは、私の話を聞いて欲しいの。」

マーガレットは、厳しい顔のまま、そう告げた。

「分かりました。」

そのまま私は、また眠りについた。
皆が部屋を出て行っても、ジェスターだけは残り、それからずっと、私の手を握り続けていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


翌日、マーガレットは一人で寝室を訪れ、入れ替わりにジェスターは出て行った。

「ミラ、ごめんなさい。私は、ローズの人間性について分かっていたの…ローズをミラの近くに置いてはいけなかったわ。だから、ジェスターと話す前に、前提として私の話を聞いた方がいいと思ってるの。」

「話してください。ローズ叔母様がどういう人なのか、知りたいです。」

それからマーガレットは、ローズが幼い頃からどういう為人だったかを話してくれた。

「ローズはね…愛に飢えていたのだろうけど、愛とちやほやされることの区別がつかない人間なのよ。それに、目の前にある物や人は、全て自分のモノとして捉えていたわ。病弱だからと大事にしてきたけど、外部から隔離された分、常識を学ぶ機会を得られなかったのね。ローズは、いつまでも聞き分けのない子どものままだわ。」

人には多面性がある場合があり、表や裏もある。
だけど、私は可愛がってくれる身内に、そういう人がいることを知らなかった。

「ローズ叔母様は、どうなるの?」

「ローズはね、遠くに嫁がせるか、修道院に行かせるか、ミラが選んで。決まるまでは、コロニー伯爵家の地下牢にいるわ。」

「少し…考えさせてください。ジェスターと話してから、決めさせていただきます。」

「それがいいわ。ジェスターは、偶然を装ったローズに、いいように使われた気もするけど、ローズと再会した時にミラに話せば良かったんだし…ミラとジェスターのことは、二人で話し合ったらいいわ。子どものことも含めてね。ミラがどんな決断をしても、シリウス様もフローラも、もちろん私もビンセントも、皆、ミラの味方よ。それだけは、忘れないでね?」

マーガレットは、優しく微笑んで、部屋を出て行った。
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