愛さないと言うけれど、婚家の跡継ぎは産みます

「君と結婚はするよ。愛することは無理だけどね」

婚約者はミレーユに恋人の存在を告げた。
愛する女は彼女だけとのことらしい。

相手から、侯爵家から望まれた婚約だった。
真面目で誠実な侯爵当主が、息子の嫁にミレーユを是非にと望んだ。
だから、娘を溺愛する父も認めた婚約だった。

「父も知っている。寧ろ好きにしろって言われたからね。でも、ミレーユとの婚姻だけは好きにはできなかった。どうせなら愛する女を妻に持ちたかったのに」

彼はミレーユを愛していない。愛する気もない。
しかし、結婚はするという。
結婚さえすれば、これまで通り好きに生きていいと言われているらしい。

あの侯爵がこんなに息子に甘かったなんて。


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