【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい

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20.その後 Side ローズ

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フレディ・マーカーとの再会を楽しみに、隣国に嫁いだ私。

「フレディ様はどちらに?」

「俺がフレディだが?」

「はぁ?」

(誰なの!?この人は???)

一目でフレディとは気付かなかった。
いや、よく見ても、過去の面影すら残っていなかった。

しかし、私には帰る場所がない。
マーガレットお姉様の邸を出発する時に、はっきり言われた。

「もう、ここには帰れないと思ってね。フレディ様と離縁するようなことがあっても、もうここには住めないから。」

(あぁ…マーガレットお姉様は、本当に縁を切るつもりなのね…それに、きっとフローラお姉様も同じね…)

少し離れた場所で見ていたシリウスが、腰の剣に手を添え、今にも斬り掛かってきそうな顔でこちらを見ている。
あんなに人から殺意を向けられたのは、初めてだ。

そして私は、自分がしたことの意味を悟った。
帰れる訳がない。
自分勝手な思いで、ミラや皆を傷付けたのだから。

それでも、フレディの妻になれば、私も幸せになれると思っていたが、現在のフレディは全く魅力を感じられない容貌になっていた。

「言いたいことはあるだろうが、ローズは、もうここしか居場所が無いぞ?ここが嫌なら修道院だ。」

「修道院…」

「しかし、気の持ちようで楽しくもなるし、幸せにもなれるかもしれない。取り敢えず、ここで暮らせ。金だけはあるから、ほどほどに贅沢もさせてやれる。」

フレディの言う通りだ。
家族に呆れられた私を引き取ってくれたのはフレディだ。
ジェスターには過去の遺物扱いされたが、フレディは違う。

「フレディ様…不束者ですが、宜しくお願いします。」

「こちらこそ。」

ハゲでもデブでも、フレディの笑顔には、わずかに昔見た優しさがあった。

(私、変われるかな…ううん、変わらなきゃいけないのね…)

幸せになる資格は無いかもしれないが、せめて、少しでもマシな人間にならなくてはと、人生で初めて思った。
年齢から考えたら手遅れかもしれないが、それもまた、自分のしてきたことの結果だと思うことにした。

いつか、まともな人間になれたら、また家族に会えるだろうか。
いや、無理かもしれない。
皆、それぞれに自分の道を歩み、大切なものを守って、必死に生きている。
私も、私の人生と向き合おう。
昨日より今日、今日より明日、少しでもマシな人間になれるように。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


次のお話で完結です☺️
6時更新です❣️

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