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5.抗えない Side ルディガー
しおりを挟むこの春から、皇宮で皇太子の側近として働き出した。
側近というと聞こえはいいが要は裏方仕事だ。
皇族の暗殺者を始末したり、不正を行う者を粛清したり、仕事柄、非常に危ない業務がある。
普通に考えたら、恋人や妻や子どもは最大の弱点になる。
俺には15歳の時に親が勝手に決めた婚約者が居るが、結婚なんて出来ないと思っていた。
親にすら話せない仕事をしているのだから、到底無理だ。
しかし、ある日、父上から婚約式をやるからアルベール公爵家に来いと言われた。
父上も母上も首都から離れた西の領地から遥々来るので、俺だけが行かないという選択肢はない。
当日は何と言って婚約を断ろうかと頭を痛める日が続いた。
そして、当日。
ベルナ・アルベールに会った。
幼い頃に会った記憶なんて残ってない。
兄姉より8歳も離れた末っ子だから、さぞかしふわっとした甘えん坊が出て来るだろうと思っていた。
実際は、輝くような金髪と、垂れ目だがガーネットのような赤眼を持つ美しい女性だった。背は小さめだが、腰回りは細くスタイルが良い。
凛とした雰囲気を持ちながらも、どこか周りを包み込むような、不思議な印象を受けた。
強烈だったのは、親達に庭園の散歩を促され話をした時だった。
「ルディガー様は、この婚約についてどう思われますか?」
笑いもせずに、真顔でいきなり聞かれたので、一瞬唖然としてしまった。
今まで俺の周りをちょろちょろしていたような女なら、微笑みを浮かべて、しなだれ掛かってくる。
この女、俺に全く興味無いのか?と、逆に俺が興味を持ってしまった。
これでも領地に居た時や皇宮内でもモテる方だと思う。
手紙を渡してきたり、体を擦り寄せてきたり、ともすれば媚薬を盛られたり、いろいろあるのだ。
媚薬を盛られるならば、飲食すらともにしない位に徹底して防御している。
なのに、いろんな手を使って閨をともにしたがる女は結構居る。
だが、俺はそういう女が大嫌いだ。
生理的に受け付けないのだ。
人並みに欲求はあるが、自己処理でも全然構わないから、女は要らないとまで思っていた。
しかし、ベルナは話せば話す程、興味深い人だった。
一目惚れした女が居るなどと、中途半端な言い訳をする俺にどんどん斬り込んできて、最後には1年待つとか『純潔』を誓えとか、想像も出来ないような提案をしてくる。
その場で婚約を破棄しなかったのは、きっと俺はベルナに惹かれていたんだと思う。
ティーカップを引っくり返して火傷し、手当てをしてもらった時、彼女の小さな手と綺麗な瞳に胸が高鳴って、正直動揺した。
婚約式から3ヶ月ほど経った頃、いたずら心が働いて「ベルナも俺の顔で落ちる?」と顔を近付けたら彼女の方からキスしてきた。
もうダメだと俺は思った。落ちたのは俺だ。
身を捩る彼女の口内を貪るように犯したのも俺だ。あんな誘惑、抗えるわけがない。
あのまま押し倒してしまいたかった。
こんなに惹かれているのに「この気持ちは、欲だ」なんて馬鹿なことを言ってしまった。傷付いたような彼女を見て、終わりかなと思って、物凄く後悔した。
でも、ベルナは俺の予想を遥かに上回る強者だった。
急な訪問を喜び、部屋に入れ「あなた限定でね」とキスをし、俺のものを咥えてくれた。
他の女には近寄られることすら嫌悪感を抱くのに、ベルナだけは違う。
もっと触って欲しいし、この上ない興奮と快感がある。
愛らしくて優しくて大胆なこの女、絶対手放せないと思う。
そして「私、ルディガー様が大好きです。初恋だし、恋愛には不慣れだけど、あなたを本気で落とそうと思います。覚悟してください!」と堂々の求愛宣言。
ベルナにはまだ言えないけれど、俺も覚悟を決めた。
これから俺がやらなければならないのは、甘いキスや愛の囁きだけじゃない。
裏方仕事はすぐには辞められないから、ベルナを守って幸せにするにはどうしたらいいかを考えることだ。
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