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11.執務
しおりを挟む2日後、ルディガーと一緒に皇宮の執務室に向かった。
ルディガーは『特別調査官』として勤務しており、私はその補佐となるそうだ。
執務室は、専門書の詰まった本棚、グレーを基調としたシックなソファセット、並んだ机までは良かったのだが、奥に浴室とベッドがある。
「ルディ…あれは…?」
「くそっ!殿下の奴め!!」
正直、夫婦の寝室に執務室を仮置きしたみたいになっている。
おふざけではなく、結構ガチめな部屋のレイアウトだ。
「はぁ…」と溜め息をついて、ルディガーはソファに踏ん反り返る。
「ルディガー様、お仕事ですから!ひと息ついたら教えてくださいませ?」
そう、こんなでも皇宮の執務室だ。
1日でも早くルディガーを補佐出来るように頑張らなければ。
「そうだな。今日は関係部署と護衛の騎士を紹介するよ。時間があれば、事務的なことも少し出来たらいいかもな。」
「宜しくお願い致します。お仕事中は調査官とお呼びして大丈夫でしょうか?」
「そうしてくれ。俺はベルナと呼ぶ。」
こうして、まずは皇宮を案内してもらい、関係部署を回った。
よく顔を合わせることになりそうな人を重点的に紹介された。
アドラー・ロラン小公爵様、ミルラ・ベンゼル公爵令嬢、そして私のお父様ノーラン・アルベール公爵の3人だ。
どうも私が働く条件として、ルディガーがお父様を巻き込むよう、殿下に進言したらしい。
道理でお父様から反対されなかったわけだ。
そして、護衛の騎士を紹介された。
マリ、ナミ、ラナの3人で、何も伯爵令嬢だそうだ。
「令嬢が性に合わないので騎士となりました。何なりとお申し付けください。」
マリが笑うと、他の2人も頷いて笑った。
「皆さん、お綺麗だけど騎士服もお似合いね!護衛とは言え、仲良くしてくださると嬉しいです。私のことはベルナとお呼びください。」
「ベルナ様ですね。承知致しました。ルディガー様の大切なお方と聞いておりますので、誠心誠意お守り致します!」
ナミがあまりに大きな声で言うので、思わず笑ってしまった。
「大切なお方かぁ。まだそこまで落とせていないの…頑張ってるんだけど…」
ルディガーがぎくっとして背を向けた。
「調査官様はアレな方ですからねぇ。ベルナ様はお美しいから、ぼやぼやしてると攫われちゃいますね。」
ラナに言われてルディガーが怒り出す。
「お前ら、余計なことばかり言ってないで、ちゃんと仕事するんだぞ!」
「はーい」
にやにやしながら、3人は出て行った。
「ベルナ、騒がしくてすまない。3人ともあまり歳は変わらないので、気楽に接してやってくれ。」
「賑やかでいいじゃないですか。それにあたふたしているルディガー様が新鮮でした。ふふふ。」
「そうか?まぁよい。今日はこの辺にして、後で公爵邸に送って行くよ。」
「お疲れのようでしたら、お父様の馬車で帰ります。ご無理なさらないでください。」
ソファにドカッと座ったルディガーは疲れているようだった。
あんまり無理をすると倒れでもしたら大変だ。
「いや、俺が送りたいだけだ。」
「そんなこと言われたら、嬉しくて抱き締めたくなってしまうので、やめてください。我慢するって決めたので。今日はこのまま帰ります。明日からは公爵家の馬車で参りますので、お気遣いなく。」
ルディガーは何か言いたそうだったが、私の意見を尊重してくれた。
本当はルディガーと一緒に帰りたかったが、公私の区別は付けた方がいい気がした。
そのまま執務室を出て、お父様の所へ行き、一緒に帰った。
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