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10.2人の関係性と皇命
しおりを挟む婚約から半年。
相変わらず、週1ペースでルディガーは私に会いに来る。
応接室やガゼボで、ルディガーが選んでくれたお菓子をいただきながらお茶をするのが定番になった。
自ら並んで買って来ると自慢げに話すルディガーに、思い遣りを感じる。
他愛ないお喋りの中で、お互いを知る時間はとても大切だ。
建国祭の夜、酔っていてもルディガーの「俺からは手を出せない」という言葉は覚えている。
だから、なるべく部屋に籠るような状況は作らないようにした。
女性の衝動は抑えられても、男性の欲求を耐えるのは大変だろう。
だから、ルディガーの気持ちがはっきりするまでは、清い関係を維持することにしようと決心した。
まぁ、私がうっかり手を出さなきゃ、ルディガーの身の安全は守られるんだろうけど、赤くなった顔を見ると色っぽいのに可愛くて、私が我慢出来なくなるかもしれない。
取り敢えず、頑張って我慢している。
そんなこんなで、楽しく過ごしつつ、今日は皇太子殿下との謁見の為に迎えに来てくれた。
馬車もちゃんと向かい合わせに座る。
「殿下は何のお話でしょうね?」
「ベルと話したいだけかもな。興味津々だったし。あと、俺の困った顔を見たいだけな気がする…」
「確かに!あまり余計なことは話さないように気を付けますね…」
「まあ、ベルは好きにしていいよ。殿下は俺が止めるから。」
仕事モードの顔だからか、ルディガーは落ち着いた雰囲気で終始話す。
男らしい雰囲気で、またキュンとなる。
そして、ファビアン皇太子殿下との謁見の場に着いた。
「帝国の小太陽、ファビアン皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」
「よく来たね!ベルナ嬢。ルディガーは数日前に会ったからいっか!!」
何がいいのやら…
ルディガーが顔をしかめる。
イライラした顔を見るのは初めてで私はまたキュンキュンしてしまう。
こんな考えがバレたら、きっと呆れられてしまうかもしれない。
「ところでルディガー、ベルナ嬢に任務について話しているか?」
「いえ、仕事のことは話しません。殿下の側近と言えば聞こえはいいですが、内容は言う程のことではありませんので。」
「そうか…いや、今日呼んだのは、ベルナ嬢にも皇宮で働いてもらえたらなと思ってな。聡い印象だから、、」
「ダメです!お断りします。皇宮で働くなんて以ての外です!!」
殿下の話を遮るように、ルディガーが大きな声を出す。
「いや、そう言うなよ。何ならルディガーの補佐でいいからさ。処理しても処理しても、調査から戻ると書類が増えているだろう?だから事務的な補佐にどうかなと。何なら執務室を1つお前達にやるから!」
そこまで言われると逆に怪しい。
「殿下、失礼ながらお聞きしますが、ルディガー様のお仕事は何なんですか?『調査から戻ると書類が増えている』というお話の流れだと、ルディガー様がいらっしゃらない時に、書類が溜まっている感じがします。事務的なこと以外の任務がありますよね?」
ルディガーが殿下を睨み、殿下はハッとした後にショボンとする。
「殿下、お言葉には重々注意していただきたい。」
「いや、ほんと、すまない。お願いだから、あの件が片付くまでの間、ベルナ嬢の協力も仰ぎたい。何なら執務室+護衛も付けるから!」
何だか話が大きくなってきて、取り敢えず私は事務的なことをやればルディガーの助けになるのかな?位しか把握出来ない。
ルディガーはしばし考え込んで、意を決したように話し出す。
「殿下、あの件が片付いたら、皇宮での業務からは一切手を引いて、侯爵家の執務に専念していいでしょうか?」
「うーむ…お前ほど確実に処理してくれる者がなかなか居なくてな…」
殿下も考え込む。
「ずっと続ける気はありませんよ?あの件が片付けば、取り敢えず、一旦根絶やしに出来るのでは?後は追々考えればいい話で。」
ルディガーは続けて私に話し掛ける。
「ベルは俺の仕事を手伝ってくれるか?ひと通り覚えたら、1人仕事になってしまうこともあるけど…」
「はい。お役に立てるなら。」
この状況がイマイチ把握出来ないけど、ルディガーに何か思うところがあるのだろうと察した。
「やってくれるか、ベルナ嬢!」
「殿下、喜ぶのはまだ早いです。ベルが危険な目に遭わないように護衛は3人付けてください。女性のね?男はダメです!選りすぐりの女性騎士を今から手配してください。あと執務室も!!」
ルディガーの要望を頷きながら聞く殿下は、侍従長に次々と指示を出している。
「2日後には全て手配させるので、ルディガーは公爵を説得してベルナ嬢を連れて来てくれ。執務室には、続き部屋にベッドも用意させるから。」
ニヤニヤ笑う殿下にルディガーがブチ切れる。
「余計なことはせず、さっさとカタを付けることに専念してください!!」
こうして、しばらく皇宮で働くことになり、お父様には結婚前の行儀見習い的な話で許可を得た。
仕事の内容としては後々役立ちそうだったから、満更嘘でもない。
ただルディガーは最後まで気が進まないようだったが、皇命に近いものだったので仕方なく了承したようだ。
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