【完結】 1年であなたを落としたいと婚約式で告げた結果

紬あおい

文字の大きさ
10 / 21

10.2人の関係性と皇命

しおりを挟む

婚約から半年。
相変わらず、週1ペースでルディガーは私に会いに来る。
応接室やガゼボで、ルディガーが選んでくれたお菓子をいただきながらお茶をするのが定番になった。
自ら並んで買って来ると自慢げに話すルディガーに、思い遣りを感じる。
他愛ないお喋りの中で、お互いを知る時間はとても大切だ。

建国祭の夜、酔っていてもルディガーの「俺からは手を出せない」という言葉は覚えている。
だから、なるべく部屋に籠るような状況は作らないようにした。
女性の衝動は抑えられても、男性の欲求を耐えるのは大変だろう。
だから、ルディガーの気持ちがはっきりするまでは、清い関係を維持することにしようと決心した。
まぁ、私がうっかり手を出さなきゃ、ルディガーの身の安全は守られるんだろうけど、赤くなった顔を見ると色っぽいのに可愛くて、私が我慢出来なくなるかもしれない。
取り敢えず、頑張って我慢している。

そんなこんなで、楽しく過ごしつつ、今日は皇太子殿下との謁見の為に迎えに来てくれた。
馬車もちゃんと向かい合わせに座る。

「殿下は何のお話でしょうね?」

「ベルと話したいだけかもな。興味津々だったし。あと、俺の困った顔を見たいだけな気がする…」

「確かに!あまり余計なことは話さないように気を付けますね…」

「まあ、ベルは好きにしていいよ。殿下は俺が止めるから。」

仕事モードの顔だからか、ルディガーは落ち着いた雰囲気で終始話す。
男らしい雰囲気で、またキュンとなる。

そして、ファビアン皇太子殿下との謁見の場に着いた。

「帝国の小太陽、ファビアン皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」

「よく来たね!ベルナ嬢。ルディガーは数日前に会ったからいっか!!」

何がいいのやら…
ルディガーが顔をしかめる。
イライラした顔を見るのは初めてで私はまたキュンキュンしてしまう。
こんな考えがバレたら、きっと呆れられてしまうかもしれない。

「ところでルディガー、ベルナ嬢に任務について話しているか?」

「いえ、仕事のことは話しません。殿下の側近と言えば聞こえはいいですが、内容は言う程のことではありませんので。」

「そうか…いや、今日呼んだのは、ベルナ嬢にも皇宮で働いてもらえたらなと思ってな。聡い印象だから、、」

「ダメです!お断りします。皇宮で働くなんて以ての外です!!」

殿下の話を遮るように、ルディガーが大きな声を出す。

「いや、そう言うなよ。何ならルディガーの補佐でいいからさ。処理しても処理しても、調査から戻ると書類が増えているだろう?だから事務的な補佐にどうかなと。何なら執務室を1つお前達にやるから!」

そこまで言われると逆に怪しい。

「殿下、失礼ながらお聞きしますが、ルディガー様のお仕事は何なんですか?『調査から戻ると書類が増えている』というお話の流れだと、ルディガー様がいらっしゃらない時に、書類が溜まっている感じがします。事務的なこと以外の任務がありますよね?」

ルディガーが殿下を睨み、殿下はハッとした後にショボンとする。

「殿下、お言葉には重々注意していただきたい。」

「いや、ほんと、すまない。お願いだから、あの件が片付くまでの間、ベルナ嬢の協力も仰ぎたい。何なら執務室+護衛も付けるから!」

何だか話が大きくなってきて、取り敢えず私は事務的なことをやればルディガーの助けになるのかな?位しか把握出来ない。

ルディガーはしばし考え込んで、意を決したように話し出す。

「殿下、あの件が片付いたら、皇宮での業務からは一切手を引いて、侯爵家の執務に専念していいでしょうか?」

「うーむ…お前ほど確実に処理してくれる者がなかなか居なくてな…」

殿下も考え込む。

「ずっと続ける気はありませんよ?あの件が片付けば、取り敢えず、一旦根絶やしに出来るのでは?後は追々考えればいい話で。」

ルディガーは続けて私に話し掛ける。

「ベルは俺の仕事を手伝ってくれるか?ひと通り覚えたら、1人仕事になってしまうこともあるけど…」

「はい。お役に立てるなら。」

この状況がイマイチ把握出来ないけど、ルディガーに何か思うところがあるのだろうと察した。

「やってくれるか、ベルナ嬢!」

「殿下、喜ぶのはまだ早いです。ベルが危険な目に遭わないように護衛は3人付けてください。女性のね?男はダメです!選りすぐりの女性騎士を今から手配してください。あと執務室も!!」

ルディガーの要望を頷きながら聞く殿下は、侍従長に次々と指示を出している。

「2日後には全て手配させるので、ルディガーは公爵を説得してベルナ嬢を連れて来てくれ。執務室には、続き部屋にベッドも用意させるから。」

ニヤニヤ笑う殿下にルディガーがブチ切れる。

「余計なことはせず、さっさとカタを付けることに専念してください!!」

こうして、しばらく皇宮で働くことになり、お父様には結婚前の行儀見習い的な話で許可を得た。
仕事の内容としては後々役立ちそうだったから、満更嘘でもない。
ただルディガーは最後まで気が進まないようだったが、皇命に近いものだったので仕方なく了承したようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【3話完結】 数多と唯一

紬あおい
恋愛
偉そうにしていた夫が実はチョロかったお話。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

【完結】 女に弄ばれた夫が妻を溺愛するまで

紬あおい
恋愛
亡き兄の恋人を愛し、二年後に側室に迎えようと政略結婚をした男。 それを知りつつ夫を愛し、捨てられないように公爵夫人の地位を確立しようと執務に励む女。 そんな二人が心を通わせるまでのお話。

処理中です...